慶應通信
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慶應通信で使った書籍レビュー(随時更新)
ここでは慶応通信関連で入学から卒業までに読んだ書籍をレビューします。
★★★☆☆
入学試験のための書評で使いました。具体的なものがいいだろうという連れ合いのアドバイスにより、書きやすそうなものを選ました。
だいたい要旨は次のようなことです。万世一系・男性のみ皇位継承権がある現状の天皇制は、時代の変化とともに側室や分家の制度がなくなった今では天皇がいなくなるおそれがあり、そうすると現状の憲法では首相の任命や法律の公布ができず、国家機能が停止する。だいたい天皇の負担おおすぎだよ。だから憲法を改正して天皇制はやめて大統領制にして、天皇の権限を大統領に委譲して天皇は制度としては残すけど休んでもらおう。
今読み返すと憲法改正するより皇室典範改正する方が明らかに楽なんでそっちでやればいいじゃんとしか思えませんが、憲法改正の難しさはもとより大統領制にするのは天皇にとっては良いかもしれませんね。
★★★★☆
合格発表待ちのころ購入しました。放送大学のテキストに加筆修正したもので、法の分類や機能、法の簡単な歴史から道徳正義論、裁判の仕組み、法曹界の動向などいろんなトピックを詰め込んだ入門本です。入門といえども記述は簡単ではなく、法学部生なら折に触れて読み返し、今学んでいることの位置づけを再確認するのにもよい本です。
★★★★☆
見た目で購入しました。「及び」「並びに」「かつ」「又は」「若しくは」なんかの紛らわしい語を解説してくれるありがたい本です。ですが一度読んでも短期間で忘れてしまうので、折に触れて参照しましょう。他にも法律の構造や制定過程など、法学入門的な位置づけの本でもあります。
★★★★★
法学部に入ったので有名な本を読んでみたくなって買いました。一言で要約すると「自己の権利が侵されると死ぬ、闘え!」という本です。アツいです。法学のファンになったので最初の試験で法学を取ろうと決めました。
★★★★☆
法学の試験対策として購入しました。イギリスのコモンローからみた法学はどのようなものかふわっと感じられましたが、当時の私の実力ではふわっとしただけ終わり、試験にも全く役立ちませんでした。卒業したらまた読んでみたいです。
★★★★★
法学の試験対策として購入しました(2)。憲法民法刑法労働法国際法、超有名と思われる判例を解説していく「判例入門」本。今ざっと見ると医事法で出てきた安楽死名古屋高裁事件なんかも出てます。法律とはどのように適用されていくのかを知ることができました。ただ前提となる法律知識があまりないので、読解には時間がかかりました。特に国際法は全部呪文に見えて、国際法への苦手意識ができました。そして試験には全く役立ちませんでした。試験対策には指定テキストが一番です。でも超面白い本だったので今後も時間があればこういう回り道をしようと思います。
★★★★★
入学前に専攻を哲学とどっちにしようか迷っていた頃に購入して読みました。結果的に論理学の予習になりました。真理関数から量化理論までしっかりカバーされていてしかも読みやすいので、論理学を履修する皆さんにはおすすめです。
★★★★☆
社会学の指定テキストで約1000P。読み終えるだけで一仕事でした。トピックが24個あり、イギリスを中心とした実例と、社会学で実際に使われている概念の解説がされています。手広く書かれていますが各項目の記述は薄いです。それだけ社会学というものが広大だということでしょう。社会学の考え方を紹介するのが目的の本なので、結論となるものは一切示されていません。自分で考えよということです。なのでここで示されている手法を吸収しなければなりませんが、一度読んだだけでは全然頭に入りません。繰り返し読まないといけないでしょう。
★★★★☆
社会学は最低5冊の参考書籍を読んでレポートに盛り込むことが義務付けられています。1冊目は社会学といえばこの人、上野千鶴子先生の本です。上野先生は偉大ですが非常にリベラルなため賛同できるところとできないところがあります。twitterでも感想を書きました。
1冊目「女ぎらい」読み終わった。日本のミソジニーは、初版が出てから約10年経っているけど、その間何も変わっていないかむしろ強化されている。性差別の構造はよく分かったが、レポート課題の「次の数十年でどのような新たな男性性や女性性が生まれるか」という問いにはぜんぜん応えられそうにない。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 25, 2019
でも希望はあって、ミソジニーは社会的なもので賞味期限が必ずある。少なくともセクハラについては認識が20年で相当変わった。反対圧力は大きいもののMeTooで声をあげられる土壌もできた。月並みだが新たな男性性と女性性が確立できるかは我々にかかっている。具体的なモデルは今後読む書籍に期待。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 25, 2019
「守る」って言葉が気持ち悪いの、これが原因なのね。支配。 pic.twitter.com/0zMD3peZhQ
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 25, 2019
男が身体について自己嫌悪してるのかどうかはわからんけど、女装が理想化された身体への同一化願望というのは同意。別に女になりたいわけじゃないもんね。ファンタジーを演じたいだけだから。 pic.twitter.com/wNZhYkcYAc
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 25, 2019
★★★★☆
2冊目、有斐閣アルマ「女性学・男性学」平易な言葉で書かれた、バランスの取れたジェンダー論の入門書だった。共著の形を取っているが、多くを伊藤公雄さんが書いたと思われる。ジェンダー論を男性が書くので不安だったが、いい意味で裏切られた。知っていることが多かったのもあるがスルスル読めた。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
一貫して男女役割分担の問題点が描かれる。その分担は明治期にできたものに過ぎないことが明かされ、その際作られた男女のロールモデルはすでに時代遅れになっていると述べられている。社会状況の変化と共に意識も変わりつつあると示唆されており、期待してもいいのかという気にさせられる。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
男性性については、歴史的に男は「男らしさ」をもって女性を抑圧し男性優位社会を構成してきたが、今では過労死、生活能力の喪失など自分の首を絞めていると指摘。自業自得だが著者は社会構造の問題であるとの立場。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
男性性については、歴史的に男は「男らしさ」をもって女性を抑圧し男性優位社会を構成してきたが、今では過労死、生活能力の喪失など自分の首を絞めていると指摘。自業自得だが著者は社会構造の問題であるとの立場。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
ラストのコラムではジェンダー概念の変遷についての記述があり、今ではすでにバトラーの純社会的構築物という立場は超えられ、生物学的と社会的なものの混合物とみなす立場が一般的とあった。両方に目配りしつつ社会の新しい形を構想することが求められている、と。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
で、この本も男性性女性性についての記述は現状のものにとどまり、新しいものには触れられてない。ジェンダーバイアスをなくせ、ぐらい。このままだとクイアスタディーズとかを参考にしなきゃならなくなるので具体的なことは次の2冊に期待。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 26, 2019
★★★★★
3冊目介護する息子たち、の著者平山さんはたまたまですが上野先生の弟子でした。対談があったので読んでみたらめっちゃ面白い。https://t.co/Ubv7xmrPhF
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 28, 2019
本、読み終わった!で、その後に読み残したこの対談を読んだんだけど、正直、この対談に本のエッセンスは全部詰まってます。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 29, 2019
「介護する息子たち」の本質はほぼ終章にあり、そこでは男性性のよって立つ「自立・自律」の虚構性が暴かれる。女性の支配を暗黙に前提とする経済的プレッシャーばかり呟く男性学への疑問と文句も噴出する。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 29, 2019
ケアとはお膳立てである、という論を見て、ああ自分お膳立て能力ないわフリーライドしてるわ、と大いに反省した。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 29, 2019
日本企業は人件費を削減することでしか利潤の増加ができないので、数十年経てば男の経済力は激減し支配的アイデンティティを保てなくなるだろう、という希望を持った。経済力がなくて支配的なルサンチマン溢れる男ばかりになるのかもしれないが。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 29, 2019
まとめると、「自立・自立」という虚構によって非対称で不平等なジェンダー関係が構築されていることを認識し、それに対抗して、依存を中心とする社会関係の構築を目指す、そんな男性性が求められている。「介護する息子たち」よんでみてください。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 29, 2019
★★★★★
4冊目読んでます。「介護する息子たち」でも出てきたんですが男女間の経済的不平等が意外に無視されがちです。 pic.twitter.com/XFwxFcY7PN
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 30, 2019
たしかに、女性差別は終了したとネット上で考えてるやつ多い。男性差別とかいう人が出てきてるくらいだもんね。 pic.twitter.com/QRSecl4VFz
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) July 30, 2019
4冊目『日本のポストフェミニズム 「女子力」とネオリベラリズム』読んだ。ポストフェミニズムとは、最先端のフェミニズムではなくて「フェミニズムの役割は終わった」「男女差別はもうない」「フェミうざい」という雰囲気のことらしい。日本のネット上の空気にとても近い。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
本書はポストフェミニズムと、それを成り立たせる新自由主義(ネオリベラリズム)についての考察を軸とする。ネオリベは福祉削減のため欧米では80年代から、日本ではゼロ年代から国家によって推進されたもので、個人を資本主義における主体/資本家として想定する、男性中心的なシステムである。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
ネオリベは第二派フェミニズムの果たした「女性の社会進出」という主張を、新たな不均衡、すなわち共働きかつ女性に再生産の役割を負わせる方法で応えた。日本においては均等法、男女共同参画基本法、女性活躍推進法を作成し、不均衡を温存しつつ「男女差別は終わった・ない」とする空気を作った。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
醸成されたポストフェミニズムの雰囲気の中、調査結果より「女子力」とは容姿・家事能力が高いことと評価されていると分析し、能力主義の中新たな良妻賢母規範が生まれていると指摘。近年はビリギャル、AKBなど「少女性」を強調し、一見主体的でも伝統的ジェンダーを強化している現象もよくみられる。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
脱原発女子デモのインタビューではセクシャルマイノリティと女性の権利に階層がある(セクマイが上、男女でくくるのは古い、それは差別)ことにも言及されるが考察は甘い。後半の4章5章は特に考察が短く、内容が面白いだけに非常に残念。ネオリベの分析、ポストフェミニズムの考察は分かりやすかった。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
ここから新しい男性性・女性性を考察するとすれば次のようになる。低下する賃金の中、暗黙に「男が主/女が従」とするジェンダー観が維持されたまま、より多くの女性が低賃金労働(主に介護・保育などのケアワーク)の受け皿として社会に送り出され、しかも家庭での家事労働・ケアワークも担う。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
「女子力」とは容姿や家事能力を意味し、2013年の時点での大学生、現在のアラサー世代にはおおむね肯定的に評価されている。仕事も家事もできる・する女性が社会に選別されることになってしまう。わりと地獄な感じがする。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
男性の方は、「介護する男たち」からの考察も入れると、主・従の考えから自由な男しか結婚できなくなる。が、別に古いジェンダー観の男が排除される仕組みがあるわけではないので、結婚する男の割合はどんどん下がる。アップデートされていない男性はポストフェミニズムの状況で男性差別とか言い出す。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
ネオリベの状況では、個人が資本家としてみなされる、要するに何でも「自己責任」で済まされてしまうので、社会構造についての反省が機能しなくなる。給料が減ってルサンチマンはたまるし、フェミ憎しとか言ってる男性はどんどん増える。いいこと何にも思いつかないな。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 1, 2019
★★★☆☆
5冊目、思考のフロンティア「クイア・スタディーズ」。ゲイの歴史がほとんどで、期待していた未来への視座はほとんど得られなかった。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 2, 2019
一文だけ気になったのは「資本主義とは ,基本的に差異を生みだし ,その差異にもとづいてさまざまな集団 (あるいは階級 )を対抗 ・敵対させ ,そうした敵対 ・闘争の結果劣位に位置づけられた集団から利益を得るようなシステムであると考えられる」というところ。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 2, 2019
結局、ゲイも資本主義に組み入れられてしまったことが描かれていた。クイア・アイなんかはゲイの金持ちエリート的なファンタジーを流布させることに一役買っている。
— 六帖@慶應通信法甲73期🌸 (@_rokujo) August 2, 2019
★★★★☆
社会学参考文献6冊目。科学の世界はジェンダー中立かというと全然そんなことはない。女性蔑視はなはだしいです。科学的に女性は「劣っている(Inferior)」とみなされてきた、というとんでもない歴史(現在進行形である)が叙述されています。科学者が生物学やら心理学やらの権威を借りて作ったクソみたいな本が大量にあることがわかります。まだ読み終わっていないけど、英語の勉強も兼ねて最後まで読もうと思います。
★★★★☆
そこそこ前に読んだ本だけど社会学参考文献の7冊目にします。トランスジェンダーをめぐる論争の元凶となった「ジェンダー・トラブル」を含む、ジュディス・バトラー解説の本。バトラーの本を読んでも哲学の素養がないと意味が分からないのでこの本を読むとよいです。それでも慣れてないと難しい。乱暴にまとめると「ジェンダーは社会的なものである」ここまではわかるが「セックスも社会的な構築物、パフォーマティブなものである」と主張しているのが大きな特徴です。上野先生もおっしゃってましたがセックスは文化的記号的な面が確かにあります。言語でセックスを「おこなう」ことはある程度可能です。しかし「おこなう」ことがすべて現実であるというのは、あまりに物理的身体を軽視していると考えます。行きつくところ「俺がこう思うんだから現実が違うのはおかしい」という考えに安易に結びつきやすいのでは。物理的現実と観念的な言語は両輪でバランスを取るべきだと感じました。詳しいことは哲学の履修時にまた学ぼうと思います。