CDレビュー: Giuseppe Verdi, RIAS-Symphonie-Orchester Berlin(orch), Ferenc Friscay(cond) – Messa de Requiem (DG111 CD16)

★★★★★

イタリアの大オペラ作家ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)によるレクイエムです。

どこの魔王が死んだんだよwww

第一印象です。いくらオペラ作家だからって、派手過ぎ!これでカトリックのミサやったら、永久追放されるんじゃないか!?ってくらいデーハー。

キリエエレイソーン(主よ、憐れみたまえ~)エレイソーン→エレイソォォォーーーンエレーーーエイソォォ-ンォォォォエ!レ!イ!ソン!エ!レ!イ!ソン!エーーレーーーイソォーーーーーーーーーン→エレイソーーーン

と盛り上がって静かになった直後に2曲目Dies Iraeがジャジャーンピロピロピロピロディーーエーーースイーレーーー(怒~り~の日~~~)ドンジャジャーーンドッカンバッカンと始まる。やりすぎ。ドラマチック過ぎ。

その後も折に触れてブラスセクションの勇ましいメロディーが鳴りまくり、録音が1954年と古いため盛り上がる度に音が割れまくりで、笑っちゃうくらい汚くなりますがかえってこの曲のエネルギーのすさまじさをよく表現できていると感じました。

もちろんしっとりと死者を悼むパートも多いのですが、まるでオペラのソロパートのように美しいです。最後の最後まで劇的な展開は目まぐるしく続きます。

史実によればこの曲はヴェルディが敬愛していたイタリアの文豪、アレッサンドロ・ナンゾーニの追悼のために書かれたそうです。どれほど彼にとってショックだったのかよくわかりますね。次はもっと音のいい演奏で聞いてみたいですが、これほど熱のある演奏は他にあるのでしょうか!?

 

かなり有名な演奏のようで、youtubeに何件も動画がありました。


Ferenc Fricsay "Messa da Requiem" Verdi – YouTube

 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Ola Gjello – Northern Lights(2012)

★★★★★

若手音楽家による合唱曲集

オーラ・ヤイロ(1978-)はノルウェー生まれの若手音楽家です。ノルウェー国立音楽学院、イギリス王立音楽大学で学んだ後、アメリカに渡りジュリアード音楽院で作曲の修士号を取得するという輝かしいリッチ野郎(いけすかねぇ!)です。

本作品は彼の合唱曲集という位置づけで、オケや弦楽カルテットとの共演もありますがメインは人間の声オンリーの曲です。彼は敬虔なキリスト教徒のようで、そのほとんどの副題がKyrie EleisonやAgnus Deiと宗教曲なのです。

人間の声の偉大さで魂を揺さぶる

人間の声オンリー曲がどれも素晴らしい。声は様々な周波数を含んだ複雑な音ですが、これが多重になると、みんなに共通する音の部分が丸く重厚なパイプ?土管?のような基盤になりつつ、共通しない部分が合唱団独自のスパイスとなって振りかけられるわけです。演奏によって一つとして同じ音とはならないでしょう。これらがまた和音になるんですよね。静かな音も美しいし、5重にも6重にも重なってしかもこれが幻想的美しい和音だったりするともうブルブルしちゃいます!特に表題曲 Northern Lights が最も素晴らしい。特に後半の不思議な和音とその後の静寂にかけての流れが最高です!当たり障りのない言葉でしか表現できないのがもどかしい。

彼のアルバムはもう1枚Amazonで出てるので、こっちも聞いてみようかな。。

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.7 – Vladimir Ashkenazy(CD2)

★★★★☆

2枚目は、ラヴェル・シューマン・ラフマニノフが主体でした。

変奏曲楽しい!

このうちラフマニノフの 「コレルリの主題による変奏曲」が一番熱を持っています。冒頭のちょっと泣けるテーマがラフマニノフによって21もの形に生まれ変わるのです。合計22曲ありますが実質上1つの大きな曲と見て良いでしょう。

変奏曲とは面白いものです。例えばメインテーマを安倍晋三だとしましょう。するとまず生の安倍晋三が1曲目に現れてきます。2曲目からは様々な安倍晋三が登場します。小学生の安倍晋三。昭恵ちゃんとデートする安倍晋三。腹を下した安倍晋三。月面に降り立つ安倍晋三。ワーテルローの戦いから厳めしい軍服姿で帰還する安倍晋三。市民に捕えられ今まさにギロチンにかけられんとす絶望の安倍晋三。新宿二丁目でハッテンする安倍晋三。小林幸子のようなギンギラギンで衣装をまとって天から舞い降りてくる安倍晋三。安倍晋三を核として様々な装飾が施され、時々安倍晋三が見えなくなるくらい劇的な改変が行われることすらあります。しかし中心には必ず安倍晋三という筋が通っているのです。例が悪くてごめんなさい。私は安倍が嫌いです。泣けないし。

夜のガスパール

ラヴェルの「夜のガスパール」は彼が詩人ルイ・ベルトランの詩集にインスピレーションを受けて作曲したものです。幻想的ですが私には難しく、良さが分かりませんでした。機会があったら元ネタの詩集を読んでみようと思います。

ちょっと探したら青空文庫にあるみたいですね。

図書カード:夜のガスパール 抄

 

アシュケナージさんの演奏はとてもスタンダードで奇を衒わず、大げさでもなくかつダイナミックな親しみやすい演奏です。彼はCDを大量に出していますのでまた聴く機会があることでしょう。

TrackLists

 

Maurice Ravel:

1. Gaspard de la nuit: 1.Ondine
2. Gaspard de la nuit: 2.Le gibet
3. Gaspard de la nuit: 3.Scarbo

Robert Schumann:
4. Humoreske, Op.20: I. Einfach
5. Humoreske, Op.20: II. Hastig
6. Humoreske, Op.20: III. Einfach und zart
7. Humoreske, Op.20: IV. Innig
8. Humoreske, Op.20: V. Sehr lebhaft
9. Humoreske, Op.20: VI. Zum Beschluss

Sergei Rachmaninov:
10. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Theme
11. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation I
12. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation II
13. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation III
14. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation IV
15. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation V
16. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation VI
17. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation VII
18. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation VIII
19. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation IX
20. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation X
21. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XI
22. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XII
23. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XIII
24. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Intermezzo
25. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XIV
26. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XV
27. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XVI
28. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XVII
29. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XVIII
30. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XIX
31. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Variation XX
32. Variations On A Theme By Corelli, Op.42: Coda

Sergei Prokofiev:
33. No.10 From Romeo And Juliet, Op.75: ‘Romeo And Juliet Before Parting’

Alexander Borodin:
34. Scherzo In A Flat

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.7 – Vladimir Ashkenazy(CD1)

★★★★★ʕ→ᴥ←ʔ

 

ウラティーミル・アシュケナージ(1937-)はソ連出身のユダヤ人ピアニストです。ユダヤ人は音楽家にいったい何人いるのでしょうね。

ご存命で、70年代以降は指揮者としても活躍しています。このジャケットでは繊細そうな若者ですが、今の姿もナイスですよ!

http://medias.medici.tv/artist/vladimir-ashkenazy_c_jpg_681x349_crop_upscale_q95.jpg

Medici: ウラティーミル・アシュケナージ

ショパンとリストで別人に

ボックス1枚目はショパンとリストを取り上げています。彼のピアノは弾き分けがうまく、7曲目までと8曲目以降はまるで別人です。ショパン曲は暗く重苦しい気持ちにさせてくれます。7曲目バルカローレ(舟歌)なんか傷心旅行で川に揺れながらいったいどこまで落ちぶれていくのかもうどん底って感じです。

リストが神々しい

対照的に、リスト曲は天井の彼方まで連れ去ってくれます。8曲目超絶技巧練習曲(すごいタイトル)が始まった途端天井から大量の光が漏れてくるようです。超絶技巧と銘打ってますが、リストの過剰なまでの壮大な曲構成力が背骨を支え、さらに指が15本くらい必要そうな大量の音を流し込むことで他では聞けないようなド迫力の演奏が繰り広げられます。特に11, 12, 13曲目は胸の奥がぐぐーと押されたり広げられたりして聴いている方も大変です。13曲目がいちばんすごい。大河が押し寄せる様子や大きな山々、宇宙の彼方などとにかく大きな大きなものが想像されます。美しい。。このCDを聴いて自分ってリスト大好きなんだな、と再認識しました。

 


Ashkenazy plays Liszt Harmonies du Soir – YouTube

楽譜で見てみるとオタマジャクシの群れにしか見えないですね。

 

自信をもってお勧めできる1枚です。

 

Tracklists

 

Frederic Chopin:

1. Scherzo No.4 In E, Op.54
2. Nocturne In B, Op.62 No.1
3. Mazurka In A Flat, Op.59 No.2
4. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.1 In F Minor
5. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.2 In A Flat
6. Trois nouvelles etudes, Op. Posth.: No.3 In D Flat
7. Barcarolle In F Sharp, Op.60

Franz Liszt:
8. Etude d ‘execution transcendante:: 1.Prelude (Presto)
9. Etude d ‘execution transcendante:: 2.Molto vivace
10. Etude d ‘execution transcendante:: 3.Paysage (Poco adagio)
11. Etude d ‘execution transcendante:: 5.Feux follets (Allegretto)
12. Etude d ‘execution transcendante:: 10.Allegro agitato molto
13. Etude d ‘execution transcendante:: 11.Harmonies du soir (Andantino)
14. Etude d ‘execution transcendante:: 8.Wilde Jagd (Presto furioso)
15. Mephisto Waltz No.1

 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: 75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD12) Olivier Messiaen, Elliott Carter, Wolfgang Rihm, Johannes Kalitzke

★★★★★

1,2曲目に注目

1曲目はオリヴィエ・メシアンという作曲家で、たまたま次の現代音楽の試聴ターゲットにしようと思っていた人です。

この人は絶対音感と共感覚の持ち主で、あらゆる現象を音に還元できるすっごく変な人です。さらに無類の鳥マニアで、鳥に関連する曲を大量に作ります。鳥の声を全て12音階に落とし込むのです。1曲目Réveil des oiseaux, for piano & orchestraは、最初から最後まで鳥が鳴きまくるというとてつもないカオスに包まれた曲となっています。

参考映像:この映像は10分ですが当CD版だと21分あります。

www.youtube.com

 

2曲目エリオット・カーターによるオーボエ協奏曲も好みの曲です。オーボエという存在感があるような無いような楽器を主役に添え、周りの弦も安定しているような全然していないような不安定なまんま延々突き進みます。一般的なクラシックに存在するクライマックス、最終的な解決もカタルシスも調性もありません。最後は静寂で終わります。

www.youtube.com

4曲目Nachtschleifeもかなりキテます。全編声だけで構成されてますがプシャーとかブシーとかデデデデとか擬音語たっぷりです。ふなっしーもびっくり。残念ながら参考映像はありませんでした。

12枚聴き終えた。。なぜ私たちは音楽を快いと感じるのか

初演の現代音楽しか演奏しないドナウエッシンゲン音楽祭のボックスということで、常に時代の最先端、Leading Innovationな音楽が上演されていたチャレンジ精神あふれる曲ばかりでした。現代音楽は既存の価値観と再構成、パラダイムシフトを追及する音楽ですので、聞き手の意識変革も必要となります。いかなる意味不明な音が流れてきてもそこには作曲家の思想が込められています。訳わかんないよ、と異質なものをシャットアウトするのではなく、俺様が意味を理解してやる、くらいのエンタープライズ心がないととても最後まで聴きとおせません。何回聴くのをやめて投げ出したくなったか分かりません。なんとか最後まで聴きとおせたことで、もうどんな曲がやってきても聴き続けられる自身が付きました。

私達が音楽を快いと感じるのは何故でしょうか。音は物理的な波、空気の疎密の揺らぎに過ぎません。我々が音に意味を付け、その意味を発展させることで音楽が生まれます。つまり我々は音楽を聴くことを通して音楽を作っているのです。音楽は言語と同じような位置づけにあると言えます。口語も音ですから、主体が私達であることに変わりはありませんね。

言葉から快が生じるように、音楽からも快が生じえます。最も典型的なのは反復だと思います。以前に聴いた音の組み合わせをもう一度聞くと、「同じ音」という記憶の塊のような部分に電気信号が走り、それによって快感が得られる、という仮説です。現代ポップスの「サビ」「リフレイン」などはインスタントな反復装置を提供する仕組みです。中毒させることを意図したカタカナ語が他にあった記憶がありますが思い出せません。王道のコード進行パターンなんかもこれにあたると思います。

現代音楽は真っ向からこの反復に対抗します。新しい音楽は過去の反復であってはなりません。創造的な音楽は過去の反復遺産からの決別、離脱によって成り立ちます。そして創造は未来永劫やむことはなく、しかも我々に即効性のある「快」をもたらすことはほとんどない、という運命にありそうです。何故なら私たちがその音楽から反復による「快」を享受するとき、その音楽はもはや新しくないのですから。。

しかし新しい音楽からも突然「快」を得られることもあります。例えば3枚目の四分音を使った弦楽四重奏には衝撃を受けました。

私にとっては大きな「快」をもたらす音楽でしたが、これはどうして「快」と感じたのか未だにわかりません。今後も考え続けていこうと思います。そして、このような曲に巡り合うため、もっと多くの音楽を聴きたくなりました。

 

Track List:

   1     
Réveil des oiseaux, for piano & orchestra, I/40
Olivier Messiaen
                
    2     
Oboe Concerto
Elliott Carter
                
    3     
Frau / Stimme, for soprano & orchestra with second soprano
Wolfgang Rihm
                
    4     
Nachtschleife
Johannes Kalitzke

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: J.S.Bach, Pierre Fournier(Vc) – Cello Suites (DG111 CD14, 15)

★★★★★(*´ω`*)

ピエール・フルニエ(1906-1986)によるバッハ無伴奏チェロ組曲集(全曲)です。2枚組138分とかなりのボリュームです。第一番の前奏曲は非常に有名ですので、聞いたことがある方は多いでしょう。私も昔テレビCMで聞きました。

www.youtube.com

バッハの曲と言うと形式ばって堅苦しく取っつきにくい印象を持つものが多いですが、この曲は親しみやすさを感じました。というのも、ほとんどが舞曲であるため人間のリズムと調和しているからだと考えられます。

一本の楽器で演奏するとは思えないダイナミックな曲、フルニエさんの鳥肌が立つような気持ちの入れ方が際立つ演奏。いま↑の音声を聴きながらこの記事を書いていますが前奏曲のラストはお腹に響く歌いっぷりですよ。すごい。

他にはNo.2のジーグの快活なノリの良さ、No.3の前奏曲のアルペジオを引いているだけなのに大きな塊が迫ってくるような圧倒性にも驚かされました。No.5以降は突然趣向が変わり暗く重々しくなり長大になります。何があったのでしょうね。フルニエさんは全曲を通してとにかくタメるは歌うは全身全霊を賭けているような印象を持ちました。でも聞いていて疲れるわけではありません。不思議です。

チェロ組曲を通しで聴いたのはこれが初めてです。他にもヨーヨーマなど名立たるチェリストがこの曲を録音しているそうですが、フルニエさんと比べてどのような演奏をしているのかとても気になります。

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Franz Schubert, Dietrich Fischer-Dieskau(Bar), Gerald Moore(pf) – Winterreise (DG111 CD13)

★★★★★

美しい!

シューベルトの歌曲集「冬の旅」は、ヴィルヘルム・ミュラーというドイツの詩集にシューベルトが歌を付けたものです。失恋した若者が死を求めながらクソ寒い冬の中さすらいの旅を続ける、という筋書きのためドイツ語が全く分からなくても冒頭からラストまでめちゃんこ暗いことが聴き取れます。また、シューベルト自身も体調を崩ししかも貧乏、さらに尊敬していたベートーヴェンが死ぬしもうどん底、死について深く考えていた時期であったことが暗さに拍車をかけています。そしてシューベルトは作曲した翌年に無くなります。後半12曲はシューベルトの死後に出版されたそうです。どんな気持ちで亡くなったのでしょう。

しかしながら、極度の絶望は転じて美しいものです。友達に絶望している人がいたら正直困りますが、作品の中で絶望しているのは美しく見えてしまうものです。人間とは無責任なものですね。

1曲目でいきなりマイナー→メジャー転調が出現します。少し前に聴いたタンゴ曲にも表れていた、日本歌謡曲黄金パターンの進行です。歌謡曲はシューベルトを参考にしていたのかもしれません。

フィッシャー=ディースカウさんのバリトンの歌唱も見事です。抑えて抑えて、ここぞというときに爆発させる私好みの歌唱法です。また歌では必須の要素ですが、声が良いです!魅力的。

それにしてもドイツ語が分からないのがもどかしい!絶対に勉強して詩を理解できるようになるのだ、という気持ちを奮い立たせる力のある楽曲でした。

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: 75 Jahre Donaueschinger Musiktage 1921-1996 (CD11) Igor Stravinsky, Bernd Alois Zimmermann, Heinz Holliger, Helmut Lachenmann, Andreas Raseghi

★★★☆☆

CDが進むごとに難解になっていきます。2曲目は弦で遊んでいるようにしか聞こえないし、3曲目は音階ゼロの雰囲気だけで押しきる曲、4曲目は長いだけ。1、5~7曲目のみ既存の音楽受容の枠組みでなんとか「音楽」として聴ける(それでもすごく苦しい)範囲の楽曲でした。

いったい音楽に「形式」や「パターン」は必要なのでしょうか。これらを取り去ると音は我々の認識からかけ離れたものに変化します。一定の秩序を与えて私たちは音楽を聴くことが可能になります。今までに聴いたことのある音の組み合わせをもって、我々は「快い」と感じます。しかしそれはただの慣習なのではないでしょうか。慣れ親しんだ一定の文法規則をなぞっているだけではないのでしょうか。そう考えて、現代音楽家は誰も聞いたことがない曲の発明に熱心に取り組んだのだと思います。

その結果、人間に理解不能な音がたくさん生まれました。ハッキリ言って聴くのが辛いです。「快」を感じられません。しかしこのような曲にまた「慣れる」ことで新しい音楽文法を体得できるのではないかと考えます。しかし「慣れて」しまったら彼らの試みは原理的に失敗するのかもしれません。そんなことを考えながら聴いていました。音を素直に聴くのは難しいです。

 

4曲目は米国amazonで視聴できます。評価高いです。全く分かりません。

 

Track List:

1     
In Memoriam Dylan Thomas, dirge-canons & song for voice, string quartet & 4 trombones
Igor Stravinsky
                
    2     
Sonata, for solo viola
Bernd Alois Zimmermann
                
    3     
Pneuma, for orchestra
Heinz Holliger
                
    4     
Schwankungen am Rand, for orchestra
Helmut Lachenmann
                
    5     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi
                
    6     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi
                
    7     
Kammerquartett
Andreas F. Raseghi  

 


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.6 – Claudio Arrau III (CD2)

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41MBPD5XECL.jpg

★★★☆☆

1曲目の邦題は「巡礼の年・オーベルマンの谷」。スイスへの旅で感じた印象を曲にしたものです。旅にしては一体何があったのかと思うほどドラマチックで激しい曲ですが、これは「オーベルマン」という小説からヒントを得て、リストが苦悩などを表現した結果であるためです。リストらしく大胆でぶっ飛んだ表現が印象的です。

2曲目以降は、曲は悪くないのですが私がアラウさんの演奏に飽きてしまいました。ポロポロと軽く弾くのはよいのですが、全然胸に染みないのです。この2枚組でアラウさんの演奏は終わりですが、正直他のピアニストに早く変わってほしいとさえ思ってしまいました。ごめんなさい。

Track List:

1 Franz Liszt: Années de Pélerinage Première Année: Suisse: 6 Vallée d’Obermann 14:59
2 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.1 in C 5:48
3 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.2 in A Flat 6:45
4 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.3 in F Minor 2:03
5 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.4 in C Sharp Minor 5:57
6 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.5 in F Minor 2:43
7 Franz Schubert: Moments Musicaux, D.780 – No.6 in A Flat 7:47
8 Claude Debussy: Images, Book2 – 1 Cloches à Travers les Feuilles 5:23
9 Claude Debussy: Images, Book2 – 2 Et la lune Descend sur le Temple qui Fut 6:10
10 Claude Debussy: Images, Book2 – 3 Poissons d’or 4:31
11 Wolfgang Amadeus Mozart: Fantasia in C Minor, KV475 12:59

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Great Pianists of the 20th Century Vol.6 – Claudio Arrau III (CD1)

★★★★☆

前半はショパンの前奏曲集。正直なところ、はじめの14曲はいまいちでした。。アラウさんは決して汚い音を出しません。こんなこと言うと世界的ピアニストにすごく失礼なのですが、現代音楽に毒されている私にはメリハリがなく飽きてしまいました。ところが15曲目の「雨だれ」以後は激しい曲が増え俄然面白くなってきます。ラスト24曲目は初めから終わりまで積乱雲でもかかっているような不安定さで落ち着きませんが、締めくくりにfffという最強音をぶつけてきます。彼はなんとここに強弱をつけてきました。いいですね。

前奏曲集は12音階+長調短調を全て使用した画期的な曲集です。私なんかよりずっとエレガントな解説がこちらにあります。読んでみてください。

ショパン・前奏曲(プレリュード)〜作品解説・難易度・演奏法〜

30曲目のリストによるアイーダ」から神前の踊りと終幕の二重唱、は全体的にかわいらしく、なのに悲劇的要素も威厳に満ちたフレーズも備わっている不思議な曲です。これもよいですね。

Track Lists:

Frederic Chopin

1. Preludes, Op. 28: No. 1 In C
2. Preludes, Op. 28: No. 2 In A Minor
3. Preludes, Op. 28: No. 3 In G
4. Preludes, Op. 28: No. 4 In E Minor
5. Preludes, Op. 28: No. 5 In D
6. Preludes, Op. 28: No. 6 In B Minor
7. Preludes, Op. 28: No. 7 In A
8. Preludes, Op. 28: No. 8 In F Sharp Minor
9. Preludes, Op. 28: No. 9 In E
10. Preludes, Op. 28: No. 10 In C Sharp Minor
11. Preludes, Op. 28: No. 11 In B
12. Preludes, Op. 28: No. 12 In G Sharp Minor
13. Preludes, Op. 28: No. 13 In F Sharp
14. Preludes, Op. 28: No. 14 In E Flat Minor
15. Preludes, Op. 28: No. 15 In D Flat ‘Raindrop’
16. Preludes, Op. 28: No. 16 In B Flat Minor
17. Preludes, Op. 28: No. 17 In A Flat
18. Preludes, Op. 28: No. 18 In F Minor
19. Preludes, Op. 28: No. 19 In E Flat
20. Preludes, Op. 28: No. 20 In C Minor
21. Preludes, Op. 28: No. 21 In B Flat
22. Preludes, Op. 28: No. 22 In G Minor
23. Preludes, Op. 28: No. 23 In F
24. Preludes, Op. 28: No. 24 In D Minor
25. Prelude In C Sharp Minor, Op. 45 – Chopin
26. Prelude In A Flat, Op. Posth. – Chopin
27. Nocturnes, Op. 48: No. 1 In C Minor
28. Nocturnes, Op. 48: No. 2 In F Sharp Minor

Enrique Granados:
29. Quejas O La Maja Y El Ruisenor (From: Goyescas)

Giuseppe Verdi(arr. Franz Liszt)

30. Aida: Danza Sacra E Duetto Final 

 

 

クラシックの他のCDレビューはこちらです。