本とCDのストックがすっかり無くなったのですごくくだらない話を書きます。
私が十数年前に不適応を起こして引きこもりになった時歯を磨くのもおっくうになり1年ほど放置しました。1年の間に脳内では「歯を磨くの面倒」が「虫歯にはならない」という確信に変わっていました。そして虫歯が6本できました。認知の歪みです。歯医者で治療したはいいものの、抜歯を拒むと「どうせだめになるよ」と言われたことを覚えています。
悔しいことに10年経ってその通りになりました。去年から最も虫歯の酷かった箇所の隣の歯が少しずつ欠け始め、とうとう歯の半分が無くなってしまいました。今年に入ってから時々軽い痛みがありました。それでも放っておいたら、シルバーウィークがも中盤に差し掛かった21日月曜日、骨を削るような痛みが襲いました。おそらく欠けた歯の下にあった神経が露出したのでしょう。歯医者で歯を診察する時チクってすることがありますよね。あれが何時間も続きます。
シルバーウィーク中で歯医者は休み、しかも水曜日まで祝日、、この痛みが何日も続くかと思うと絶望的になりました。よくドラマで末期がんの主人公や登場人物が痛みに苦しんで動きを止めるシーンがありますがあれに似た気持ちになりました。本物のがん患者の痛みの方が大きいだろうし虫歯なんかで痛がってちゃいかんなぁと思いつつもやっぱり辛いし、こうなったら典型的な手段を使うことにしました。身体の客体化です。
「痛みを感じているのは歯の神経。私ではない。」と念じます。そうして肉体と精神を切り離すのです。「私じゃないから痛くないもんね」この呪文は1日目は全く効きませんでした。神経はやはり私の一部分であり私自身と切り離すことができませんでした。痛みをいくら無視しようと思っても、強制的にポップアップする恐怖のskypeコール画面(たいてい急ぎの仕事とか大きなミスがあった時に表示されるので本当に恐怖)のように痛みがZ座標ゼロで割り込んできて消せず何事を行うのにも効率が落ちました。
6時間ほどで痛みの波は去りました。しかし2日後の23日水曜日、またも4時間ほど強い痛みに苦しめられました。今度は神経と精神の切り離しにやや熟練して、痛みが「今すぐWindows10にアップグレードを予約しましょう」というウインドウくらいの邪魔さ程度まで緩和しました。おかげで仕事への影響も少なくて済みました。このまま熟達していけば痛みが携帯電話のバイブレーションくらいのレベルまで緩和できるようになりそうです。幸いそれ以来大きな痛みはありませんが、昨日歯医者に電話したところ予約がいっぱいで、私も都合が合わずあと二週間以上経たないと治療ができないこととなりました。あと何回痛みに苦しまなければいけないのかと思うと気が塞ぎますが、「やあ痛みよ今日も来たのか。どんな具合だい?コーヒー飲む?」と呼び掛けられるくらいの余裕をもって、彼らを私から分離することで対抗しようと思っています。
しかし今読んでいる本「ひき裂かれた自己」によるとこの方法は大層危険です。身体と精神の分離は現実感の喪失を通して自己の崩壊へと至るからです。自己から遊離し「それ」となってしまった肉体は価値をなくし、すっかり空虚となってしまった自己は自滅するよりほかなくなります。。要するに死にます。ホンマかよ。おそらく今日読み終わるので、詳しい感想は明日書くことになります。
何が言いたいかと言うと歯は磨かなきゃダメということです。磨かないと死にます。