書籍レビュー: 次回を待て『ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)』 著: 塩野七生

★★★★☆

 

おそらく本シリーズの一番気合が入っていると思われる話題、ユリウス・カエサルについてです。文庫版では本書含めて6冊がカエサルについての記述に充てられています。本書ではカエサル誕生~39歳までの軌跡を辿ります。紀元前100~61年の間の出来事です。

かぶってる

実は半分くらいの内容が前巻とかぶります。カエサルはスッラやポンペイウスの時代にも生きていたからです。通して読む人間にとってはやや不満ですが、逆に、カエサルの部分だけ単独で読みたい人にとっては嬉しい構成方法ですね。8~13巻だけ読むという読み方もあり、でしょう。

カエサル編1巻目にあたる本書ではカエサルは目立ちません。やや遅咲きの政治家として、37歳でようやく宗教職の最上位である最高神祇官に当選したにすぎませんでした。おそらく文化庁長官くらいの意味合いで、最高権力者には程遠い位置です。

カエサルの人柄

本書ではカエサルのキャリアよりは彼のパーソナルな部分に焦点が当てられています。彼を読み解くキーワードは、借金、女の2点です。

カエサルは湯水のように借金しました。借金したお金は投資のためではなく、公共インフラの構築や剣闘会の開催など、民衆への大盤振る舞いにあてられました。このためスキャンダルとなることはなく、また金ヅルである最大債権者のクラッススは、カエサルに貸した金が大きすぎるためカエサルが「大きすぎてつぶせない」存在となり、彼が有利になるように取り計らうしかできなかったと言われています。

もう一つの金の使い方が女へのプレゼントでした。パトロンであるクラッススの妻テウトリア、最高権力者である執政官ポンペイウスのムチア、そしてカエサルが殺されることとなるブルータスのセルヴィーリアなど錚々たるメンバーがみなカエサルの愛人だったと言います。しかも誰にも隠さず、公然と愛人宣言をしていたそうです。

筆者によれば女が傷つくのは自分のことを無視した場合だけ、だそうです。カエサルは全ての愛人について関係を断つことをしませんでした。前述のセルヴィーリアなど、ブルータスがカエサルに剣を向けた後でさえカエサルは彼女のことを心配し国有地を安く払い下げてやるなどの配慮を忘れなかったそうです。また、豪邸2件が建つほどの真珠を贈るなど熱烈なプレゼント攻勢をカエサルはいつも忘れませんでした。これと「公然」の効果によって彼のことを悪く思う女性はひとりもいなかったそうです。筆者お墨付きとはいえ参考になるんでしょうかねこれ。

カティリーナ弾劾

後半に出てくるカティリーナという人の謀反を弾劾した前63年の「カティリーナ弾劾」裁判でのキケロ―の演説はヨーロッパ中の高校生が訳させられる文章だそうです。日本だと何にあたるんでしょうね。いずれ読んでみます。ラテン語を勉強するなら必須なのでしょう。

Catiline Orations – Wikipedia, the free encyclopedia

カエサルがここで弾劾への反対演説をしたことが、ローマにとって重要な意味を持つそうですがこの巻ではその真意にはかする程度で踏み込まれていません。次回を待て、ということでしょう。

7巻までと同様、事前知識なしでも引き込まれ一気に読めてしまう内容ですが、やはり前回までと重複している内容が多く単独で読むには物足りない巻でした。中と下まで一気に読んだ方がよさそうです。

 


CDレビュー: Ametsub – The Nothings of The North (2009)

★★★★★

 

和製ひとりテクノユニットAmetsubの2ndアルバムです。このアルバムを聴くのは久しぶりで2度目なのです。やっぱり良いですね。

前作と大きく変わったのは、メロディーラインと和音の方向性が鮮明になったことです。サンプリングのぶっ飛び具合はより洗練されていますが、名状しがたい寂寥感を生む和音とメロディーの力が非常に強くなっています。

1曲目Solitude。「北」を打ち出しているだけあってのっけから過冷却冷え冷えです。8分で延々刻まれる虫が歩き回ってるような音が可愛悲しい。

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3曲目Repeatedly。ただ繰り返してるだけではなくもう寂しくてしょうがないです。中盤に繰り返しの中から現れる渦のような3連符でノックアウトされてしまいました。そのあたりから曲調が変わり16分地獄となります。

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初めて見ましたが目と心によくないビデオクリップですね

 

9曲目Faint Dazzlingsはラストのブリザードで死ね

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電子音楽の他のCDレビューはこちらです。


書籍レビュー: だまされないために『情報操作のトリック その歴史と方法』 著:川上和久

★★★★☆

 

川上和久(1957-)さんは社会心理学者。現在、明治学院大学の教授(出版当時は准教授)だそうです。

序盤で著者の定義する情報操作とは次のようなことです。

「情報操作とは、情報の送り手の側から見れば、個人、もしくは集合的な主体が、何らかの意図を持って、直接、もしくはメディアを介して、対象に対して、意図した方向への態度・行動の変化を促すべく構成されたコミュニケーション行動とその結果の総体である。また、情報の受け手の側から見れば、意図的・非意図的によらず、受け手の態度・行動に影響を及ぼすコミュニケーション行動。およびその結果の総体である」

これはめちゃんこ広い定義ですね。例えば最近流行の恋愛工学なんかまさに個人が個人を意図した方向に導く情報操作の典型ですね。本書はここで定義した通りかなり広い範囲について情報操作を網羅しようとする本です。そのため内容的にはどうしても薄くなってしまいます。終盤の広告についてはこっちの本を読んだほうがマシです。

 

細かなトピックでいくつか感銘を受けたものを紹介します。

人々が自発的に情報を歪めるシステムを作るのが望ましい

国家がある目的を効率的に遂行しようと思ったら、強権を振るうよりも自発的に目的を実行してもらった方がコストがかかりません。そのために必要なのは教育です。一党独裁政治政権では教育の場を家庭から学校に移すと効率が良いそうです。ナチはヒトラーユーゲントのメンバーが行進するときに家族の方を向くことを禁じましたし、中国の幼稚園には次のような歌を歌わせました。

「私の家は幼稚園、先生はお母さん。何でも教えてくれる先生についてお勉強できるのは何て楽しいことでしょう。ほかにはなんにもほしくない」

そういえば反戦小説には必ず「学校では天皇を敬うよう言われたのに親は天皇なんかくそくらえだという。非国民だ、親が恥ずかしい」という子供が出てきます。これも同じパターンですね。本書は記述が少なくメカニズムはかかれていませんが、おそらく、学校で過ごす時間の方が家庭で過ごす時間よりも長い上に、画一的に教育できますし人数の力で同調圧力が働くため効率的ということなのでしょう。

やはり大衆=アホ

ヒトラーが自ら語った情報操作の原則です。

「自由な選択を認めるよりも、対立的考えを一切許さない教旨によるほうが、国民はより強い安心感を抱くことができるであろう」

「大衆に語るべき思想を少数にとどめて、それをうまずたゆまずくり返すことが必要である。大衆は、何百ぺんと繰り返さないと、もっとも簡単な思想でも覚えこまないものである。」

「かくてスローガンは、種々のかたちで示されるべきであるが、しかし結論としては必ず一定の不変な公式に要約して示されなければならない」

小泉が人気のあったわけがよく分かりますね。ワンフレーズポリティクスはいつの時代でも強いです。これに対抗するためには、世界は複雑であること、思想は矛盾対立するものであること、繰り返すことは強力だが危険であることを常に頭の片隅に入れておかねばなりません。

7つの原則

7つの習慣っぽいですがこれはアメリカの宣伝分析研究所の作成した政治原則です。権力が行うとよい原則を調べると次のようになりました。

  1. 攻撃対象の人物・組織・制度などに、憎悪や恐怖の感情に訴えるレッテルを貼る「ネーム・コーリング」
  2. 権力の利益や目的の正当化のための、「華麗なことばによる普遍化」
  3. 権威や威光により、権力の目的や方法を正当化する「転換」
  4. 尊敬・権威を与えられている人物を用いた「証言利用」
  5. 大衆と同じ立場にあることを示して安心や共感を引き出す「平凡化」
  6. 都合のよいことがらを強調し、不都合なことがらを矮小化したり隠したりする「いかさま」
  7. 皆がやったり信じていることを強調し、大衆の同調性向に訴える「バンドワゴン」

 どれも身に覚えがあります。ニュースや他人の言説にこのような傾向があったら警戒しましょう。

 

選挙の争点は取り上げた時点で勝ち

1989年参院選の自民党の歴史的惨敗は消費税・リクルート疑惑・農政問題という材料が社会党の躍進に繋がりました。逆に、1990年の総選挙では消費税を脇に置いたため自民党が逆転して安定多数となりました。

ここからわかることは、「政党にとって有利・不利な点が争点になった時点で選挙が終わっている」ということです。したがって各党は、自らに有利な点を争点とし、不利な点をできるだけ争点からそらします。すべての政治団体について「本当にその争点は重要なのか」ということを常に考えないとだまされます。例えば今(2015年現在)なら、最も取り上げるべき争点は賃金の下方硬直による激しい格差社会と、人口減や地方崩壊につながっている高齢化だと思われます。これ以外の争点を過剰に持ち上げる党や団体のことは疑います。

ヤラセ以前に内容がどうかしてる

本書が出版された1994年はテレビのヤラセが問題になっていたそうですが、ヤラセが行われていた番組名が「激写!中学生女番長!!セックスリンチ全告白」や「追跡!OL・女子大生の性24時」であるということにがっくりしました。今でも、Yahooニュースの芸能欄すなわちトップニュースはそんなんばっかですので今も昔もみんな暇だなあと思いました。

 

操作されるということは、操作する人間にバカと思われていることに他なりません。くやしい。絶対に操作されないぞ!

 


フィスコレポートを読む 3457ハウスドゥ

 

先週分とまとめて目ぼしい銘柄は1企業しかありませんでした。

3457 ハウスドゥ(変わり種不動産銘柄)

ハウスドゥ!グループ HOUSE DO

不動産仲介業者ですが、賃貸ではなく売買の仲介を専門とします。古田敦也氏の宣伝が効いてフランチャイズチェーンの数はうなぎ上り、セグメント利益率57.3%、連結決算の利益の半分を稼ぐドル箱事業になりました。ハウスドゥがノウハウやブランド力を提供、フランチャイジーが加盟金や月会費などを払う仕組みです。業務支援ソフトや研修、共通サービスまで提供してくれ至れり尽くせりですね。月会費は高いでしょうけど。。

資料によると新規加入費450万円、月額費用30万円です。しかし不動産はコンビニや塾と違って単価が高いですから、月に1000万円の物件が1軒売れるだけで元が取れてしまうそうですよ。持ち家志向が極端に強い日本人には最適のビジネスかもしれませんね!私は一生買いませんけど!

もう一つの主力の不動産売買事業はふつうの事業、建売と中古住宅の売買です。同社は中古住宅の買い取りを強化しており、人口減に伴う中古住宅の供給増に備えているようです。消費税増税時は、一時的な落ち込みが予想されます。

またハウス・リースバックという変わった事業も伸びています。これは、ハウスドゥが家を買い取り、売主は賃貸料を払ってしばらくの間売却した物件に住むというものです。売主は金が入った上でしばらくの間住み続けることができ、ハウスドゥは賃貸収入というストックを確保し将来的に優良な中古物件が手に入ります。ハウスドゥはリース期間が終了したらその家を売却するので、物件の目利きの力が試されます。

中期計画を見るとやはりフランチャイズとリースバックを成長産業に位置付けています。消費増税で売上は減るかもしれませんが、この2つは安定した収益をもたらすでしょう。不動産銘柄でも異色な存在と言えます。

株価は高いのか安いのかよくわかりません。PERは14倍。

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書籍レビュー: ソローを取り込みたい『作家たちの秘密: 自閉症スペクトラムが創作に与えた影響』 著: ジュリー・ブラウン

★★★★★(*´﹃`*)

あの作家は自閉症スペクトラムなのか

自閉症スペクトラムの疑いがある、もしくは診断を受けた作家について分析した本です。著者のジュリー・ブラウンさんはアメリカのライティングの教師で、あまり有名な人ではないようで、米amazonでも探すのに苦労する本です。よくこの本を発掘できたなぁ。

本書で大きなトピックとして取り上げられている作家は次の8名です。

  • ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875)
  • ヘンリー・デイビッド・ソロー(1817-1862)
  • ハーマン・メルヴィル(1819-1891)
  • エミリー・エリザベス・ディキンソン(1830-1886)
  • ルイス・キャロル(1832-1898)
  • ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865-1939)
  • シャーウッド・アンダーソン(1876-1941)
  • オーパル・ウィットリー(1897-1992)

アンデルセン(童話)、ソロー(森の生活)、メルヴィル(白鯨)、キャロル(不思議の国のアリス)は有名ですね。もちろん彼らが自閉症スペクトラムなんて知りませんでしたが。ウィットリー以外は全員著作権切れの作家ですので、原文がネット上で全文公開されてて私たちでも根性出せば読める環境にあります。

著者によれば、彼らに共通する創作の特徴をまとめると次の通りです。

  1. 感覚的な障害やコミュニケーションに難があることがかえって作品に独自性を与えている。
  2. 考え方が固定的で柔軟性を書く。自己満足的で伝わりにくい。原稿が汚い。
  3. 表層的、象徴的な物語が得意。人間心理を深く追求する作品は苦手。
  4. 脈絡のない展開をする物語や散発的な出来事を描く短編小説は得意。大きな筋の通った長編小説は苦手。

正直なところ、欠点だらけにしか見えません。4の最たるものは「不思議の国のアリス」でしょう。私はまだ読んだことはないのですが。この作品のように脈絡が無かったりして不条理なのが実際の人間社会なのであるという筆者の主張にも頷くところはあります。

巧みな語り口というもののない自閉症の人々の作品は、実はより現実的なのだと示唆しているようでもあります。彼らの物語は、より偶発的だからこそ、よりリアルなのです。

1のような独自性によって彼らは偉大な作家となりえたのだし、2、3のようなことは他の作家にも言えることで個性の一つです。

ソローの食事

個々の作家で一番驚いたのは以前から気になっているソローでした。それは代表作「森の生活」について分析している一説でした。ここはそれ自体興味深い記述なのですが、私が気になったのは彼の作家性とあまり関係のない1点です。少々長いですが引用します。

ソーンとグレーソンによれば、アスペルガー症候群の人のストレスが制御不能なレベルに達すると、ある一定の言動が表面化していきます。『森の生活』は、ソローが不安の対処法として、どんな言動をしてきたかを示す一覧表とも読めます。

  • 関心の領域が狭く、一定の事象や習慣、もしくはその両方に固執する(ウォールデン湖、自然、読書、執筆)
  • ある一定のやり方で、物事や出来事を表現させようとする(自分の望むような家を建てる、毎日のスケジュールを思いのままにたてる)
  • 何かするための自分のルールを決める(すべてのことを自分でやり、助けを求めない)
  • 同じ事を何度も何度もするのを好む(起床、水泳、食事、労働、散歩、睡眠)
  • 限られた食べ物しか食べない(ニンジン、米、豆、ジャガイモ
  • 大きな音と人ごみをひどく嫌う(静寂の森で過ごすことを選択する)
  • 無駄な労力を使わず、努力も最低限にして、どうしてもやりたい活動だけに集中する(ウォールデンでやりたいことだけに没頭する)

そう、食べ物です。

私が最近リサーチしている理想のコストパフォーマンス高の食物と完全に一致しているのです。。


ジャガイモは調理が必要ですがビタミンCが豊富でそれなりにエネルギーも含み常温保存可能という優秀な食材です。調理可能な環境であれば、コメと豆で賄えないビタミン類の補給源は安くて保存も効くニンジンとジャガイモで決まりだな、と考えていた所だったので本当に衝撃でした。また、上に箇条書きで書いたことはすべて今私が考えている理想と合致しますので彼の著作は全部読み漁りたい、それもできるだけ原文で、という熱意が湧き上がってきました。

ここに注釈付きの原文すべてが置いてあるようです。暗記してしまいたいくらいです。膨大な関連記事もあります。やはりコアなファンが沢山いるようですね。

孤独の嗜好と理解の渇望

私は少し前まで自閉症スペクトラムに寄りかかった自意識を作ることを拒否していました。私は私であってラベリングしたって何の意味もないと思っていました。しかしいざ関連本を読み始めてみるとあまりにも共感できることが多すぎて面食らっています。ネット上では自閉症スペクトラム同士の連帯が出来つつあり、民族自決並みのアイデンティティがコミュニティの中で生まれつつあります。私はまだこのような展開に対して抵抗があります。自分の独自性が、自閉症スペクトラムというラベルに吸い取られてしまうような気がするからです。自分が自閉症スペクトラムなのか、自閉症スペクトラムが自分なのか分からなくなるのが怖いのです。それはデブとかハゲとか出っ歯とか(マイナスの意味を植え付けられている言葉ばかりですが、私はマイナスだと思っていません)いう自分の一特性にすぎないのに、自分がそのラベリングそのものに抽象化されてしまうのは嫌です。でも特性そのものについては、もっともっと知りたいし、twitterやブログでも同種の障害を持つ人のことはフォローしてしまいます。感情は相反します。

著者がソローについて、全く同じ点を指摘しています。彼は一貫して孤独を好みますが、一方で自分について知ってほしいという願望も読み取ることができるというのです。確かに「森の生活」を出版したこと自体がそうです。私がブログ上で文章を書くのもそうなのです。次の記述は孤独と理解を求めることとの対立をよく表しています。

ソローはひとりの生活という自分の嗜好を、独立独歩の高貴な哲学から生まれた発想だと主張しています。が、ソローが結核になり、人生の終わりを両親の家で迎えようとしていたとき、ソローの心は世界中から好意を注いでくれた人々のおかげで安らぎを得ました。妹のソフィアはこう言っています。「友人や近所の人々が自分を気にかけてくれたことに、彼はとても感動していました。人々に対して随分違った感情を持つようになり、もし自分が(こんなに人々が気にかけてくれるものだと)知っていたら、よそよそしい態度など取らなかったのにと言っていました」

 

なんだかソローの話ばっかりになってしまいましたが、他にも「自己同一性拡散」に悩まされるオーパル・ウィットリーの話や、「ひどい狂気は、このうえない正気」と主張して自己愛を突き詰めざるを得なかったエミリー・ディキンソンの話、一般人は抽象から具象に進むが自閉症スペクトラム者は具象から抽象へ進む、、などなど興味深い話に溢れた一冊でした。おすすめです。

当然のこと、日本文学者や思想家にも自閉症の疑いがある人間は沢山いると思います。研究している人がいたら文章を読んでみたいですね。

 

 

関連書籍

いっぱいあります。

 

 まずこれ

アスペルガー症候群の天才たち―自閉症と創造性

アスペルガー症候群の天才たち―自閉症と創造性

 

 

 アンデルセン

完訳アンデルセン童話集 1 (岩波文庫 赤 740-1)

完訳アンデルセン童話集 1 (岩波文庫 赤 740-1)

 

 

 ソロー

市民の反抗―他五篇 (岩波文庫)

市民の反抗―他五篇 (岩波文庫)

 

 

メルヴィル そういえば放送大学でこの作品について中間レポートを書きました。偶然とは思えません。

書記バートルビー/漂流船 (古典新訳文庫)

書記バートルビー/漂流船 (古典新訳文庫)

 

 

 アンダーソン

ワインズバーグ・オハイオ (講談社文芸文庫)

ワインズバーグ・オハイオ (講談社文芸文庫)

 

 

そのほか関連人物

ダニエル・タメット自伝

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

 

 

テンプル・グランディン自伝

我、自閉症に生まれて

我、自閉症に生まれて

  • 作者: テンプルグランディン,マーガレット・M.スカリアーノ,Temple Grandin,Margaret M. Scariano,カニングハム久子
  • 出版社/メーカー: 学研
  • 発売日: 1994/03
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ジェイムズ・ジョイスも自閉症スペクトラムだったそうです。

ユリシーズ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ユリシーズ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

 

 

 


振り返り1 ~小4

前回記事

私が自分について知っていることは、断片的な記憶の集合体です。ふつう自己像というものは脊髄の通った太いストーリーがあって、そこに個々のエピソードがぶら下がっている物だと考えます。発達心理学の分野では「~期」のように自己他者の認識と言ったいわば哲学的な能力が発展していくモデルが作られていて(うろ覚えです)あたかも個々人はその能力を言語化したり自己認識したりして自己を確立していくように描かれています。

しかし私の自己像はいくつかの出来事がバラバラに散りばめられている点描のようなイメージです。それはおそらく、私にアイデンティティというものが長らく存在しなかったことを示しています。私の自己同一性がやっと確立したのはごく最近のこと、今年に入ってからです。生まれてから30年以上たっています。8年前についたアスペルガー症候群という診断すら私に基礎杭を打ち込むものとはなりませんでした。

これから私が行いたいのは、バラバラな記憶を統合するストーリー、物語の構築です。当時の自分に出来事の意味づけを行う能力が無かったのは仕方のないことです。ないものはない。今もあるかどうかは分かりません。できるだけのことは行いたいものです。個人や土地が特定できそうな記述はなるべくぼかしますが目的を達成するために効果と天秤にかけてぼかさないこともします。

~幼稚園

私は名古屋から電車で1時間程度のとある郊外で育ちました。駅からはかなり離れており車がないと生活できない典型的な田舎です。山脈が近く田園風景が広がっていて自然はありますが、ファミコン時代に生まれましたので、自然と触れ合う機会はほとんどなく友達とゲームばかりして過ごしました。今考えると非常にもったいない。

私は2kgちょいという低体重で生まれました。今までの経験上低体重で生まれた人間は思考に偏りがあることが多いです。身内でも私より偏りがある人間に実父(2kg弱)と義母(1kg弱)がいます。

小学生よりも前の記憶はほとんどありません。私が育った土地は小学校に保育園と幼稚園が隣接しており、公立の保育園→幼稚園→小学校がエスカレーターという謎の仕組みでした。幼稚園はプレ小学校という意味合いで、1年間の年長組しか存在しませんでした。関東に出た後に保育園と幼稚園が並立する存在だと知り驚きました。

保育園にも幼稚園にも通いました。保育園の記憶は園庭を除き0です。幼稚園だけ若干覚えています。それも嫌なことだけ。それは学芸発表会という園児の発展を願う名目で教師と親の満足のために行われる会のことです。

発表会では劇を上演します。覚えている限り2回上演しました。私は極度の内気のため、セリフを言うことができませんでした。1回目の劇ではタヌキの役で2言セリフを言うだけなのですが、どうしても言えません。1対1で会話をすることはできますが、人前で何かを話すということはたとえそれが用意されたセリフであっても不可能でした。今でもその残渣は残っています。結局、タヌキを3人用意して同時に台詞を言うという対処にしてもらって(してもらったのか人が余ったから途中で増えたのか忘れました)何とか乗り切ることができましたが、数少ない記憶の1つがこれでしたので相当嫌だったと考えられます。2回目の劇はピラニアの役で、「僕はピラニアだ」と言うだけの役でしたがこの1言をいうのさえもとてつもない負担だったことを記憶していますのでやっぱりめちゃんこ嫌だったようです。発表会なんて滅べばいい。

内気とは自意識過大によるものだと考えます。他人の前で失敗するのではないかと恐れることは自分の自己イメージを崩したくないという考えから生じるからです。人にどう思われようとかまわないという意識があれば他人に対してどのような振る舞いをしようと気にすることではありません。私は当時大きな自己イメージへのこだわりがあったのかもしれません。

ここまで書いて1対1の会話では全く内気ではなかったことを思い出しました。対人関係で恥をかいたような記憶が全くないからです。むしろ恥という概念が無かったと思われます。では内気ではなかったのでしょうか。的外れ?

こうも考えられます。舞台上で台詞を言うときの環境は日常生活と異なります。しんとした環境の中で言葉を発するのは一人だけ、しかもその一人に全員が注目するという異常な状態です。あれに耐えられなかったのかもしれません。もしそうなら特別なことではありませんね。ただし「人前で何かが言えた」ような達成感は全くなく、嫌な感情だけが残っていますので後々プラスになることは全くありませんでした。

小学校1~4年

そのまま幼稚園の隣にある公立の小学校に進みました。4年生までの記憶は断片的にしかありません。特に学校生活は印象が薄く、覚えていることといったら時計くらいです。

小学校に限らず学校では時計に従って行動します。小学校の時計はすべてアナログ式で、時刻が来るとチャイムが鳴ります。45分授業が基本で、

朝の会8:40、1限目は8:50~9:35

10分休んで2限が9:45~10:20

20分休んで3限が10:40~11:25

10分休んで4限が11:35~12:20

給食が13:00まで

20分休んで5限が13:00~13:45

6限が13:55~14:30

20分掃除して10分帰りの会、15:00に下校でした。

ときどき短縮授業と言って40分授業になることがありました。下校は14:30です。

6年間すべて同じタイムスケジュールで過ごしたため、今でもその時間を暗記しています(覚えていて驚きました)し、どの時刻をとっても何らかの感覚が残っています。特に10:20~40の間の20分休みは最も遊べる時間だったため、10:20のあの直線からちょっと曲がった角度には少々思い入れがあり、いまでも10:20くらいのアナログ時計を見るとちょっとした感慨が現れます。授業中は時計をしょっちゅう見ていたということですから授業がつまらなかったのか単に時計が好きだったのかどちらかだと思います。想像でしかものを言えないのは、当時感情が動いていなかったからでしょう。

Clock 10:20

http://etc.usf.edu/clipart/34200/34214/nclock-10-20_34214.htm

画像、探せばあるものですね。

そういえば学校の時計は1分刻みで進み、分針が時刻ちょうどになって3秒たってからチャイムが鳴ることも思い出しました。授業内容は全く覚えていません。

 

もう一つ覚えていることがあります。私は7歳の時手術をしました。扁桃腺が腫れやすくしょっちゅう40度代の熱を出すので、地元の医師に薦められ(?)、自宅から15kmくらい離れた県中心地の公立病院に1週間入院し、扁桃腺を切除しました。その時同室になった同年代の女の子がいましたが私はその子からゲームボーイを借りてひたすら遊んでいただけで何らか会話をすることはありませんでした。私はその子より後で入院し、先に退院しました。何の病気だったのか知りません。ゲームボーイしか記憶がないというのはまずいですね。

この手術は必要なかったと思っています。扁桃腺がないため高熱は出にくくなりましたが、ブロックする構造が無くなり風邪をひきやすくなりました。今でも電車で口を開けようものなら大体風邪をひきます。

 

4年生というとスーファミが出たばっかの頃ですのでやはりゲーム漬けでした。父がゲームをすることもあり私は3歳のときからファミコンで遊んでいました。

そういえばRPGをプレイすることができませんでした。RPGというのは、マップを歩いていると画面がフラッシュしたり突然大きな音が鳴ることで敵とエンカウントします。これがだめでした。寝室の時計の音が気になるので必ず頭に布団を被って寝るくらいの聴覚過敏でしたので、突然大きな視覚聴覚刺激が起きることに耐えられず、傍らに誰か人間がいて喋りながらでないとどうしてもRPGをプレイできませんでした。これは16歳くらいになって過敏が収まるまで続きました。特にFF5は画面が拡大してしかも大きな音が鳴るので最悪です。スーファミ版ドラクエ3だけは例外で、音は小さくしかも画面が左右にブラックアウトするだけですのでこれはプレイできました。

 

やはりバラバラな話になってしまいました。5年生より後はある程度記憶があり、今まで続くストーリーと結び付けやすそうな気がします。そろそろ時間切れなので、また来週書いていこうと思います。

 

次記事


外出時に食費を削れるか

たとえば1泊の小旅行をするとします。すると当然外食しなければいけません。

外食はエネルギー/コスト比が著しく低い上に脂肪分依存度が高くなりがちであることは以前調べた通りです。1日の必要熱量2000kcalを摂取しようと思うと1日3食で1500~2000円はかかるでしょう。

そこで外出時もドラッグストアやスーパーを活用すれば安くて栄養価が高い食事を摂ることができるのではないかと考えました。純観光地ではなく人間が生活している場所なら、この2つは全国どこにでもあるという大きな利点もあります。

外出時の制約と対策

外出時の制限は

  • 調理できない
  • 冷蔵庫が無い
  • ストックできない

です。保存性のないものは基本的に買ったらすぐ食べなければいけません。

主食は食パンです。すぐに腐るものではないし、近所にあるドラッグストアの見切り品を買えば2斤126円、普通のスーパーなら200円、最悪コンビニでも250円で約1900kcalの栄養を賄うことができ、それなりに栄養価もあるためこれだけ食べれば1日楽勝で生きることができます。脂肪依存度もミラノ風ドリアの1/3で済みます。

食パン – カロリー計算/栄養成分 | カロリーSlism

小麦より米?パンよりごはんがオススメな理由は「アミノ酸スコア」にあり : タニタ運営[からだカルテ]

しかしパンだけでは栄養不足です。具体的にはビタミンA、B12、C、ヨウ素が不足します。また小麦はアミノ酸スコアが37と非常に低いため、2斤で66gのタンパク質が実質25g分にしかなりません。アミノ酸であるリジンが少ないことが問題です。これらを補う必要があります。実は玄米もリジンが少なくスコア68と判明したため、以前計算したベストミックスを見直す必要がありそうです。

ビタミンとタンパク質をどう補うか?

ビタミンB12とヨウ素は海苔を食パンに挟んで食べることで解決します。美味しい上に安価です。海苔は軽くて保存性もよいので家から持っていってもいいでしょう。ビタミンCは、みかん・柿・キウイあたりが手ごろです。ピーマンでもよし。ビタミンAはなんといっても人参。ピーマンも人参も生で食べられるそうですのでそのままかじりついてしまいましょう。土がついているのを洗わなければいけませんがこれはそこら辺の公園で十分でしょう。水を汲んでいる人もいるくらいだし。みかんと人参もそこそこ保存性があるので、家のストックを持っていってもかまわないと思います。

タンパク質は豆製品・牛乳・卵が安価で優れています。チーズなどの乳製品は美味しいし食べやすいですが高いのが欠点です。最も安価な製品は以前コメント欄で紹介してもらった「おから」です。次点は納豆。豆腐も悪くないですがどこで食べるんだよという大問題があります。おからもちょっと苦しい。牛乳は外出時に1リットルパックを持ち歩くのが辛いという欠点がありますので、1リットルとほとんど変わらない値段の500mlを泣く泣く買うしかありません。卵は通常は10個パック単位ですからロッキーの真似でもしない限り現実的ではないでしょう。以上を総合すると牛乳と納豆の組み合わせがよさそうです。納豆は臭いが欠点ですので密集地は避けましょう。スーパーで割り箸を貰いましょう。

結果、1日当たりのコストは?

これらを全部そろえるといくらになるでしょうか。

値段調査は近くのスーパー、ドラッグストアおよびSEIYUネットスーパーで行いました。

食パン1斤 950kcal 有効タンパク12.4g 63~150円

牛乳500ml 335kcal 有効タンパク16.5g 130円

納豆(3パックのやつ) 300kcal 有効タンパク21.3g 64~100円

焼き海苔 大7枚100円 1枚当たり14円

みかん 1袋10個くらい 300円 1個34kcal

柿 1個70円 100kcal

キウイ 1個100円 46kcal

人参 1本50円 54kcal

ピーマン 1袋8個ぐらい102円 1個6kcal

例えば1日分は少し高く見積もってこんな感じになります。

食パン1斤 950kcal 100円

牛乳500ml 335kcal 130円

納豆3パック 300kcal 100円

焼き海苔1枚 14円

みかん3個 100円 102kcal

人参1本 50円 54kcal

—–

最低限プラン 494円 1741kcal 有効タンパク50.2g

お腹いっぱいプラン 食パン1.5斤に増量 544円 2215kcal 有効タンパク56.4g

調理不可能でも1日500円くらいで十分栄養豊富になるもんですね。食パンが激安ならば500円を切ります。これは冷蔵庫も調理器具もない時の非常用食料プランとして使えそうです。弁当を買うくらいならこれだけ揃えて1日で食べきった方がましです。スーパー1軒で全部揃うのも利点です。

課題と発展:自作弁当を導入できるのでは?

1食分のみ家でおにぎりを作って持っていくという手があります。3食分持っていくのは重量と保存性の問題があるため不可能ですので、1食分だけでもおにぎりを投入すればもう少しコストが減らせそうに思えます。コメと豆が使えるのは利点です。納豆の代わりに炒り豆作って持っていってもいいわけですし。いずれ検討します。

また、さらっと書きましたが人参・ピーマンは本当に生でそのまんま食べられるのか?という疑問もあります。理論的には問題ないそうですが味については食べたことがないので未体験ゾーンです。後日、スーパーで1本買いして実際に食べてみようと思います。


CDレビュー: Electric Wizard – Electric Wizard(1995)

★★★★★┐(´ー`)┌

今回のロック枠ではイングランド出身のドゥーム・メタルバンド、エレクトリック・ウィザードのアルバムを順に聴いていきます。ドゥームとは「遅くて重い」ぐらいの意味で解釈しています。1993年結成、現時点でアルバムを10枚発表しています。2014年発表の”Time To Die”が最新作品です。以前”Black Mass”という曲を聴く機会があり、こいつらやばいんじゃねと記憶していたので聞いてみることにしました。

遅い重いだるい、内臓に物を詰め込む音楽

1枚目の1曲目Stone Magnetからもうダウナー炸裂です。イギリス的ロックを踏みつけた上に墨を塗りたくったようなこのバンドを選んだのは間違いではなかったと確信しました。後半もともと気怠いのにさらにテンポを落として仕事も何もかも嫌んなっちゃうような雰囲気に突入します。歌詞も”No hope, no future, no fuckin’ job, yeah”と今書いた気持ちそのまんまでしたビックリ

2曲目Mourning Prayerなんてイケてるタイトルの曲は音弄りすぎでお腹に応える、ずっと古い油で揚げたメンチカツを胃袋に突っ込まれてる感じです。褒め言葉です。

3曲目Mountains Of Marsもベースだけでお腹一杯、ついでにエコーの聴いた触れると危険そうなギターが異世界の扉を開きそうです。

4曲目Behemothはもうイントロだけで勘弁してくれという気持ちになります。最速どころか最遅、ボーカルの二日酔いみたいな声のせいですべての意欲が削がれていきそうです。中盤のベースゾーンも強烈。このテンポと音圧で繰り出されるリフはラーメン二郎で言うと山盛りの野菜を食べ終わった後に出現する極太麺と油の浮きまくったスープくらいのインパクトがあります。

全部紹介していくと腹に悪いのでクライマックスのバンド名を冠した7曲目Electric Wizardについて書いて終わります。6/8拍子なのですがビートが時々前後に揺れていて船酔いのような目まいをおこします。意図的なのか計算ずくなのか分かりませんが曲に陶酔するための大きなベースになっています。メインメロディー?の合いの手として入るギターのジョワーンという音が背脂の役割を果たして内臓が揺れます。やはり中央にギター抜きの豚骨味な間奏が流れ次のような歌詞が気の抜けた声で流れます。

Higher and higher, through the cosmos we had tripped
Seeing stars turned inside out, we thought our minds had flipped
Colors swirling, sounds are drifting, thinking we were dead
The wizard turned and spoke to us and, this is what he said

ってこれ明らかに幻覚じゃねーか!

ラストは繰り返しにグッチャグチャなギターを混ぜてはいゲテモノ丼~!

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2006年リイシュー版ボーナスのIllimitable Nebulieもゴアトランスを強引にバンドでやった感じのかなりやばい曲でした。デモテープ音質なのが気味悪さを助長しています。1枚目からこの内容で、レビューによると2ndや3rdの方がぶっ飛んでるってどういうバンドなんだよ。。

 

 

ロック等の他のCDレビューはこちらです。


CDレビュー: Yes – Fly From Here(2011)

★★★★☆

42年目のアルバム

イエス19枚目のアルバム。結成から42年が経過しており、もう存続していること自体が奇跡的です。

ヴォーカルのジョン・アンダーソンは呼吸不全でリタイア、キーボードのリック・ウェイクマンは心臓病でリタイアしていますが、新しいメンバー(ウェイクマンの息子もいる)を加えて出したのがこのアルバムです。

曲のクオリティはそこそこ良いし、新しいヴォーカルのベノワ・デイヴィッドの声は悪くありませんが、やはり音にパンチが足りないです。ドキドキするような展開が足りません。

8曲目Life On A Film Setは良かったので動画を貼っておきます。後半~ラストにかけてのせり上がっていく感じが好きです。

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アルバムを出せただけですごいと思いますがもう少しひねってほしかった。。

 

 

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CDレビュー: DakhaBrakha – Light(2010)

★★★★★

 

自称エスノカオスの名は伊達じゃない

ワールドミュージック枠に4枚ほど最近気になったアーティストのDakhaBrakhaを投入します。キリル文字ではДахаБрахаと書きます。ロシア語は昔から憧れていましたのでこの文字も勉強したいです。いいジャケット。

DakhaBrakhaはウクライナのフォーク4人組です。公式サイトでは自分たちを”ethno-chaos”(民族カオス?)バンドと呼んでいます。バンド名はウクライナの古い言葉で give/take という意味だそうです。ウクライナ音楽をルーツとして、インドやらオーストラリアやらいろんな民族音楽をミックスして、彼ら独特の現代的な味付けを加えるというとても変わった作風を持ちます。なおメンバーは全員キエフ大学の文化芸術科の卒業生だそうです。

1曲目Сухий дуб(よめない)からしてスゲェ変です。バンドネオンとどこのものか分からない打楽器、ウクライナの古代語?と思われる謎語りにトランスを誘うコーラスが薄気味悪い雰囲気の中で展開されます。2曲目Specially For Youも中盤の男声シャウトによるクライマックス部分は今までに聴いたことが無いような異様な曲調です。

4曲目Жаба(よめない)のような曲はいいですね。ノリノリの中に一種のやさしさのようなものが見えます。とても心地よい。5曲目Тьолкиはまさかのヒップホップです。民族楽器とコーラスのせいで高揚感あふれた音楽になっています。

真打は7曲目Babyでしょう。前半のライトな感じに騙されていると突然ウクライナ語による無表情に次々と畳みかけられるヴォーカルが出現し、背後に現代的な和音展開の群れと気持ちの沈む弦バスに何故か切ないエレピを混ぜ、さらにソウルフルなサイドヴォーカルが加わってついでにハーモニカも加えたりなんかしてもう何だかわからないのに聞いている方は追いつめられるというスゲェ曲です。

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面白いアーティストを知ることができました。いろいろ手を出してみるというのはいいことですね。

 

 

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