多くの人々は、上から決められた枠組みの中で政治選択を行い、枠組み自体の偏向に気づかない

 もともと「民主主義」は、欧州を支配してきたエリート層(貴族)が、やむを得ず選んだ体制だ。フランス革命やその後のナポレオン戦争によって、人々を「国の主人」と持ち上げる民主主義の国家の方が、それ以前の露骨な支配体制の封建国家に比べ、国民(以前のやる気のない農奴たち)が喜んで納税や兵役の義務を果たし、財政的、軍事的に強い国を作れる「臣民洗脳機構」であることが判明した。貴族などエリート層は、封建国家だった自国に民主主義を導入して国民国家に転換しつつ、民意よりエリートの利害を重視する官僚機構を行政の実行役として置いたり、エリートが認めた2大政党以外のところに権力がいかないようにするやり方で、実質的な権力がエリートの手に残る仕掛けを維持してきた。
 エリートが決めた国家戦略がうまくいく限り、多くの人々は、上から決められた枠組みの中で政治選択を行い、枠組み自体の偏向に気づかない(日本人が自国の官僚独裁に気づかなかったように)。極右はもともとエリート外の勢力であり、通常はあまり支持を集めない。だが、エリートの戦略がうまくいかなくなると、極右が民意を集める。
 極右はファシズムを支持することが多いが、ファシズムは戦前、国民国家の民主主義の制度に独裁的・権威主義的な権力体制を加味することで、後発の国民国家だったドイツやイタリアなどが国家としての発展を加速するための「ターボエンジン」の機能として発明された。国家体制としてファシズムを採用したドイツやイタリアは、19世紀以来の欧州の覇権国だった英国を追い抜き、英国から覇権を奪うことを画策し、二度の大戦が起きた。 (覇権の起源)
 二度の大戦で、米国の力を借りて(見返りに米国に覇権を譲渡して英国は黒幕になり)独伊や日本を打ち負かした英国は、戦後、二度とファシズムを使って国力を急増させて米英覇権に対抗する国が出てこないよう、ファシズムを「極悪」のものとする国際プロパガンダを定着させた。戦後、米英覇権の傘下に入った欧州のエリート層は、ファシズムを極悪とする価値観を受け入れたが、エリートの外側を出発点とする極右勢力は「ファシズムを信奉して何が悪い」とラディカルに主張し続けている。タブー抜きで自国を強化したいと考えるなら、ファシズムの肯定があり得る選択になる。 (覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク)
――欧州極右の本質 田中宇

わかりやすい。歴史も学ばなきゃダメだねぇ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。