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大学編入用の化学を学びたくて購入しました。化学未履修の人向けの大学1,2年生で講義する内容だそうです。高校の化学よりも取り扱う範囲は広いです。上巻では、モル、電子構造、化学結合、溶液、気体、熱力学などを扱います。
全体的に、知識の詰込みよりも「なぜそうなるのか」を言葉で説明することに重点を置いた教科書でした。ファインマン物理学とも類似しています。アメリカ発の教科書はみんなそうなのかもしれません。極性分子と無極性分子が混ざらないのはなぜか、分子間力(ロンドン力)が働くのはなぜか、やエンタルピー、エントロピーとは何か、などなど分かりやすく解説されていました。
数々の化学理論が出てきますが、著者は理論については謙虚な姿勢を取っています。
おのおのの理論は、同じ物理現象を表そうとしている…どの理論をとっても完璧なものではない。もし、完璧な理論があれば、その理論だけを習得すればよい。おのおのの理論には、一長一短がある。(P185)
大学受験用の化学の参考書としては化学の新研究が有名ですが、ぼくはこの本を大学受験に使用してもよいと思いました。電子軌道論まで説明がないと、遷移元素が典型元素と反応が違う理由が分かりませんし。暗記ゴリゴリで進めると必ず納得ができない箇所がでてきますから。
ただし難関大学への3年次編入を目指す場合は、シュレディンガー方程式の解の求め方などがバッサリ省略されているなど、この本だけでは不足でしょう。物理化学の本を他に読む必要があります。