書籍レビュー: プログラム版文章読本『リーダブルコード―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック』 著: Dustin Boswell, Trevor Foucher

★★★☆☆

 

文章を書くノウハウ本は多数ありますが、プログラムを書くノウハウ本もいくつか出版されています。本書は比較的新しく、かつ定番となる本だそうですので前々から興味がありました。

プログラムの抽象的な大構造やデザインパターンと言ったマクロな話には立ち入らず、変数の命名規則といったミクロな範囲~関数・テスト設計と言った中程度の規模の話に集中して、「どうやったら他人が読んで理解できるコードを書けるか」「パッと見て意味が分かるか」というテクニックと思想を詰め込んだ本です。

命名規則には特にうるさく、「tmpという単純な名前はやめなさい、抽象的すぎるから」「getMean()のような関数は、getという名前で軽い処理を行うと解されやすいから、重い処理を詰め込むのはやめよ」などなど、日常業務に即適応できそうな内容ばかりです。

ただし後半になってくると、職業プログラマーをやっていると当然のようにぶちあたる課題と解決方法の繰り返しになるので、自分としては得るものが少なかったのが残念です。ここのところ本業が佳境に入って時間が取れないにもかかわらず、ものすごく早く読み終わってしまいました。逆に考えると、日常の業務の遂行方法が本書出版時の2012年現在でもだいたい有効であるということですので、うれしいです。

また、翻訳のクセが私には鼻について全然合わない(Amazonではみんな褒めてますけど)のと、巻末の解説が冗長すぎて「読みやすい」を目指すはずの本書の趣旨と合ってない、最終章のサンプルコードが無駄に複雑でここだけ難易度が跳ね上がっていて初級者には絶対読めないのとで、★-1としました。

 

プログラム本を読んでいていつも思うことがあります。発達障害者はプログラマーに向いている、ビルゲイツもアスペだったとよく言われます。私は嘘だと思います。私の書くコードはきたないです。なかなか一発で本書のような綺麗なコードは書けません。なぜなら良いコードは「他人が読んでわかりやすい」コードであり、それは文章や会話と原則的に何も変わらないからです。私は自分にしか意味の分からないようなコードを大量に生産しています。これはコミュ障と同じです。

さらに現代で優れているとされるプログラム手法は「オブジェクト化」「疎結合」ですがこれも、高度な抽象化が必要になる作業です。私は実はこれ、すっげぇ苦手です。どうしても直接的でベタ打ちのコードを書いてしまいます。同じ機能をまとめて抽象化して、より高次の問題だけを取り扱うのが現代プログラミングの基本ですが、全然できません。経験を積むほど自分がプログラミングに向いてないのが分かります。

だからプログラミングが得意な人間とは本当は、コミュニケーション能力があって空気が読め、何でもすぐに抽象化して上位概念を操るのが上手い人間なんだろうなぁと思うのです。たぶん私とは正反対に位置する人間ですこれ。

 

 

 

 

参考書籍

分厚い類書です。これもいつか必ず読みたいと思っている本です

CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して

CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して

 

 

正直言って会社で書いてるコードはきたないものばかりなので、リファクタリングも学ばないとなりません。

新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する― (OBJECT TECHNOLOGY SERIES)

新装版 リファクタリング―既存のコードを安全に改善する― (OBJECT TECHNOLOGY SERIES)

 

 

巻末に紹介がありました。気になるけど、すごく。。やばそうな本です

文芸的プログラミング (ASCII SOFTWARE SCIENCE Programming Paradigm)

文芸的プログラミング (ASCII SOFTWARE SCIENCE Programming Paradigm)

 

 


2016/2/14 アンディムジーク室内合奏団 第14回 教会の小さなコンサート

行ってきました!

 

http://uccj-sagamihara.sakura.ne.jp/sblo_files/uccj-sagamihara/image/03_access/MAPs3.png

日本基督教団 相模原教会 は付属の幼稚園もある立派な教会で、礼拝堂もキレイで趣のあるものでした。

 

f:id:happyholiday:20160214160003j:plain

ちょっとぼけてますがシャンデリア風の照明と十字架

 

f:id:happyholiday:20160214155951j:plain

礼拝堂ですので演壇もあります

 

f:id:happyholiday:20160217223335j:plain

プログラムです。右上の「午前3時 毒いちご」などは何でしょうね?質問すればよかった。

 

生演奏はいいですねぇ。クラリネットの奏者さんの息遣いたっぷりの演奏が上手でした。プッチーニの「菊」が一番かっこよかったかな。オペラ作曲者だけあって弦楽重奏曲といえどもドラマチックでした。

www.youtube.com

 

アマチュア作曲者の平田真夫さんの「炉辺にすわって」もよく出来ていました。なんと作曲者ご本人さんも来場されていて、ちょっと感動しました

 

せっかく教会で演奏するんだから次はバッハの演奏が聴きたいなぁと思ったら、次回はバッハの演奏会なのだそうです。楽しみ。

アンディムジーク室内合奏団 演奏会のご案内

 

 

 

 

来週はこれを聴きにいきます。

 

この日は昼に次のセミナーに参加する予定です。

 

セミナーからコンサートまで時間があるので、赤坂見附から荻窪まで10数kmを歩いてみようと思います。


書籍レビュー: 人はなぜランニングキチになるのか『BORN TO RUN 走るために生まれた』 著:クリストファー・マクドゥーガル

★★★★★

 

箱根駅伝が好きで10年くらい前から毎年見ています。しかし今年はやや複雑な思いでレースを眺めていました。

箱根というブランド、栄光を背負うための戦いというシナリオは自分でないものにロマンを抱く多数の日本人に支持されています。同調圧力や虚構に支配された雰囲気が次第にうっとおしくなってきました。それでも毎年見てしまうのですが。

箱根駅伝には小田原~芦ノ湖間の5区山登りという23.2kmで標高差860mを登る区間があります。ここで大差をつけたチームが毎年優勝しています。去年、今年は青山学院の圧勝でした。1時間ちょいで登山するなんてアホみたいな区間だなぁ、、と思っていましたが私は甘かった。反省しています。

本書の前半は100マイル(160km!!!)の「ウルトラマラソン」にまつわる話です。走るのは舗装道でもトラックでもなく、自然の中です。「トレイル」とも呼ばれています。箱根なんてメじゃありません。参考に、言及されているレッドビル100のレース画像を載せておきます。

f:id:happyholiday:20160214103154j:plain

http://www.summitdaily.com/csp/mediapool/sites/dt.common.streams.StreamServer.cls?STREAMOID=lRlHlDck5gCIJ13cuiuwk8$daE2N3K4ZzOUsqbU5sYuEC0v0nyQHjbQ8p1aEAiFBWCsjLu883Ygn4B49Lvm9bPe2QeMKQdVeZmXF$9l$4uCZ8QDXhaHEp3rvzXRJFdy0KqPHLoMevcTLo3h8xh70Y6N_U_CryOsw6FTOdKL_jpQ-&CONTENTTYPE=image/jpeg

Leadville Trail 100 ultra race draws athletes from all over the world | SummitDaily.com

Leadville Trail 100 Run Introduces Lottery System | Competitor.com

 

いやあなんつうか、バカですね!(褒めてます)

これほどまでにランナーを魅了するのは「走る」ということが人類の獲得した偉大な財産であるということが、後半で綿密な科学的考察を持って描写されます。そしてとある研究者は次のように結論付けるのです。

人はなぜマラソンを走るかわかりますか?とルイスはブランブル博士に訊いた。走ることはわれわれの種としての想像力に根差していて、想像力は走ることに根差している。言語、芸術、科学。スペースシャトル、ゴッホの『星月夜』、血管内手術。いずれも走る能力にルーツがある。走ることこそ、われわれを人間にした超大な力――つまり、すべての人間がもっているスーパーパワーなのだ。(P343)

これだけ読むと宗教がかっていて引きますが、本書をここまで読んできた人であれば合点がいくはずです。本書の訳者に至っては、訳しているうちに影響を受けて走り始め、ついにはハーフマラソンに応募してしまったそうです!一読をお勧めします。

 

 

 

個人的な話になりますが私も本書に会う前から走りはじめました

f:id:happyholiday:20160214104457j:plain

いずれはフルマラソンもやってみたいですね。まずは、10km以上安定して走れるようになることを目指します。

 

靴は本書によれば裸足が最も良いのですがそこまでの勇気はまだ持てず、ワークマンに売ってる「建さん2」というペラペラの靴を使っています。足裏の感覚が鮮明になるとても良い靴です。

商品カテゴリー:作業靴|ワークマン オンラインストア

680円と非常にお値打ちです。昔は500円だったそうです。サンダルでもいいらしいですよ!


放送大学科目申請2016前期

 

年初の目標通り、4年ぶりに放送大学に復帰するため科目登録しました。結構な金額ですので副業(無事採用されました)で何とかカバーしなくてはなりません。

放送科目
西洋政治理論の伝統(’09)|KAMOKUNAVI – 放送大学

現代哲学への挑戦(’11)|KAMOKUNAVI – 放送大学

ファイナンス入門(’12)|KAMOKUNAVI – 放送大学

入門線型代数(’14)|KAMOKUNAVI – 放送大学

自然言語処理(’15)|KAMOKUNAVI – 放送大学

面接科目
解析学、その考え方

 

趣味丸出しの科目履修で問題ないことがこの大学の素晴らしいところです。私は大学を2年で中退したので、卒業までに必要な単位が半分になる編入学の制度を使いました。編入学した場合は、去年までは既取得単位が所属コース(「自然の理解」など)の単位と認められないため、卒業までに所属コースの単位を30以上取らなければいけない縛りがありました。ところが今年からカリキュラムが大幅に変わり、編入前の取得単位がこの30単位に全部割り振られました。ですので余った単位は、どの授業をとってもよくなりました。私のような中退組にはとてもうれしい制度です。

私は「自然の理解」コースという超理系で申し込みましたがもはや理系の単位を取る必要がなくなりました。ですので安心して哲学やらファイナンスやらを申し込めます。

早速ストリーミングのラジオ授業で「現代哲学への挑戦(’11)」を歩きながら聞いたところ大爆笑してしまいました。めっちゃおもしろいです。

 

一般財団法人 放送大学教育振興会|全国テキスト取扱店検索店

大型書店に行くと教科書がずらっと展示してあります。通読するだけでも面白いものばかりです。

著作権法概論 (放送大学教材)

著作権法概論 (放送大学教材)

 

例えばこのテキストは以前受けた弁理士試験でも十分通用する素晴らしい出来のものでしたので、授業を取ってないのに買って何度か熟読したことがあります。今回取った授業についてもすべて事前に書店でテキストをチェックしました。なるべく簡単そうでないものを選びました。いずれここでも紹介します。


首都圏で無料の演奏会いっぱい

こんな素晴らしいサイトがありまして、全国で行われる演奏会の日程が大量に登録されています。N響など有名なオケの情報はありません。安価な演奏会の情報が中心です。私のようなド貧乏人にはありがたいサイトです。

 

明後日14日から、なんと3週間連続で日曜日に無料のコンサートラッシュなのです!

 

2/14(日)

 

 

2/21(日)

 

2/28(日)

 

3/6(日)

 

どれも出かけることを検討しています。2/14の矢部で行われるコンサートはなんと礼拝堂内ということで非常に珍しく、楽しみにしています。家から自転車で行ける範囲なので完全無料なのもよいですね。

3/6のコンサートの演目はなんとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。この曲大好きなので、どのように演奏してくれるのか。。


書籍レビュー: 常識人は意識してクラクラする 『プチ哲学』 著:佐藤雅彦

★★★☆☆(巻末対談の一部分だけ★★★★★)

 

クラウドワークスでとあるライティング業務のトライアルに引っかかったので、大慌てで課題図書のうちすぐ読めそうで興味のある本を調べ、図書館まで自転車飛ばして借りてきて、大急ぎで全部読んで記事を書き上げました。今日本業の仕事が一段落した夕方~夜のことです。なにしろ、明日から本業の仕事量がドッと増えるかもしれないので、急ぐしかありませんでした。

ここではトライアル記事の体裁の制限で書けなかったことを書きます。採用されれば、ねんがんの安定収入(少ないけど)が入ることになります。

 

佐藤雅彦さんと言えば「ポリンキー」「だんご三兄弟」「ピタゴラスイッチ」で有名です。ピタゴラスイッチはこどもと一緒に見ていて好きだったので、こりゃあうってつけだぜ!と思ってマッハ借りして一気に読んだ、のですが、あんまりおもしろくなかったです。。

「プチ哲学」というのは哲学までは行かないけど視点をちょっと変えてみると世界の見え方が変わるぜ―系のビジネス書なんかでもありそうな奴で、彼の特徴であるkawaiiイラストとともに解説が添えられているのですが、残念なことに取り上げられている事柄への考察が浅かったです。軽く読んでもらえる本ということがコンセプトなのでしょうがないんですけれど。次はもっとマジメに書いてある本を読んでみたいです。

 

一点だけとても納得したことがあります。巻末に漫画家の中川いさみさんとの対談が収録されていて、ここで佐藤さんが面白いことを言っています。

佐藤:・・・中川さんは非常に常識人だと僕は思うんです。僕は自分を普通に常識だと思っているんですけど、それと同じ意味で常識人。例えば、「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪」を僕が町でやっていたら、僕は変な人ですよね。ところが、こういうCMやれば、スコーンの認知率が70%になりますよってスポンサーに話すとき、僕はすごく常識的な人間ですよね。CMという枠の中では奇妙奇天烈なことをやりながら、同時に、どうしてそれがクラクラするのかということがわかる自分はすごく常識的なわけですね。そもそも僕が変な人間だったら、あんな変な状況にもクラクラこないわけです。あれがクラクラくるということは、自分がすごく普通の人なんですね。中川さんの漫画はやっぱり普通じゃないところがあります。でも、それが面白いと客観的に分かる中川さんは極めて常識的だと思います。

・・・

ああ!なるほど!

だからこの本面白いと思えなかったんだ!

私は「スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪」を町でやる人間が大好きなんです!それも、クラクラ来ないでフツーにやってる人間が好きなんです!!

壊れる壊れないといったレベルをハンドル使って調整している作品って後ろ側の手が見えちゃいますもんね!素でぶっ飛んでる人とはエネルギーの出し方が違いますね!

だからだ!

ありがとう佐藤さん!

 


C#で半角カナを全角カナに変換

半角カナはダサいので全角カナにしましょう。という依頼を受けました。.NETでそんなメソッドあるんかいな。

 

調べたらありました。

ひらがなとカタカナ、全角と半角の変換を行う: .NET Tips: C#, VB.NET

C#からならVBで使えるレガシーメソッドを使えるようにすればオッケーです。まず

Microsovt.VisualBasic.Dll

を参照設定しましょう。昔のVBのメソッドを眠りから解き放つのですね。

string hankaku = "ハンカクモジャー";
string
zenkaku = Microsoft.VisualBasic.Strings.StrConv( s, Microsoft.VisualBasic.VbStrConv.Wide, 0x411); //ハンカクモジャー

ちゃんと半角の濁点も変換してくれてうれしい。しかし.NET独自の全角半角変換はないんですねぇ。半角カナはローカルすぎるので全世界的な.NETには搭載されてないっぽいです。

ただこれ欠点があって、半角カナだけではなく半角英数字も全角にしちゃうんですよね。それが嫌なら外部DLLを使いましょう。配布するDLLが増えるのが欠点ですがコードは一気に楽になります。

Microsoft Visual Studio International Pack 1.0 SR1

https://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=15251


神奈川県央図書館ガイド(相模原市・町田市・大和市・座間市・厚木市・海老名市)

図書館巡りが趣味です。隣接自治体の図書館は実際に本を借りることができるので、行ける範囲の図書館に全部行ってみました。趣味丸出しのエントリです。

住むにあたって図書館の利便性を第一義に考える私のような人がもしいらっしゃれば、参考にしていただけると幸いです。

画像がとてつもなく多くなってしまったので、一度区切っておきます。

 

続きを読む


書籍レビュー: マクロな世界史『世界史』 著:ウイリアム・H・マクニール

★★★★★ʕ→ᴥ←ʔ

 

人類発祥から現代史に至るまでの数千年を1冊で語ってしまうという本です。世界史には以前から興味があったので、まず読んでみたいと思っていた一冊でした。アウトラインだけザーッと書いてあるのかと思ったらとんでもない、見た目も内容もヘビーでした。歴史に慣れていないこともあって読むのに合計20時間は費やしたのではないかと思います。10冊分ぐらい読んだと思ってよさそうです。

まず驚愕するのはマクニール教授の異常な博識さです。歴史学者なので全ての時代について綿密な考察がされているのは当然として、物理学、数学、音楽、美術、建築などへの言及も誤りなくしかも示唆に富んだ記述がふんだんに盛り込まれています。人類が今までになした軌跡をあまねく辿るのですから、全てのことについて理解がないといけないのは分かりますがいやすごいですね。

イノベーションで興隆が決まる

全体を通して「歴史はイノベーションの連続である」という思想が感じられます。イノベーションを発明した地域が繁栄を極め、残りの地域はそれに追いつこう、取り入れようと奮闘するという構図が至る所に散見されます。たとえば紀元前、農耕がはじまったことで富の蓄積が初めて可能となり、文明が生まれました。以降数千年に渡り「文明ー周縁」という定義が出来上がり長期間にわたって固定化します。マクニール氏に言わせれば四大文明ですらメソポタミアが時代の最先端で、あとの3つは周縁の扱いです。

暴走族ハーン

一方古代文明は常に蛮族との戦いを常としており、維持するだけでも並大抵出ない努力が必要でした。蛮族は大抵中央アジアからやってきます。中央アジア~モンゴルは北斗の拳でいう修羅の国とほぼ同じ扱いを受けており、西洋の蛮族バリアーはいまのイラン・イラク付近、中国のバリアーは万里の長城でした。なにしろ蛮族は馬の扱いに長けており、時々暴走族を統率できるカリスマ族長が現れると圧倒的な力を発揮するので、マジで強いのです。歴史上最強の暴走族長はもちろん、日本の小学生でも知ってるチンギス・ハーンです。

www.youtube.com

ただし蛮族は力は強いけど安定した制度やインフラを作る力が無く、世界各地を征服した後大抵が後継者争いで崩壊してまた元に戻るという繰り返しでした。日本にやってきた元は中国文明を吸収してドーピングしたため、比較的長持ちした方でした(でもやっぱり後継者争いで崩壊)。

産業革命と民主主義

1500年以降のイノベーターはなんといっても西洋です。1500-1700年の間に西洋で発展した「産業革命」「民主主義」の2つは今でも続く西洋の優越の源泉となっています。産業革命によって種々の生産が大規模になったことと、自動車を作ったからタイヤ・ゴム産業が発展、電気産業が発展したから電線に使う銅産業が発展、というように連鎖反応が起きてテクノロジーが指数関数的に発達し、周りの文明との距離をグングン開いていきました。箱根駅伝の2区で2位と5分差をつけてしまってそのまま10区までトップでゴールインしてしまったような感じです。

民主主義は第二の力の源泉でした。それまで西洋の政治とは、神の力を受け継いだ統治者によってなされるものであり、それゆえ変えることができないものだと思われていたのです。現代人の感覚からすると笑っちゃいますが大日本帝国だって天皇は現人神ですから1945年までは神権政治だったのです。

民主主義の実現によって、政府は人間の手で作られるものだという認識が生まれ、柔軟に政策を展開できるようになりました。さらに重要なことは、「俺たちが選んだ政府だぜ!」という認識が国民にあるため、政府の権力が格段に上がったことです。全国民が共感してくれれば反発なく彼らを徴兵して、国のために喜んで死んでくれる兵士を空前の規模で集めることができたのです。これが西洋政治の強みでした。

民主主義っていうと人間の自由な精神の獲得物と解釈されがちですが西洋人の認識は以上のようなものですので、こわいですね。

引用集

本書は細かい点では感激する点が大量にありました。読書中に面白いと思った所にはいつも付箋を貼って、あとでここに書く材料にしているのですが、本書は付箋が100カ所くらいに貼ってあります。とても紹介しきれませんので、いくつか引用を書いてこの記事を終わりにします。

帝国主義の推進者たちが貪欲なヨーロッパの投資家に約束していた利益は、ほとんどの場合実現しなかった。実際のところ、帝国主義というのは現金に換算してみると、全体として決して引き合わなかったのは確かなようだ。アフリカの植民地行政と開発のためにかかった経費は、おそらくアフリカからヨーロッパにむけて送られた物資の総価額を超えていただろう。・・・白人がアフリカの資源を掠奪して巨大な富を手にしたという意見は、単純計算による偏見でしかない。(P560)

奴隷貿易なども考えると現金の大小だけで割り切ってしまうことには抵抗がありますが、一方的に搾取するだったという見方が一面的であることは、反省してもよさそうです。

イスラム教徒の間では、宗教と政治ははるかに結びつきが強く、それはマホメット以来のことであった。おまけに、イスラエルが1947年と1973年の間にアラブと戦って買ったことも、世界中のイスラム教徒の宗教的意識を尖鋭化させた。なぜなら、敗戦を納得のゆくように説明すると、聖なる法典に記された神の意志に従わなかったから神は罰された、ということになるからである。(P621)

イスラム過激派がなぜ現代でも力を振るうか、についての原理的な解説です。なんと「負けた」→「神の言う通りにしなかったからだ!次は勝つる」の無限ループになるということです。イスラムが迫害されるほど尖鋭化する理由の一つです。

イスラムは中世にそのモーレツさで装備の不利も克服し兵隊の大量動員と統制をもって一時は世界を席巻しましたが、コーランが時代に合わなくなっても変更が不可能であるという根本的な欠点により、勢いを失ったと解説されています。イスラム嫌いじゃないんですけどね。コーランは古典だと思って、源氏物語とか古事記とかと同じ扱いにしてゆるーく尊重すればいいんじゃないのかなあ。

科学者たちはさらに革新的な技術飛躍の縁に舞い上がっているように思われる。そして、加速化する科学と技術の進歩は、来るべき未来に、人間問題に深い影響を与えることは確実である。過去においても事情は同じだったが、影響は間歇的だった。新しい考え方が、われわれの行動を変えることによって、予見しなかったような影響を世界に与える。これは、人間が、未来への展望の共有に基づき、人間の行動を統合しようとして言語を使い始めて以来、おこっていることである。現代においては、新しい観念の氾濫が、このむかしながらの過程を加速させ、その速度と力を強め、伝統的な慣習に対して、いままでよりははるかに大きな破壊力を発揮しているのである。(P639)

ほぼ最後の〆の言葉です。いかにも1917年生まれのじーさん(ご存命です!)らしいセリフですが、ここまでの長い長い歴史の叙述を踏まえると感動もひとしおでした。

現代ではイノベーションが現れては消え、現れては消えの繰り返しで、その周期も速くなっています。2000年にバブルを引き起こしたインターネットももはやインフラの一部となっていて、目新しさはありません。50年後、今の時代はどのように振り返られることになるのでしょうか。未来の歴史書を読んでみたいですね。

 

 

本書は文庫版もあります 

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,増田義郎,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫
  • 購入: 37人 クリック: 1,062回
  • この商品を含むブログ (84件) を見る
 

 

世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)

世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,増田義郎,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫
  • 購入: 25人 クリック: 134回
  • この商品を含むブログ (56件) を見る
 

 

参考書籍

マクニール博士のもう一つ有名な本です。

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

  • 作者: ウィリアム・H.マクニール,William H. McNeill,佐々木昭夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫
  • 購入: 4人 クリック: 66回
  • この商品を含むブログ (32件) を見る
 

 

類書。本書では鉄も病原菌も銃もイノベーションや大きな影響の一つとしてとらえられているので、二番煎じじゃないんかと思います。でも読んでみたい。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

 

 

 

 近代史

大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈上巻〉

大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争〈上巻〉

 

 

 冷戦

アメリカ外交50年 (岩波現代文庫)

アメリカ外交50年 (岩波現代文庫)

  • 作者: ジョージ・F.ケナン,George F. Kennan,近藤晋一,有賀貞,飯田藤次
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/10/16
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 58回
  • この商品を含むブログ (33件) を見る
 

 

インド

ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)

ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)

 

著作権切れのため、原著はネットで公開されてます

An Autobiography or The Story of my Experiments with Truth – Wikilivres

 

 中国

中国の歴史―古代から現代まで (Minerva 21世紀ライブラリー)

中国の歴史―古代から現代まで (Minerva 21世紀ライブラリー)

  • 作者: J.K.フェアバンク,John K. Fairbank,大谷敏夫,太田秀夫
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 1996/07
  • メディア: 単行本
  • クリック: 2回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

ベトナム戦争

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (Nigensha Simultaneous World Issues)

 

 


山はいいよね

 

あれから一週間たったので気持ちも整理できてきました。

親とは話せるようになりましたが、どこか皮一枚隔てているような感触でした。それはお互いに、あれだけ揉めに揉めた私の元家族の話に意識して触れなかったからです。いや触れなくてよかったんですが、フランクに話しながらも、私はずっとお腹の中にガスがたまったような感覚でいました。

地元で一番私の心を打ったのは山でした。

私の実家付近には西側に大きな山脈があります。東側は平野で開けており、田んぼが広がって家の少ない場所まで来ると山が大きく見えます。

ところがこの景色、私が2か月前まで住んでいたマンションから見える光景と全く同じだったのですね。

元家族と住んでいた地域は足柄平野で、やはり西側に箱根山脈と富士山が見えていました。寝室は西側に窓があって、とくに冬場は山脈も富士山も冠雪し、見事な風景でした。

それは妹の車で移動中に見た風景だったのですが泣いてしまいました。

小説などでは旅先で自分の故郷にゆかりのある地や似たような風景を見ると心動かされることが多いと思います。私の故郷は、足柄平野の方だったようです。6年間毎日見てきた風景ですので脳に刻み付けられていたのでしょう。

元家族から連絡は全然来ません。私が抜けて忙しくなったこともあるでしょうけれど、意図的に少なくなっています。相変わらず子どもに関する質問はスルーされます。

この本でも薦められていましたが、近いうちに訪れる上の子の誕生日にメールを送ってみようと思います。どのような反応が来るか分かりませんが、無反応の可能性90%というところでしょう。うっとおしく思う返事がやってきたらやめます。

身内のために調べた本なんですが、本当は自分のためでした。直感的にもう子どもに会う機会はほぼ訪れないんじゃないかと思っていましたが、日ごとに現実感が増してきます。

じゃあ家出なきゃよかったじゃん。という訳にもいきませんでした。あのまま家にいるのにいない同然の状態だったり子どもにとって悪い見本のままだったりしたらキビしかっただろうし、家を出て精神的にかなり楽になったことは事実です。親として不適合だったんでしょう。でも2か月も経ったし近況くらいは知りたいなぁ。。

 

物音で駆けつけたリナと2人、急いでパパを追いかけた。けれどマンションの外まで出たときには、通りにはもうパパの姿はなく、リナとマイは仕方なく部屋に 戻るよりほかなかった。その夜は2人とも沢山泣いた。自分の部屋にこもったっきり出てこなかったママも、きっと泣いていた。

パパのいない暮らしがどんなに当たり前になっても、離婚していることとしてないことは大違いだった。パパが家にいない暮らしは一時的なもので、当然いつか元通りになるのだ思っていた。だからマイは、「離婚しちゃだめだからね?」と、ことあるごとに、何度もママに釘を刺した。

一時的なものと思われたり泣かれてうらやましい

 

後ろ向きやめます。来週あたりから仕事が休みの日曜日に、無料のコンサートやらセミナーやらに出かけまくる予定を入れました。東京にはカネが無くても参加できるイベントが沢山あってすばらしい。パスカル言うところの気晴らしという奴です。

http://哲学.jp/philosophy251.html