CDレビュー: Jaga Jazzist – A Livingroom Hush(2002)

★★★★★

 

先端ジャズ集団Jaga Jazzistの2ndアルバムです。器楽ジャズをベースとして前半はポップ寄りの構成、表参道明治神宮前系のオサレサウンドをミックスした曲が中心です。ラフォーレとかフランフランとかでかかってそう。

中盤からエレクトロやドラムンベース、訳わからん曲調に変わっていき私好みのサウンドとなりました。ラストCinematicが一番意味不明で好きですね。ほぼ電子音楽で、もはやどこらへんがジャズなのか分かりません。6曲目からが勝負です。

 

何かが終わってしまったような8曲目Made For Radio

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喪失感を二周くらい通り越したCinematic。ビデオクリップは気味悪すぎ

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ジャズの他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: 『よくわかる栄養学ハンドブック』 著:舛重正一

★★★★★

 

科学的でとても分かりやすい上に適度に網羅的です。厳密な生化学的記述も知りたいのですがそれは専門書を読めばよいでしょう。

色々参考になるところはあったのですが今日レビューを書いている時間がないのでここまでです。

 

 


CDレビュー: Sarah Vaughan – Crazy And Mixed Up (1983)

★★★★☆

ジャズの100枚。シリーズ24枚目です。邦題は『枯葉』。

くんせいジャズ

サラ・ヴォーン(1924-1990)はアメリカ出身のジャズヴォーカリストです。煙焼けしたハスキーボイスが特徴ですが予想通りヘビースモーカーで、死因は肺がんでした。

33分ちょいと短いアルバムですがいい曲揃いです。彼女の声によるところが大きいですね。2曲目That’s Allは彼女の可愛い一面が見られる名曲。3曲目Autumn Leavesはシャバダバしか言ってませんが滑らかに歌もドラムもピアノも流れていきます。ラストYou Are Too Beautifulも燻製しきった低音が出まくっててよいです。こんなに焼かなくても、、なんか切ないです。

 

1曲紹介するとしたらこれですね。邦題タイトル曲Autumn Leavesです。

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ボンボルッボルッボルッダッパッパ

 


CDレビュー: Oliver Messiaen Complete Edition – Catalogue d’oiseaux, Livre 4, 5 (CD6)

★★★★☆

 

メシアン「鳥のカタログ」2枚目です。4,5集は次の鳥たちが登場します。

  • 第4巻

第7番 ヨーロッパヨシキリ

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ヨーロッパヨシキリ – Wikipedia

一夫一妻を取る珍しい鳥です。曲は28分26秒という超大作で、途中にはガラガラドーンとこれ絶対鳥の鳴き声じゃねぇって音も現れます。もしかすると環境音が混じってるのかもしれません。メシアンの鳥観察日記を8mmフィルムで撮ったらこんな音になる、っつーことです。鳴き声は比較的かわいい系ですね。単音の鳴き声は分かるとして、時々コードっぽいベース音が入れるなんてどういう感性をしていたら作れるんでしょうねぇこの曲。

  • 第5巻

第8番 ヒメコウテンシ

ヒメコウテンシ

ヒメコウテンシ – Wikipedia

日本名「姫告天子」、見た目と違って厨二臭のする名前です。ヒバリ科スズメ属ということで鳴き声はほぼスズメと同じです。スズメと思ってこの曲を聴いてみると面白いかも。私が住んでいる付近の川でよくスズメが大群で木に群がって鳴きまくっていることがあるんですが確かにこんな感じです。曲は5分と短め、やはり謎の低音部分などがあります。これは歩いている音なのか?

 

第9番 ヨーロッパウグイス

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Bouscarle de Cetti — Wikipédia

名前の通り残念ながら日本にはいない鳥です。鳴き声も日本のものとはずいぶん異なりチィーチィーと鳴くらしく、曲も全然ホケキョじゃないです。もっと甲高くて耳につく感じです。CD収録曲中一番気合の入っている曲でしょっちゅうピアニストが息吸ってる声が拾われてます。スズメくらいの大きさの鳥なのにパワフルですね。

 

別の人の演奏ですがヨーロッパウグイスです

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クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianist of the 20th Century Vol.10 – Jorge Bolet I (CD2)

★★★★☆

2枚目はライブ版ともあってレパートリーがぐっちゃぐちゃです。美しきドナウの流れにはじまりタンホイザーやらクマンバチやら愛の喜びやら小曲の集合です。

聞くたびに毎回思いますが熊蜂の飛行をピアノに編曲したラフマニノフとこれを弾こうとするピアニストはキチガイだと思います。

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ラストに入ってます。7:00から。

 

あとはタンホイザーがいいですね。リスト編曲だけあって超ド派手です。前のCDに引き続きややべたっとしてますがリスト派手パワーのおかげで過度の甘みが酸味料ですっきりするかの如く聴きやすくなっています。

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 途中までですけど、youtube上なら続きも聴けます。

 

Tracklist:

Johann Strauss/Adolf Schulz-Evler

2-01     Arabesques On “An Der Schönen, Blauen Donau”     11:25

 

Richard Wagner/Franz Liszt

2-02     “Tannhäuser” Overture     16:39

 

Moritz Moszkowski

2-03     La Jongleuse (From Etudes, Op. 52)     1:55

 

Anton Rubinstein

2-04     Etude In C, Op. 23 No. 2 “Staccato”     4:53

 

Nicolai Rimsky-Korsakov/Rachmaninoff

2-05     The Flight Of The Bumble Bee     1:07

 

Fritz Kreisler/Rachmaninoff

2-06     Liebesleid     4:47
2-07     Liebesfreud     5:35

 

Felix Mendelssohn Bartholdy/Rachmainoff

2-08     Scherzo (From “A Midsummer Night’s Dream”)     4:40

 

Johann Sebastian Bach/Rachmaninoff

2-09     Prelude (From Violin Partita No. 3)     3:35

 

Modest Moussorgsky/Rachmaninoff

2-10     Hopak     1:43

 

Sergei Rachmaninoff

2-11     Polka De V.R.     4:13

 

Peter Iryich Tchaikovsky/Rachmaninoff

2-12     Lullaby, Op. 16 No. 1     4:10

 

George Bizet/Rachmaninoff

2-13     Menuet (From “L’Arlésienne”, Op. 23     2:45

 

Gaetano Donizetti/Franz Liszt

2-14     Réminiscences De “Lucia De Lammermoor”     6:20

編曲ラフマニノフばっかだった

 


書籍レビュー: 『ふたりのロッテ』 著:エーリッヒ・ケストナー

(•ө•)

 

題名だけ知っていたので興味で読みました。

ケストナーの語り口調には癖がありそれが独自性といい味を出しています。高橋健二さんの訳もじょうず。

離婚話ですので子供に読ませるのは不適当ではないかとの声もあったそうですがケストナーは次のようなたとえ話を出して、子どもこそ読むべきであると読者を説得しています。ここが面白かった。

「シャーリー・テンプルは7つは8つの子どもの時、もう世界中に名だかい映画スターでした。映画は彼女のおかげで数百万ドルも、もうけました。ところが、シャーリーがおかあさんといっしょにシャーリー・テンプル映画を見に、映画館に入ろうとすると、入れてくれませんでした。まだ年がたりないというのです。それは禁止されていたのです。シャーリーは映画をとることだけはさしつかえなかったのです。それは許されていました。それには充分の年だったのです。」

タイトルと表紙からは女の子の友情ものなのかなぁと想像していましたがまさかこんな内容の話だとは全く想像してませんでした。優れた物語です。20年くらい前に読んでればよかった。ですが個人的な理由でこの本を読むタイミングは不適切でした。さらに20年くらいしたらまた読もうと思います。

自分には児童文学が必要と思っていましたがしばらくの間読むのをやめます。

 


CDレビュー: Great Pianist of the 20th Century Vol.10 – Jorge Bolet I (CD1)

★★★★☆

Great Pianistsシリーズの10組目のセット1枚目です。

ホルヘ・ボレット(1914-1990)はキューバ出身のピアニストです。フレディマーキュリーに似てますね。

このセットは1974年のカーネギーホールでのライブ録音で、彼の出世作だそうです。

1枚目はバッハのシャコンヌ(ブゾーニがアレンジした奴)、ショパンの前奏曲集、ヨハン=シュトラウスのワルツが2曲です。シャコンヌはややべったりした印象を受けました。納豆バッハ。

前奏曲集もべっとりしてますがこれは陰鬱なショパンの曲調とマッチしていい効果を生んでいます。ピアニストによって向き不向きがはっきり出る曲なんですね。この人見た目はマッチョですが前奏曲のラストなど心の奥まで粘着してきそうなDV的怖さがあります。

 

前奏曲の最後の方

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Tracklist:

Johann Sebastian Bach/Feruuccio Busoni

1-01     Chaconne In D (From Violin Partita No. 2)     15:04
    Préludes, Op. 28

Frederic Chopin
1-02     No. 1 In C     0:35
1-03     No. 2 In A Minor     2:08
1-04     No. 3 In G     0:52
1-05     No. 4 In E Minor     2:04
1-06     No. 5 In D     0:33
1-07     No. 6 In B Minor     2:01
1-08     No. 7 In A     0:50
1-09     No. 8 In F Sharp Minor     1:48
1-10     No. 9 In E     1:34
1-11     No. 10 In C Sharp Minor     0:30
1-12     No. 11 In B     0:41
1-13     No. 12 In G Sharp Minor     1:08
1-14     No. 13 In F Sharp     3:45
1-15     No. 14 In E Flat Minor     0:27
1-16     No. 15 In C Sharp     6:30
1-17     No. 16 In B Flat Minor     1:05
1-18     No. 17 In A Flat     3:50
1-19     No. 18 In F Minor     0:49
1-20     No. 19 In E Flat     1:15
1-21     No. 20 In C Minor     1:45
1-22     No. 21 In B Flat     2:05
1-23     No. 22 In G Minor     0:45
1-24     No. 23 In F     0:53
1-25     No. 24 In D Minor     2:43

Johann Straus/Carl Tausig
    From “Nouvelles Soirées De Vienne”
1-26     Man Lebt Nur Einmal, Op. 167     7:30
1-27     Nachtfalter, Op. 157

 

 


書籍レビュー: 60Pに濃い内容『科学発見シリーズ』 著: アイザック・アシモフ

★★★★★

 

SFの巨匠アイザック・アシモフ(1920-1992)による、こども向けの科学読み物です。1冊あたり60Pほどしかありませんが内容は濃く、これを読めるのは中学生以上程度でしょう。大人でも十分楽しめる内容です。

 

原著はここにあります。how we find out…? というシリーズです。日本語訳は20冊ですが原著では32冊もあるようです。

私は8冊目まで読みましたが、理由があってここで読むのを打ち切りました。おすすめは電気と細菌です。

 

ここのところ時間が無く、しばらくの間雑なレビューになりそうです。

 


書籍レビュー: 次回を待て『ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)』 著: 塩野七生

★★★★☆

 

おそらく本シリーズの一番気合が入っていると思われる話題、ユリウス・カエサルについてです。文庫版では本書含めて6冊がカエサルについての記述に充てられています。本書ではカエサル誕生~39歳までの軌跡を辿ります。紀元前100~61年の間の出来事です。

かぶってる

実は半分くらいの内容が前巻とかぶります。カエサルはスッラやポンペイウスの時代にも生きていたからです。通して読む人間にとってはやや不満ですが、逆に、カエサルの部分だけ単独で読みたい人にとっては嬉しい構成方法ですね。8~13巻だけ読むという読み方もあり、でしょう。

カエサル編1巻目にあたる本書ではカエサルは目立ちません。やや遅咲きの政治家として、37歳でようやく宗教職の最上位である最高神祇官に当選したにすぎませんでした。おそらく文化庁長官くらいの意味合いで、最高権力者には程遠い位置です。

カエサルの人柄

本書ではカエサルのキャリアよりは彼のパーソナルな部分に焦点が当てられています。彼を読み解くキーワードは、借金、女の2点です。

カエサルは湯水のように借金しました。借金したお金は投資のためではなく、公共インフラの構築や剣闘会の開催など、民衆への大盤振る舞いにあてられました。このためスキャンダルとなることはなく、また金ヅルである最大債権者のクラッススは、カエサルに貸した金が大きすぎるためカエサルが「大きすぎてつぶせない」存在となり、彼が有利になるように取り計らうしかできなかったと言われています。

もう一つの金の使い方が女へのプレゼントでした。パトロンであるクラッススの妻テウトリア、最高権力者である執政官ポンペイウスのムチア、そしてカエサルが殺されることとなるブルータスのセルヴィーリアなど錚々たるメンバーがみなカエサルの愛人だったと言います。しかも誰にも隠さず、公然と愛人宣言をしていたそうです。

筆者によれば女が傷つくのは自分のことを無視した場合だけ、だそうです。カエサルは全ての愛人について関係を断つことをしませんでした。前述のセルヴィーリアなど、ブルータスがカエサルに剣を向けた後でさえカエサルは彼女のことを心配し国有地を安く払い下げてやるなどの配慮を忘れなかったそうです。また、豪邸2件が建つほどの真珠を贈るなど熱烈なプレゼント攻勢をカエサルはいつも忘れませんでした。これと「公然」の効果によって彼のことを悪く思う女性はひとりもいなかったそうです。筆者お墨付きとはいえ参考になるんでしょうかねこれ。

カティリーナ弾劾

後半に出てくるカティリーナという人の謀反を弾劾した前63年の「カティリーナ弾劾」裁判でのキケロ―の演説はヨーロッパ中の高校生が訳させられる文章だそうです。日本だと何にあたるんでしょうね。いずれ読んでみます。ラテン語を勉強するなら必須なのでしょう。

Catiline Orations – Wikipedia, the free encyclopedia

カエサルがここで弾劾への反対演説をしたことが、ローマにとって重要な意味を持つそうですがこの巻ではその真意にはかする程度で踏み込まれていません。次回を待て、ということでしょう。

7巻までと同様、事前知識なしでも引き込まれ一気に読めてしまう内容ですが、やはり前回までと重複している内容が多く単独で読むには物足りない巻でした。中と下まで一気に読んだ方がよさそうです。

 


CDレビュー: Ametsub – The Nothings of The North (2009)

★★★★★

 

和製ひとりテクノユニットAmetsubの2ndアルバムです。このアルバムを聴くのは久しぶりで2度目なのです。やっぱり良いですね。

前作と大きく変わったのは、メロディーラインと和音の方向性が鮮明になったことです。サンプリングのぶっ飛び具合はより洗練されていますが、名状しがたい寂寥感を生む和音とメロディーの力が非常に強くなっています。

1曲目Solitude。「北」を打ち出しているだけあってのっけから過冷却冷え冷えです。8分で延々刻まれる虫が歩き回ってるような音が可愛悲しい。

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3曲目Repeatedly。ただ繰り返してるだけではなくもう寂しくてしょうがないです。中盤に繰り返しの中から現れる渦のような3連符でノックアウトされてしまいました。そのあたりから曲調が変わり16分地獄となります。

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初めて見ましたが目と心によくないビデオクリップですね

 

9曲目Faint Dazzlingsはラストのブリザードで死ね

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