★★☆☆☆
タイトルに惹かれました。
オーストラリアに旅行中だったスイス人の著者カトリンとオーストラリア人のギャビンが出会い数日で恋に落ち、結婚したところから物語が始まります。
著者の夫ギャビンは天才型のスペクトラム星人です。会計の仕事も投資も超出来るし、テニスも上手い。ジョークのセンスもある。そしてカッコいい。しかし結婚式でジョークのつもりでディープキスをしたり、大好きなゴルフのことをいつまでもしゃべり続けたり、子供が病気になるといつもと違うパターンだからパニックになったり、と振幅の非常に大きな人物です。
ギャビンは天才型ですから自信に満ちており、カトリンの言うことに全く妥協しません。口論があれば自分は絶対に悪くないと言い張ります。疲れたカトリンは故郷のスイスに帰ろうと一時は決心しますが、紆余曲折あってギャビンがアスペルガーと診断され、なあんだじゃあしょうがないわね、と納得してまた元に戻る、というのが大筋の話です。訳が悪いのか、本文がもともとひどいのか、論旨が分かりにくく読み進めるのが困難でした。
本全体から2人は全然分かりあえてないんだなぁと感じました。
最初の息子マークが生まれたときの描写です。
ギャビンはマークの小さな手や足で遊び、ついには空中に少し投げ始めました。(中略)彼は、腕の中の赤ん坊がただの遊び友だちではなく、感情や考えをもった小さな人間だとは思わなかったのです。その子が将来自分を見上げて、援助とリーダーシップを求めてくるだろう、父親に自分を理解してほしい、友達になってほしいと言ってくるだろうとは思っていなかったのです。(P80)
これひどくないですか?
ギャビンは子供をモノ扱いしたって断言してますよ?
本文を読めばギャビンは子供をとても愛していたことがわかりますし、つい嬉しくなって赤ん坊が身体的に弱い存在だって忘れちゃっただけじゃないですか?もちろん危ないから止めるべきですが。
次のページにも首をかしげました。
ギャビンに心の理論がないことを示す面白い出来事がありました。出産から5日後、私は数時間の外出を許されたので、ギャビンに服を持ってきてほしいと頼みました。そうすればアイスクリームショップに行けますから。彼はサイズ8の超ピッタリのジーンズとミッキーマウスのTシャツを持ってきました。妊娠中あまり体重は増えませんでしたが、このジーンズがはけるとは思えませんでした。(P81)
え?
それ心の理論関係なくないですか?
いつもサイズ8のものをはいてるから、やった!いつものサイズあったよよかった!っていう気持ちで持ってきてくれたのでは?
心の理論とはこういう奴です
本書、「ギャビンには心の理論がないから~」という記述が散発します。著者さんは、心の理論=思いやりの心って短絡して考えているようですし、しかもギャビンに他人を思いやる気持ちがまるでないような記述がたくさんあります。分かってくれなくて当然、だから「一緒にいてもひとり」というわけです。第16章のタイトル「身体はあるけど心はない」という題が心なさをひきたてています。
これは間違いです。
心はあります。表現することが難しいのです。
ないって言いきってほしくありません。
すごく悲しいです。
書いているうちに腹が立ってきたので星をもう一つ下げました。
「ASの人は違う方法で愛情を表現する」など理解を示す記述もあるのですが、それもギャビンに定型と同じ方法を取らせて解決するなど、ストレス負荷の高い方法を取らせているのでなんだかなぁ。
わたしの結婚は一体なにがいけなかったのか、どうすればよかったのか、何らかの示唆が得られれば良いと思いましたが、むしろ定型の人と理解し合うことが余計に難しいと思わされました。
わたしはパニックになるといわゆる自閉的行動をします。言葉が明瞭に出なくなったり、頭をふるふるしたり、目の色が乾いたり自分でも気づいていない症状がでるそうです。
この行動は「怖い」という印象を抱かせるそうです。
理解できない。怖い。だからやめてちょうだい。子どもも真似するでしょ。あんなふうになってはいけないよ。
こんな気持ちが相手の根本にあったら分かりあうなんて不可能です。
一体どうすればよかったのか、まったくわからなくなりました。残念です。