書籍レビュー: バイオテクノロジーで世界征服 『モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業』 著:マリー=モニク・ロバン 訳:村澤真保呂、上尾正道

★★★★★(・:゚д゚:・)ハァハァ

 

聞いたことがありますかモンサント。全世界の遺伝子組み換え企業の総本山としてよく知られた企業です。本書はモンサントについて著者が4年に渡る調査を行った結果として書かれた本です。

圧倒的情報量を訳者がさらに補強

まず本書の目玉は圧倒的な情報量です。本文が約540ページもある上に文字が小さめで、膨大な出典付き。それに加えて訳者も本書のあちこちに注と参考文献を2Pに1冊くらいの割合で紹介してくれており、巻末の参考文献もざっと100冊はありそうです。巻末の文献と本文中の文献は独立していて別物です。いったいどれだけ調べたのでしょう。1冊の本を完成させるまでに相当の労力を費やしたことがわかります。

驚くべきはこのモンサントという企業、あらゆる要素を駆使して世界的企業に成長したということです。それも合法的に。

まず国の中枢に働きかけ、環境汚染しながら利益を蓄える

第一部ではPCB、ダイオキシン、ラウンドアップ、牛成長ホルモンを通じてモンサントが巨大企業になっていく過程が書かれています。モンサントと言えば遺伝子組み換え作物(GMO)という先入観がありましたので、公害は「だいたいこいつのせい」と言っても過言ではないくらい、多くの製品を生産していたことは知りませんでした。例えばPCB。

PCBといえば日本ではカネミ油症事件で一躍有名になった有機塩素化合物です。熱にも電気にも薬品にも強い優秀な物質で、加熱冷却用媒体、溶媒、絶縁油などあらゆる工業製品に置いて広く使用されていました。しかしその安定性ゆえに分解されることなく、人体の脂肪内に蓄積されガン・皮膚疾患・ホルモン異常などを引き起こす毒物でもあります。カネミ油症事件ではPCBが漏れ油に混入、加熱によってダイオキシンに変化しこれを摂取した1万4千人に症状が現れました。日本では1975年に輸入が禁止されました。

また、ベトナム戦争で有名になった枯葉剤も彼らが作りました。枯葉剤は「2,4,5-T」という除草剤で、やはり有機塩素化合物です。2,4,5-T自体も毒性がありますが本当にまずいのはその生産過程で不純物として発生するダイオキシン類です。これがベトナムで大量に散布された結果出生異常児が大量に出現したことは有名です。が、驚いたのは40年以上もたった現代でも未だにダイオキシン類が土壌に存在し、健康被害を及ぼし続けているということです。本書で「ホットスポット」「半減期」という単語が出てくるのはまるで放射性物質のようです。前述の安定性ゆえ半減期は数十年。セシウムに匹敵します。

牛成長ホルモンについては次の本にも詳しく書かれています。これもモンサントが普及させました。

 

モンサントはこれらの怪しい物質を、政治家へのロビー活動や有毒性の情報隠蔽などのあらゆる手段を使って売り込むことに成功し、莫大な利益を上げます。

次はアメリカ制覇

第二部はアメリカ制覇への道です。

彼らの売れ筋除草剤ラウンドアップは2000年に特許が切れます。そこで彼らは除草剤と植物を抱き合わせで売り込むという商法を思いつきます。バイオテクノロジーを使って除草剤耐性の遺伝子組み換え作物を作り、それに特許を取らせてライセンス料で稼ぐ、しかも除草剤も売れるという手法です。完璧すぎます。

遺伝子組み換え作物の開発については、プロジェクトXもびっくりの臨場感ある叙述がされます。クレイジーな研究者たちは魅力にあふれています。彼らがバクテリアや遺伝子銃やらなんでも使って除草剤耐性遺伝子を組み込むための血のにじむ努力を続け、運よく生き残った作物のDNAは、特許を獲得します。

生物特許は当時アメリカで認められていませんでしたが、彼らは第一部で磨いたロビー活動の力で特許法を改正させてしまいます。

特許とは無形の財産たる発明、すなわち簡単にパクれる財産を保護するため、新規性などを要件にして、排他的な独占権を認めるものです。この「排他的」はものすごく徹底されていて、著作権よりも遥かに強力です。たとえば公権力を使って海賊品の強制的差し押さえができます。刑事裁判にかけて莫大な損害賠償を請求できます。しかも保護されるのは「アイデア」そのものですから、拡大解釈がかなりの程度可能です。著作権が具体的な作品の差し止めしかできないのとは大違いです。

例えばモンサントの遺伝子組み換え大豆がうっかりそこらへんの畑に落ち、芽を出したとします。するとその畑の持ち主は訴えられ、損害賠償を請求されます。ウソのような話ですが本当の話です。

またGMO種子は1代限りにして種を保持するな、という契約を強制します。毎年種を買わせるためです。種子の保存が見つかれば訴えられ、必ず負けます。モンサントは法務部も超強力で、何千件もこのような訴訟を起こします。

さらに、「実質的同等性」というクソのような概念をロビー活動で導入します。これは「遺伝子組み換え作物は従来の作物と(だいたい)タンパク質組成などが同じなので、安全性の検査の必要性は、従来作物と同じでよい」という概念です。この原則に従えば遺伝子組み換えに伴う安全性の検査不要!!0ドル!!素晴らしく経済的な概念です。モンサントすげぇ!シビれる!憧れるぅ!

モンサントはアメリカ中の大手種子会社を買収し、GMO市場、ひいてはアメリカ作物市場を独占していきます。

最後に世界制覇

第三部では発展途上国への進出です。本書ではアルゼンチン、ブラジル、インド、パラグアイなどを制覇する様子が描かれます。

GMOは実質上のモノカルチャー推進事業ですので同じ作物ばかり作り続け、土地が荒れます。また、除草剤をラウンドアップしか撒かないので耐性昆虫や耐性菌が必ず出現し、毎年除草剤の量を増やさなければいけない宿命にあります。GMOの導入は除草剤を減らす目的だったのに矛盾した話です。ともあれ、農薬大量投入は必然的に世界中で健康被害を引き起きしました。

アルゼンチンは大豆畑まみれになりました。海外では大豆は食用ではなく、主に飼料用です。この飼料をアメリカやヨーロッパに輸出し、大量の肉が生産されます。この過程も先に引用した「ファーマゲドン」にも詳しいです。先進国の貪欲さが途上国の貧困と荒廃を招く分かりやすい例です。

次は日本の番

WTOは世界中にアメリカの論理を広める手段として活躍しました。例えばTRIPs協定。その(意図的に)難解な条文は弁理士試験受験者を悩ませる種の一つですが、これは生物特許を全世界で認めさせるための手段でした。そんなことも知らないで勉強していた私はアホですね。

本書でも警告されていますが日本はまもなくTPPを批准します。アメリカ流を踏襲するなら、現行の(遺伝子組み換え作物不使用)の表示は外さなければいけなくなる可能性が高いです。モンサントの利益に反するためです。こんな表示があったら遺伝子組み換え作物が売れないからです。

TPPにはISDS条項というものがあります。

大企業覇権としてのTPP

投資家が国家を訴えられる条項です。TPPを批准すれば、モンサントが日本を訴えて遺伝子組み換え作物の表示をやめさせることができるようになります。今後、日本にも続々とGMOが輸入されることでしょう。GMOの栽培は国としては禁止していませんが、日本は国土が狭いので北南米のようなGMO作物の広域大量栽培をすることが経済的に不可能なのが救いです。

 

おわりに

モンサントの言い分がしょっちゅう出てきますが、どれもこれも、この本の論調と同じです。

もちろん遺伝子組み換え食品は実質的同等性により安全であるともこの本に書かれていました。

 

 

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成長著しいモンサントの株価は2008年にはテンバガーを達成します。リーマンショックを乗り越え、また2008年並みの価格に落ち着いてきているようです。

本書は企業が世界を征服する過程を描く、画期的な著作です。読むのには骨が折れましたが得るものも大きかった。膨大な参考書籍は今後の課題となりました。

 

 

参考書籍ピックアップ

ダイオキシン

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カネミ油症

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枯葉剤

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 緑の革命(収量増のみを目指したため、大規模環境破壊につながった)

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 戦争の黒幕企業

死の商人 (新日本新書)

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 生命特許

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  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 2003/08
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 ライバル会社カーギル

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最悪の化学事故、2万人以上死亡

ボパール死の都市―史上最大の化学ジェノサイド

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 著者の最新書

 

Our Daily Poison: From Pesticides to Packaging, How Chemicals Have Contaminated the Food Chain and Are Making Us Sick

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なお彼女はドキュメンタリーフィルムも作っています。私も見てみたいと思っています。

モンサントの不自然な食べもの [DVD]

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いまなら学校にナイフを持っていく子の気持ちが分かる

武器が、ほしい。

安心するための武器が欲しい。

どれだけ理不尽な目に合っても、不合理に苛まれても、私はいつでも牙をむける。それが折れている牙だったとしてもいい。持っているだけでいい。私は安定できる。理不尽と不合理を乗り越えた視点を持てる。

 


CDレビュー: Metallica – Load(1996)

★★★☆☆

賛否両論を巻き起こしたメタリカの6枚目のアルバムです。

オッサン達ははっちゃけすぎた

完成度が高いのかというと、高いんだと思います。アルバムとしてはよくまとまっているし、緩急もそれなりにある。演奏レベルも高い。

でも、残念ながらつまんねぇです。1996年だとメタリカのメンバーももう30代、いい年です。ロックは中二的な要素が強く私もそれを分かってて聞いていますが、ちょっとはっちゃけすぎです。ヴォーカルのヘットフィールドさんは「ッア!」「ッダ!」みたいなコブシ入れ過ぎです。ギタードラムベースも下手ではないのですがどうもお腹に響いてこないのです。ふつーーに聞こえます。いくらカントリー要素やらブルース要素やらが入っていたって良い曲はいくらでもあるのですが、だめです。ビビッと来ません。

このアルバムから出たシングルは、いくつか聞き覚えがありました。昔、小学生のときにCATVで見ていたビデオクリップを流す番組に、Mama SaidやKing Nothing、Until it Sleepsが流れていました。これを聴いて懐かしい気持ちがしました。でも、でもダサいよう。。それもワクワクしない意味でださいよう。懐かし恥ずかしいすごく複雑な気持ちです。

 

懐かしかったといえば最近聞いたこの人たちもそうでした。

 

力が欲しい。私をブッ飛ばしてくれるような力が欲しいです。それはスラッシュ特有のスピードや早弾きでなくともよいのです。大多数の人と同じく、私もこのアルバムには「軽い」という評価を付けざるを得ません。しかも14曲、80分近いフルレングスで長々と聞かされるのは苦しいです。とても残念。次作に期待します。

 

 

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Yes – Talk (1994)

★★★★★

イエスの1994年のアルバム。スタジオアルバムとしては14枚目です。

明るいイエスが返ってきた

90年代も中盤に突入し、ダサかった音もようやく洗練されてきました。相変わらずキャッチーなメロディーや安直なポップ路線の曲も一部見られますが、本作はよくできています。

1曲目The Callingは普通のポップかと思ったら後半からオルガンと共に左右に動き回る面白い構成、2曲目I Am Waitingも単純ながら聞かせるナンバーです。

3曲目Real Loveがよいですね。中盤のワクワクを煽る展開と王道のメインメロディーの組み合わせが大好きです。

そして何よりもラストEndless Dreamでしょう。久しぶりにイエスお得意のスケールの大きな明るいプログレを聴くことができました。イントロのSilent Springはまるでゲーム音楽のようなスピード感あふれる流れ、本体のタイトルチューンTalkは長い前フリと重厚なメインテーマから構成される約12分の超大作です。納得の出来、特に言うことがありません。

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曲は感動的なのですが、3分20秒~のあたりで使われているエフェクトの音が子供時代に流行っていた筒を傾けると変な音が出るオモチャの音と一緒だったので吹き出してしまいました。

お祭りとか駄菓子屋で売ってる – 30センチぐらいの筒で傾けるとグェーと… – Yahoo!知恵袋

これこれ。

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これこれ。

 

今後もよい作品を生み出していってほしいものです。

 

 

プログレッシブロックの他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: The Rough Guide To Tex-Mex (1999)

★★☆☆☆

テクス・メクスとはテキサスーメキシカンの略で、主にテキサスに移住したメキシコ人による音楽です。テハノミュージックとも言います。テキサスになぜメキシコ人が多いのか、は歴史をもっと調べてみたいです。

ほぼ全編にわたってアコーディオンが鳴り響き、フォークやカントリーと融合したような曲が大多数です。言語は主にスペイン語ですが時々英語もあります。前知識ゼロで聞いたので何故スペイン語?と思っていましたがメキシコ系がルーツとくれば納得です。

選曲の問題か、単調

残念なことにほとんどの曲がみな同じように聞こえます。確かにアメリカ南部を思わせる陽気な曲が多いのは良いのですが全部そうだと飽きます。

11曲目のJuarezだけはアコーディオンがいい感じにアドリブをかましてくれてよかったですね。

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やっぱりお気楽なんですけどね。注目は終盤の大アドリブ地帯です。ドラムもイケてます。

 

 

 

 

ワールドミュージックの他のCDレビューはこちらです。


フィスコレポートを読む セレクト 3435サンコーテクノ、2928健康コーポレーション、3186ネクステージ、2412ベネフィット・ワン

 

今週もレポートは少なめでした。

 

3435サンコーテクノ

http://www.sanko-techno.co.jp/img/share/logo.gif

壁面に器具を固定するアンカーというとても地味な業界の日本トップ企業です。主力製品は「あと施工アンカー」という、コンクリートが固まった後に取り付ける器具で、これだけで全売上の3/4を占めます。アンカーや取り付け工具の製造・販売はファスニング事業と呼ばれており、営業利益率は8~10%と高めです。イメージ

あと施工アンカーのサンコーテクノ株式会社|ファスニング営業本部

このページが面白いですね。

あと施工アンカーのサンコーテクノ| こんなところにサンコーテクノ

同社の営業成績は建築需要と連動します。したがって不景気の時は絶不調になります。しかし過去の実績のグラフを見ると最悪のリーマンショック期でも赤字には至らなかったようです。底堅い製品です。

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また同社の強みは、新築マンションだけではなく、中古マンションのリニューアルや、高速道路・自動販売機・ガソリンタンク・ソーラーパネルなど、固定が必要なあらゆる場所に需要があることです。これらはどれだけ不況であろうとも全くなくなることは決してありません。近年の目覚ましい利益率の上昇にも驚かされます。

肝心の株価は、直近の8/11発表で営業利益-35.8%というクソ1Q決算を発表したため、なんと2割以上も下がっています。

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波があって不安定なチャートですね。面白い企業ですが手を付けるのは憚ります。

2928 健康コーポレーション

健康コーポレーション株式会社

ある意味日本で最もホットな銘柄ですね。メイン事業は誰もが知ってるライザップ。1Qにライザップの広告を大量投入する同社は先日の1Q決算でまさかの営業黒字を達成し、通期決算への大きな期待が生まれました。同時に海外展開やら医療データ活用サービスへの進出やらビッグなIRを打ち出し、期待感を煽ります。

 

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中期計画はネジが吹っ飛んでいます。

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イメージ通りのお笑い銘柄ですね。

14年→15年の230億→390億という実績も凄まじいですが6年後に3000億って頭おかしいんでは!?利益率も2倍以上になってるし、、ここまでやるには、アップルのように放っておいてもユーザーが物凄い勢いで増加し、しかも高い製品を買ってくれるという新興宗教のようなブランド力を構築しなければなりません。次の本を読んで私はアップルを新興宗教と判断しました。私は同社にこれの真似をすることはできないと思います。

 

投資家の目は現実的でした。株価はいまいちな動きをしています。

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5月末をピークに全くぱっとしませんね。決算発表後も700→610と奮いません。先週の株安の流れを引き継げばピーク時の半額になりそうな勢いです。5月末が熱狂し過ぎていただけなのかもしれませんが。

3186 ネクステージ(やや良)

http://www.nextage.jp/themes/nextage/images/header/imgShop.png

名古屋が本拠地の中古車販売業者です。典型的な店舗数拡大の成長モデルですが、近年店舗数を大幅に増やしたことで、売上高が急成長しています。

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同社の急成長の理由はオートオークション市場からの中古車の調達が可能になったことです。中古車業界は一般的に自分の縄張り内で車の売買をするため、商圏が限られ多店舗展開をすることがなかなかできませんでした。しかし同社は他社に先駆けて全国展開し、名古屋の企業ながら関東圏にも中京圏と同数の店舗を展開しています。ここ3年で店舗数は2.3倍になりました。

今期は店舗数を48→60に急増させる予定です。同社は低価格を売りにしており、市場競争力が強く他店を圧倒する力があります。このまま順調に店舗数を増やしていけば、高成長はほぼ間違いありません。

一方弱みもあります。中古車業界共通の悩み、消費増税です。14年度決算は売上が急増しているにもかかわらず純利益が13年度の半分になっています。増税があれば競争力うんぬんよりまず需要が無くなります。1年半後の消費増税時には、大幅な業績低迷が運命づけられているようなものです。逆にそこをうまく乗り切れば、安泰といえるのですが、、

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株価はうねりまくりながら近年大きく上昇しています。7月に投機的に2倍近くに急上昇した後下がり、直近でも金曜日に-7.32%も下げてPER9.11倍となっていますので、明日激しく下がれば買い時かもしれません。

2412 ベネフィット・ワン(面白い)

福利厚生サービスのアウトソーシングを行うというとても面白いビジネスモデルの会社です。企業が同社に入会金と月会費を払い、同社は企業に向けて従業員向けのサービスを提供するというモデルです。例えば、

・英会話スクールの割引

・研修に使う国内・海外施設の割引利用

・ベビーシッター・託児施設の割引利用

・分譲住宅の割引(!)

・心の悩み・育児・介護相談

などなど。分かりやすい図が有報にありました。

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クライアントには官公庁もいます。会員数はすでに700万人以上と巨大です。割引サービスはあまり金がかからないからなのか、利益率は15.5%と非常に高い優秀企業です。中期計画では会員数1000万人を目指し、成長規模を拡大させるために更なる多角的な展開をする予定です。

上で説明した福利厚生事業は売上高の約半分を占める中心事業ですが、最近伸びが著しいのはパーソナル事業です。これは福利厚生事業の個人版です。個人から会費を徴収し割引サービスを提供するというものです。すでに同社の売上の1割以上を数え、伸び率も前期+90%超と有望な事業です。そのサイトは

とく放題

ここです。ソフトバンクと提携し、月会費500円を払うとラクーア734円割引だのマック・ケンタッキーの割引だの抽選でコンビニの商品プレゼントだのさまざまな割引サービスが受けられます。スマホと連携しているので流行りそうです。

他にも多数新規事業を用意していて前途有望ですが、残念ながら株価が高すぎました。

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1年で3倍という偉業を成し遂げていますがそれから1/4ほど下げ、未だにPER32.18倍です。明らかに急成長株の上がり方ですから、今後業績が加速しない限り大幅な伸びは期待できないでしょう。2000円台を割り込んだらちょっと興味が出そうですが、金曜日に余り下げていないことを考えるとたぶんありえません。

 

おわりに

さて、世の中には面白い企業がたくさんあることをフィスコのレポートと企業のウェブサイトからたくさん教えていただきました。感謝しています。

この試みはしばらく続けるつもりですが、フィスコは同じ銘柄を3か月ごとにレポートし続けることが多く、以前と同じ企業のレポートが続出してきました。以後、取り上げられる銘柄の数が減りそうです。

直近、金曜のえげつない下げと、明日予想される暴落で年初来成績がマイナスになる恐れがあり泣きそうですが、それとはまた別の理由で、株の記事の趣向を変えるつもりです。

私の投資スタンスは中長期なので、短期的に株価動向を書いたりする記事はもう書かないつもりです。というのも、テクニカルな数字の大小を細かく議論するのって、正直言ってつまらないのです。それよりも、いろんな企業がいろんなことを考えていろんなビジネスをしている、その事実を追っかけるのが楽しくて仕方ありません。

以前Core30の銘柄調査をしていましたが、時間が無くなっていったん打ち切りました。大体7割くらいの企業のウェブサイトをざーっと見ました。これはとても面白い経験でした。日本を支配している企業がどのようなものか知り、ビジネスの動向や日本経済の仕組みを極めて分かりやすくしかも実践的に把握することができます。

これをもう一度、TOPIX100でやってみようかな、と思いました。以前やっていたよりもう少し時間をかけて、1企業に関するレポートを作るのです。たぶん1年以上かかるので、その間に日本経済の動向も少々変わってしまうかもしれません。銘柄の入れ替えも行われるでしょう。でも企業のサイトって面白いんですよ。インターネットが発展し、企業がIRで情報を公開しなければいけなくなったことは、すばらしいことです。私たちが生きていく上でモノやサービスを購入する時、その裏で企業がどんなことを考え、どんな風に社会や人間を捉えて行動しているかを知ることができるのです。親切にも彼らはその仕組みを、すなわち意識から無意識に至るまで消費者に金を払わせるための動機づけのために彼らがしていることを、(都合のいいことだけとはいえ)オープンにしてくれているのです。これを利用しない手はありません。

前回は番号が小さい順だったので、今度は大きい順に。まずは9984ソフトバンクです。他にもやることが多く一体いつになるか分かりませんが、地道に調べていきます。


書籍レビュー: 砂穴の中にいるのは私達だった 『砂の女』 著: 安倍公房

★★★★★(°ω°)

私は小説をあまり読んでこなかったので、まず一般的に強く勧められている作品から読んでいきます。自分の好みなんてものは嫌でも後でついてくるでしょうから、当面のあいだは何も考えず受動的に「有名な」ものを読みます。という気持ちでこの小説を選びました。作者には失礼かもしれません。ごめんなさい。

結果的に、この作品には大きな衝撃を受けました。他人の言うことは聞いておくものです。内容についてはAmazon掲載の書評をそのまんま引用します。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。

絶望と比喩と

序盤~中盤にかけて読者を襲うのは強烈な絶望感とあきらめの気持ちでしょう。私もそうでした。安倍さんの口に釣り針でもひっかけられてこじ開けられるような生々しい描写のせいです。彼は比喩が巧みで、巧み過ぎて一部ついていけないくらい想像力豊かです。

やがて、部落の外れに出たらしく、道が砂丘の稜線に重なり、視界がひらけて、左手に海が見えた。風に辛い潮の味がまじり、耳や小鼻が、鉄の独楽をしばいたような唸りをあげた。首にまいた手拭がはためいて頬をうち、ここではさすがに靄も湧き立つ力がないらしい。海には、鈍く、アルマイトの鍍金がかかり、沸かしたミルクの皮のような小じわをよせていた。食用蛙の卵のような雲に、おしつぶされ、太陽は、溺れるのをいやがって駄々をこねているようだ。水平線に、距離も大きさも分らない、黒い船の影が、点になって停っていた。

「鉄の独楽をしばいたような唸り」とか「沸かしたミルクの皮のような小じわ」などといった比喩は私にはなかなか想像できないのですが、何となく想像できるような気はします。よく思いつくよなぁこういうの。

 

 

以下の記述はネタバレを含みます。

 

 

人間社会の隠喩としての「砂穴」

主人公である男は理不尽にも穴の中に閉じ込められ実質上の監禁生活を余儀なくされます。またタイトルにもあるように、穴の住人である女との物語でもあります。女には申し訳ありませんが、私は彼女との交流の描写よりも「砂穴」そのものの構造に興味を惹かれました。

「砂穴」は外界と隔絶されていて、穴の外にいる役場の人間からの水・食料・わずかな娯楽が生活の生命線です。集落全体を守るために、穴の中の砂掻きという重労働を毎日強いられます。砂掻きをサボれば水も食料も途絶えます。帝愛グループの地下施設とあまり変わりありません。

男は穴に閉じ込められたとき、激しく抵抗し何度も出ていこうとします。穴の外でのいつも通りの人生、自由な人生を取り戻すための戦いです。

ところが断片的に記憶の中から掘り起こされる、教師として生きてきた人生、彼女(妻?)とのやり取りは全く幸せそうではありませんし、自由でもありません。

例えば自分のいなくなった部屋を想像した描写は

西陽にむれた、殺風景な部屋、すえた臭いをたてて、主人の不在を告げている。訪問者は、この穴ぐらから解放された、運のいい住人に対して、本能的な妬みをおぼえるかもしれない。

と部屋を「穴ぐら」と表現しています。あまり引用が多いのもよくないので他は省略しますが、明確に意識はされないものの、思い出せば思い出すほど彼の人生は既に穴の中に入っていたと言えます。砂穴から脱出して自由を手に入れるつもりだったのに、自由なんてものは元からなかった。男が穴の生活に慣れていくのは必然でした。

自由の象徴としての「溜水装置」

そして彼はひょんなことからもっとも重要な生命線である「水」を作り出す仕組みを手に入れました。彼はこれを「溜水装置」と名付けています。

水を生産できるようになった彼は興奮します。これで外からの水の配給を止められることによって命を脅かされることはなくなるからです。これは外の世界で決して得ることの出来なかった大きな「自由」の一つでしょう。自由を手に入れた彼は、ラストで偶然逃げ出すチャンスが与えられても逃げ出すことを選択しませんでした。

ちょっと納得できないのは、食料を生産できないから外側からの兵糧攻めにあったらやっぱり屈服せざるを得ないのではないかと思ったことです。ただ、もう少し考えていくと、「溜水装置」で十分なのかなとも思いました。

ほんの一かけらでも

私たちは穴の中に閉じ込められた存在です。人生は砂のように流れていきますし、どれだけ自由を求めたって、稼いだり生産したりしなければ生きていけません。仮に不労所得がいっぱいあってそれらから自由になったとしても死という限界を超えることは決してできません。人として生を受けた時点で穴の中にいるも同然です。

しかし我々は自由を欲します。他人や世界に支配されるのを嫌います。それがどれだけ制限のある自由であろうとも、不完全であろうとも、パン屑ほんの一かけら分であろうともよいのです。

女が穴の生活で欲したのは鏡とラジオです。

「本当に、助かりますよ……一人のときと違って、朝もゆっくり出来るし、仕事じまいも、二時間は早くなったでしょう?……行くゆくは、組合にたのんで、なにか内職でも世話してもらおうと思って……それで、貯金してね……そうすれば、いまに、鏡や、ラジオなんかも、買えるんじゃないかと思って……」
(ラジオと、鏡……ラジオと、鏡……)――まるで、人間の全生活を、その二つだけで組立てられると言わんばかりの執念である。なるほど、ラジオも、鏡も、他人とのあいだを結ぶ通路という点では、似通った性格をもっている。あるいは人間存在の根本にかかわる欲望なのかもしれない。

男は反発するも納得しています。鏡は自分の情報を得られる、ラジオはほんの少しでも外側と繋がることができる道具です。

水を生産する「溜水装置」も圧迫された生活の中の不十分な自由の一つですが、それを得られることのなんと素晴らしいことでしょう。

我々の人生という穴の中の絶望的な状況に鑑みれば、わずかでも自由を得られることは大きな収穫となります。それは未来を感じさせるものです。期待です。あとがきでドナルド・キーンさんが「なぐさみ物」と表現しています。いやそりゃ本質的にはそうなんですが、そんな軽いもんじゃないでしょう。私はこの装置に「なぐさみ物」以上のものを感じました。単に穴の生活に慣れただけだったら、彼はチャンスが来た時、即座に穴から出ることを選択するはずなのですから。

 

作者の生物学に関する造詣が深すぎると思ったら元医学生だったんですね。納得しました。この作品は折に触れて読み返したいですね。

小説面白い!まだまだ面白い作品が日本にも海外にも大量に転がっていると思うとワクワクします。

 


書籍レビュー: マーケティングの教科書×ジョブズ×エリート礼賛 『Think Simple アップルを生み出す熱狂的哲学』 著:ケン・シーガル 訳:高橋則明

★★★★★

著者のケン・シーガルはアップルに長年勤めた広告マンです。スティーブ・ジョブズを広告面から陰で支えた存在と言えるでしょう。本書は、アップルの「Think Simple」という哲学をタイトルに冠しその詳細を10項目にまとめた(体裁の)の本です。

シンプルの法則の例

1985年から1995年の10年間、アップルはジョブズを追放します。その間、アップルの売上はどんどん低迷していきます。ジョブズが戻った時、アップルは瀕死でした。そこ から「シンプル」の法則に従った経営の立て直しが始まり、iMac、iPod、iPhone、iPadといった大ヒット商品を生み出す企業に発展していきます。

まずシンプルにするのは組織でした。これは第2章に詳しく書かれています。アップルはジョブズを中心とした少人数のエリートたちが迅速に物事を決める形態を選びました。要するに寡頭制です。大規模な会議は平等ですがスピードが遅い。しかも形式ばかりを重視し実質が伴わず、優れたアイディアも潰されやすいのです。これは日本的民主主義に対応していると感じました。ジョブズはこのようなまどろっこしい体制を「大企業病」と呼び忌み嫌いました。

次にシンプルにするのは製品ラインナップです。著者はデルの広告も担当したことがあるため、デルとアップルを比較してデルを激しくdisります。商品のラインナップが「複雑さ」の罠にはまりこんでいるというのです。デルはあらゆる顧客を満足させるために、種々雑多大量のモデルを投入していました。すると製品1つあたりにかけられる配慮は当然少なくなります。販売員がどれを薦めたらよいのかもわかりません。アップルはノートパソコンのモデルを「プロ用のMacBook Proとパーソナル用のMacBook Airだけ」と極めてシンプルにまとめました。そうすれば、少ない経営資源に集中できるという計算です。

いま別件でソフトバンクのウェブサイトをじっくり見ているのですが、iPhoneは「iPhone6」と「iPhone6 Plus」しかないんですね。実質iPhone6しかないも同然です。iPhoneを使いたかったらこれしかない、というシンプルの法則が働いています。

アップルのマーケティング理論

私はアップル製品を一度も買ったことがありません。iPhoneは持っていません。SIMカードなしのAndroid端末は持っています、PCは 20年以上Windowsを使っているし、iPodではなく韓国製COWONの音楽プレイヤーを持っています。実は個人的にはアップル製品に魅力を感じていません。

しかしこの本を読んでなぜアップル製品がアメリカだけではなく日本でも売れるのかよくわかりました。彼らが作るのはイメージです。ブランドです。「この製品を手に取れば自分が変わる」と思いこませる力です。彼らが一番金を掛けるのはどこか?広告費なのです。

シンプルの法則に従って商品を絞り込んだら、あとはその商品を売り込まなければいけません。株のポートフォリオなら「mixi全力買い」などとやっていることと等しいのです。mixiの株価を上げないと死にます。

ですから広告で「iPhoneすごい!革新的!持っていたら私プレミア!」と思いこませなければいけません。著者を含む広告部隊に課された大きな使命です。(ここら辺は本書には書いてありません)

著者が広告マンということもあるでしょうが5~10章は殆ど広告の話です。iPhoneのネーミングにかける情熱や、いかにしてユーザーにイメージを植え付けるのか、そのために選ぶ言葉や偶像は何にするのか、などなどが熱く語られます。

シンプルさが最も印象付けられるのはやはり「i」のネーミングでしょう。「i」にはインターネットのi、イマジネーションのi、インディヴィジュアル(個人)の「i」がたったの1文字に凝縮されています。今日では「i」さえあれば誰もがアップル製品のものであると分かる超シンプルな記号になっています。私も、先のソフトバンクのサイトで言えば「AQUOS PHONE Xx mini 303SH」や「Disney Mobile on SoftBank DM016SH」よりも「iPhone6」のシンプルさに軍配を上げます。

小人数のエリートにしか世界は支配できないのか?

さてこの本を読んで一番引っかかったことは、「少人数エリートによるトップダウン経営」についてです。アップルもジョブスの独裁と少数精鋭があってはじめて猛スピード経営が可能となります。意思決定が迅速で、権限が高いことによって軌道修正が容易、しかも思い切った決断がやりやすいからです。

また、第1章でも出てきますがジョブスは極めて率直にものを言います。クソだと思ったことには容赦なく罵詈雑言を浴びせます。しかし相手にも同じような率直さを求めます。そしてそれが妥当であれば、彼も考えを変えることがあります。ジョブズが好かれる理由はここにあると思いました。私も気に入ったので一時期バカ売れした評伝を読んでみたいです。

脱線しました。この率直さでもって少人数グループは嵐のような速度でディスカッションができ、プロモーション案の試行錯誤のスピードが通常の3倍速以上になります。しかも元々エリート揃いだから質の高いものを大量生産し、そこから最も良いものをジョブズが選び出すことができるのです。こりゃ敵う訳がありませんわ。

考えてみれば、ファーストリテイリングの柳井正、セブン&アイの鈴木敏文、ソフトバンクの孫正義、アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ、急成長する企業はどれをとってもトップの力に依存しています。

この本は優秀な人間も凡人も平等な立場を保証して会議を進めたら良いものはできない、という証明の1つです。プロセスで雁字搦めにされた企業に明日はありません。私たちの人権意識や法の精神、平等感はイノベーションを損ないます。何が良くて何が悪いのか?さっぱりわからなくなってしまいました。

 

 


聖書の神様なサイトが見つかった

西洋思想を勉強するにあたって聖書を読むことは必須です。というのも、ギリシャ哲学以外の紀元後から現代にいたるまでキリスト教の影響を受けていない思想家など存在しません。敢えて無神論を公言する思想家もキリスト教による支配を前提としています。

また、イスラム教を学ぶにあたっても聖書は必須書物です。何故なら、イスラム教は後発の宗教ですが、なんとユダヤ教やキリスト教をと同じ神を信仰する宗教であり、聖書への言及もあるので一通りキリスト教を知ってからでないとクルアーンを読めなさそうだからです。

私は数年前に教会でもらった日英対訳の新約聖書(新共同訳+New King James Version)を英語の勉強も兼ねて通読したことがあります(大部分は忘れました)が、旧約聖書は読んだことがありません。エホバの人に旧約聖書をもらったこともありますが新世界訳はひどい。英語翻訳版からの2段階翻訳なので回りくどくて分かりにくい上に用語がエホバ用に改変されているのでもう読めたもんじゃありません。

なので他の翻訳の旧約聖書を読みたい。最寄りの公共図書館には岩波の関根訳があります。これも読んでみたいですが注釈が細かすぎたり、教文館から関根さん自身による新訳(新約じゃないです)が出ているそうなのでやや消化不良気味です。調べると口語訳聖書なるものがあるらしいです。そしてこれは著作権が切れている。wikisourceなどにもありましたがなんと次のような神サイトが見つかりました!

すばらしすぎる!グレイト!最近岩波から出た文語訳聖書まである!

ここの epub形式 口語訳聖書 のページにある青空文庫風テキストをTxtMiru2で読み込んでやると、

f:id:happyholiday:20150822134953j:plain

メルシーボクー!ダンケシェーン!あなたが神か!

TxtMiru2についてはこちらを参照。

しかし合計2919ページって一体どこの辞書だよ!広辞苑が3047ページらしいのでこれに匹敵する分厚さですね。広辞苑は三段組なので単純評価できるものではないですが。このサイトのおかげで図書館から超分厚い旧約聖書を借りたり本屋から重い重い聖書を持って帰ったりしなくてすむので助かります。

 

文語訳聖書は創世記の1日目をちらっと見て無理と判断しました。

創世記

第1章

1:1元始に神天地を創造たまへり 1:2地は定形なく曠空くして黑暗淵の面にあり神の靈水の面を覆たりき 1:3神光あれと言たまひければ光ありき 1:4神光を善と觀たまへり神光と暗を分ちたまへり 1:5神光を晝と名け暗を夜と名けたまへり夕あり朝ありき是首の日なり

格調高すぎて読めない。

 

でもルビ付きもあった!シエシエ!カムサハムニダ!

創世記

第1章

1:1元始(はじめ)(かみ)天地(てんち)創造(つくり)たまへり 1:2()定形(かたち)なく曠空(むなし)くして黑暗(やみ)(わだ)(おもて)にあり(かみ)(れい)(みづ)(おもて)(おほひ)たりき 1:3(かみ)(ひかり)あれと(いひ)たまひければ(ひかり)ありき 1:4(かみ)(ひかり)(よし)()たまへり(かみ)(ひかり)(やみ)(わか)ちたまへり 1:5(かみ)(ひかり)(ひる)(なづ)(やみ)(よる)(なづ)けたまへり(ゆふ)あり(あさ)ありき(これ)(はじめ)()なり 

曠空(むなし)くして」とか「黑暗(やみ)(わだ)(おもて」とか中二病患者みたい!!でも読んでみたい!!

全文章にルビを振った労力がしのばれます。しかもこのサイトは明示的に著作権を放棄しています。信仰の力は美しい。


CDレビュー: Paul Motian – Jack Of Clubs(1985)

★★★★★

ジャズドラマーPaul MotianのComplete Remasteredシリーズの2枚目です。

ピアノなしで自由度の高い作品、ギターが独自の世界を作る

1曲目Jack Of Clubsからいきなりフリーダム!モチアンさんはこの手の曲を好むのでしょうか。ドラマーにしては珍しく、2作連続で自分自身があまり目立たない演奏です。サックスが2本好き勝手に吹いています。真ん中にビル・フリセールのエレキギターが入り、不思議な空間を作ります。

2曲目Cathedral Songで一息ついた後、3,4曲目が素晴らしい。まず3曲目Split Decisionはベースがウォーキングしドラムがライドシンバルを4分打ち+スイングで、、ってこれ普通のジャズじゃん!?ところが普通のジャズではありません。真ん中にエレキギターが浮遊霊のように常にぼんやり位置取ることで独特の緊張感というか気味悪さのようなものを浮かび上がらせたまま疾走していきます。

4曲目Hide And Go Seekが本作で一番好きですね。ロックかと思うようなギター一人のイントロで始まり、ドラムは高音域だけ、サックス2本がミニマル的な繰り返しでもって幻想的な空間を作っています。

他にも7曲目Drum Musicという直球なタイトルのイントロも聴きごたえがあります。ギターと融合したジャズも面白い!

 

 

ジャズの他のCDレビューはこちらです。