CDレビュー: Joseph Achron(comp), Michael Ludwig(vn), Alison d’Amato(pf) – Music for Violin and Piano

★★★★★(๑•̀ㅂ•́)و✧

久々のクラシック部門大ヒット!

ジョゼフ・アクロン – Wikipedia

作曲者のジョゼフ・アクロン(1886-1943)はユダヤ系ポーランド人のヴァイオリニスト兼作曲家です。ユダヤ人の天才ミュージシャンの例に漏れず、後年はアメリカに渡ります。

ヴァイオリニスト兼作曲家と言うと、まずパガニーニが思い浮かびますね。アクロンの曲はパガニーニほどテクニカルではありませんが、ユダヤの伝統音楽を下敷きにした情熱的で覆いかぶさるような迫力のある曲が多いと感じました。本アルバムはほとんどがユダヤ関連の曲で占められています。

まず耳を引き付けるのは2曲目Hebrew Piecesの1曲目Hebrew Dance。現代のダンス曲であるEDMはパターンと仕掛けが意図的かつ単純すぎて正直辟易ですが、ユダヤのダンス曲は違います。緩急も泣きも激情もヒステリーも静寂も全部詰まっています。後半の3連符畳みかけゾーンを聞けば胸にパッションの波がきっと湧き上がって来ますよ。

11曲目、Suite No.1の1曲目はJSバッハとパガニーニを足して2で割ったようなピアノVSヴァイオリンの対位法掛け合いの応酬に、8分+アルペジオを基調として上昇下降を見事に組み合わせた美しい曲です。これも素晴らしい。

17~19曲目のStempenyu Suiteは元ネタがユダヤ人のヴァイオリニストを主人公にした小説だそうです。3曲目の構成はどこでも聞いたことが無いようなユニークなものです。高周波も出していてとても楽しいですよ。CD中2番目のお気に入りです。

アクロンが活躍した時期は20世紀前半ですが、伝統に忠実に堅実な音作りをする作曲家であると感じました。当時活躍したバルトークやドビュッシーと比べて冒険的な曲は見当たりません。私はどちらも好きですが、アクロンの曲は当時ほとんど売れなかったそうです。

ヴァイオリンとピアノのペアって心にぐっときますよね。ヴァイオリンはもともと音程と音量を微妙にコントロールできる表現の豊かさ、直接脳に響いてくる共振性の強さなどから心をつかみやすい楽器ですが、それがしっとりとしたピアノと同時に聞こえてくると、特徴がより引き立ちます。久しぶりに体に染み入る曲を聴くことができました。ありがとうございました。

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Read Gainsford & Richard Spece – Music for Clarinet and Piano (2014)

★★★★☆

クラリネットはどことなく間抜けのようで、実は度量が広くて暖かい音を出す不思議な楽器だ。作曲者はいずれも20世紀の現代音楽家で、不安定なメロディーラインを特徴とする。現実と虚構、秩序と錯乱のあいだを行ったり来たり。これをクラリネットが演奏すると、ふざけているのか優しいのか狂ってるのか大真面目なのか全く判然としないのに、聞き手の気持ちはモヤモヤしない。何故かすっきりする。何度聞いても不思議な音色だ。

個人的には3番目のHamiltonさんの4番勝負が動きが大きく構成もアゲアゲだったり諧謔効かせまくりだったりで、一番好き。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD10) Pierre Boulez, Karlheinz Stockhausen

★★★☆☆

ブーレーズ先生全然わかりませんよ。。1曲目は初出1958年という早すぎたノイズ音楽。異様、という感想しかつけられない。残りは意味不明!!音楽っていったいなんなんじゃろうねぇ。

Track List:

     1     
Poésie pour pouvoir, for 5-track tape and 3 orchestra groups
Pierre Boulez
                
    2     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    3     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    4     
Structures, Book II, for 2 pianos
Pierre Boulez
                
    5     
Kontra-Punkte, for 10 instruments
Karlheinz Stockhausen

 


Johann Sebastian Bach , Emerson String Quartet – Art of Fugue for String Quartet (DG 111 CD12)

★★★★☆

DG111の12枚目。BWV1080は最晩年に書かれた曲で、楽器指定がなされていない。チェンバロやピアノでも演奏されることがあるそうだが、このCDは弦楽四重奏版。彼の宗教家と言うよりは職人芸の極みという感のある曲をヴァイオリン四本が丹念に弾いてゆく。

wikipediaには次の評がある。

単純な主題を入念に組み合わせることによって究極へと導いた。

私にはまだ彼の創造性を理解することができない。分かりやすい現代商業音楽に毒されてしまっているためだろう、どうしても展開に乏しかったりドラマチックさに欠けるように感じてしまう。音楽に何を求めるか、という姿勢の問題だ。冒険や高揚感、ドキドキするスリルや奇抜性を求めるのか、調和や静寂、安心感、論理的整合性、音階や理論の緻密さを求めるのか。ふつーの人間は前者を求めてしまうだろう。私もそうだ。年を取れば後者を求めるようになれるのだろうか?知識と経験は音楽体験を豊かにしてくれるのか?もっとたくさんの音楽を聴き続けなければいけないのだろう、とごく当たり前のことを考えた。


Gustav Mahler, Gustavo Dudamel (Cond.), Simón Bolívar Youth Orch. of Venezuela(Orch.) – Symphony No.5 (DG111 CD11)

★★★☆☆

以前小澤征爾版でも聴いたでかい交響曲。

Gustav Mahler, Seiji Ozawa(cond.), Boston Symphony Orchestra – Symphony No.5(CD8) – diary 六帖

マーラーさんは勿体ぶるカッコつけマンだと思った。第一楽章のトランペットによる主題は堅苦しく「それが武士の務めでごわす」とでも言いそうな古武士のような印象を与える。前書いた記事ではちょっと褒めてるけど、2~4楽章はキレイではあるんだがこの演奏が悪いのか全然印象に残らない水出し緑茶のような感じ。引っ張って引っ張って最後に盛り上げるのが好き。5楽章のラストはさすがド派手どーんでお見事なんだけど40分くらいひっぱるのはちょっと。。私には勿体ぶり攻撃に耐えるだけの体力がまだないよ。


75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD9) Karl Amadeus Hartmann, Pierre Boulez, Luigi Nono, Iannis Xenakis, Krzysztof Penderecki, György Ligeti

★★★★☆

 2と4がよい。いずれも弦の数で主張を押し通す類の曲で、特に4曲目がタイトル通り”Metastasis(転移)”を表していて気持ち悪くて良い。FF5をプレイしていた時、古代図書館で「64ページ」などの気持ち悪い敵が現れる。あの本の中から飛び出てくるエフェクトが気味悪くて後々まで印象に残っているのだが、あれに近い感じをうけた。

Xenakis: Orchestral Works, Vol.5 – Classical Archives ここで視聴可能。

他は相変わらず意味不明な曲揃いで、そろそろこのシリーズも疲れてきた。

Track List    

  1     
Adagio
Karl Amadeus Hartmann
                
    2     
Polyphonie X, for 18 instruments (withdrawn by composer)
Pierre Boulez
                
    3     
Espressioni (2), for orchestra
Luigi Nono
                
    4     
Metastasis, for 60 musicians (Anastenaria, Part 3)
Iannis Xenakis
                
    5     
Anaklasis, for string orchestra & percussion
Krzysztof Penderecki
                
    6     
Atmosphères, for large orchestra
György Ligeti 


Great Pianists of the 20th Century Vol.5 – Claudio Arrau II (CD2)


★★★★☆
主にリストとシューマン。リストのピアノソナタで4枚目にして初めて爆音で弾いた。だが汚くはない。このジャケットの写真のせいでヒゲのナイスミドルが華麗に弾いている場面しか想像できなくなってしまった。流れるようにそつなく弾きこなし、第一楽章が特にお見事。だがインパクトには欠けるか?シューマンのピアノソナタは盛り上がるのか盛り上がらないのかつかみどころのない印象だった。

Track List:
Frederic Chopin
1. Fantaisie In F Minor, Op. 49
Franz Liszt
2. Piano Sonata In B Minor, S. 178: Lento assai - Allegro energico
3. Piano Sonata In B Minor, S. 178: Grandioso - Recitativo-
4. Piano Sonata In B Minor, S. 178: Andante sostenuto-
5. Piano Sonata In B Minor, S. 178: Allegro energico - Andante sostenuto - Lento assai
Robert Schumann
6. Fantasie In C, Op. 17: Durchaus phantastisch und leidenschaftlich vorzutragen - lm Legendenton
7. Fantasie In C, Op. 17: Massig. Durchaus energisch - Etwas langsamer - Viel bewegter
8. Fantasie In C, Op. 17: Langsam getragen. Durchweg leisi zu halten - Etwas bewegter

Great Pianists of the 20th Century Vol.5 – Claudio Arrau II (CD1)


★★★★★(ฅΦωΦ)ฅ
1枚まるごとベートーベン三昧。ワルトシュタインの2曲目が最高!!塞ぎこみがちな気持ちを一気にぶっとばしてくれる美しさ!1曲目の特徴的なイントロはなんとスピードを落として優しく優しく弾く、というサプライズな表現に。すげぇなあ。
ホントこの人は綺麗な音を出す。ピアノコンチェルト「皇帝」もトレビアーンセブレシューペールブボンソワール(アラウさんはフランス人ではない)。

Track List:
Ludwig van Beethoven
1. Piano Sonata No. 21 In C, Op. 53 'Waldstein': 1. Allegro con brio
2. Piano Sonata No. 21 In C, Op. 53 'Waldstein': 2. Introduzione. Adagio molto - Rondo. Allegretto moderato - Prestissimo
3. Andante favori In F, WoO 57
4. Piano Concerto No. 5 In E Flat, Op. 73 'Emperor': 1. Allegro
5. Piano Concerto No. 5 In E Flat, Op. 73 'Emperor': 2. Adagio un poco mosso
6. Piano Concerto No. 5 In E Flat, Op. 73 'Emperor': 3. Rondo. Allegro

75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD8) Pierre Schaeffer, Luigi Nono, Michaël Levinas, Younghi Pagh-Paan, Anton Webern


★★★☆☆
1-7曲目はオケ要素の少ないサウンドコラージュ。弦がうねり狂う9曲目Par-de làのみそこそこ面白かったが、あとは動きの少ない曲が多くいまいち。

Track List:
1-7
Orphée 53, spectacle lyrique
Pierre Schaeffer
8
Post-Prae-ludium No.1 "per Donau", for tuba & live electronics
Luigi Nono
9
Par-de là
Michaël Levinas
10
Nim, for large orchestra
Younghi Pagh-Paan
11
Bagatelles (6) for string quartet, Op. 9
Anton Webern