ぼくが学校の授業や塾で学んだことは、
「Aと聞かれたらBと答えよ」
という1対1対応の知識の集合体でした。知識は直線的で体系化されにくく、運よく直線が交差して網目になれば全体像が見えますが、たいていの場合は見えません。ぼくは受験も仕事も、学習内容を単調作業に落とし込み、バカの一つ覚えを100、1000、10000通り蓄積することで力技で乗り切りました。受験範囲は有限なので、閉じた範囲のことを覚えれば済むから楽でした。
大学の勉強はこれでは乗り切れません。学問の世界は作業ではありませんし、無限です。ぼくは有限の世界に慣れていたので、学問の世界は広すぎて掴むことができず、ついていけなくなりました。
世界を把握するためには全体像が見えていないといけません。そのためにはざっくりとした概論が必要です。概論は地図のようなもので、これがあれば道に迷うことなく、目的地にたどり着けます。
c71さんの授業はまず概論から始まります。基本概念や「この知識は何のために必要なのか?」ということを先に教えてから、例題を少しだけ解いて、生徒さんが理解できたらすぐ次へと進んでいきます。概論が核心をついていて無駄が一切ないので、学校で2週間以上かけて教えることが15分で終わってしまいます。
大学編入を目指す生徒さんを教えていても概論の必要性を感じます。いま何をしているのか、これから何が必要なのか、が分かれば、演習は生徒さん自身の力でできます。細かい技術にとらわれていると、いま何をしているのか、どこにいるのか見失い、学ぶ意欲が無くなります。いつも、いま学んでいることの意味を教えていきたいと思っています。
ぼくは障害特性もあって全体像の把握が苦手です。教えるためには大幅な先回りが必要で、たくさんの書籍を読まないといけません。毎日、この教材を読み終わってない、次はあれを読んで理解なきゃ、と焦ります。