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2年生の途中までしか終えていない大学教育の水準に追いつくため、まずは数学の勘から取り戻さないといけません。そこで尊敬している遠山先生の新書、名前もそのものずばり「数学入門」という本があるというので手に取ってみました。
数学者は語学マニア
著者の遠山啓(とおやまひらく、1909-1979)さんは数学者・数学教育者です。タイルを使って量の概念を確実に身に着ける「水道方式」で有名です。
1959に出版されたという本書では、「ものを数える」という概念の誕生から始まって加減乗除~方程式・代数学~幾何学~複素数までの説明を新書1冊で(演習無しで!)完結させるというなかなか野心的な書でした。
あちこちで目を引くのは遠山先生の教養レベルの高さ、というかマニアさです。まず数の概念についてはあらゆる言語や部族の数詞に言及します。
たとえば、英領ニューギニアのビュギライ族はつぎのような数詞をもっている。
1→タランジェサ
2→メタ・キナ
3→ギジメタ
4→トペン
5→マンダ
6→ガベン
7→トランクジンベ
8→ボデイ
6→ンガマ
10→ダラ
これは身体の各部分の名であるという。人間の身体の各部に関連させて数えていく、という流儀によると数百の数まで数えられるだろうが、これは覚えこむのが大変で会って、これでは記憶力をひどく酷使することになる。
この調子でいろんな方言などを比較しつつ数の概念の誕生に迫っていきます。。現代の天才数学者ピーター・フランクルさんは14か国語を話せるそうですので、数学者というのは語学に精通していることが多いようです。言語は面白いパターンに溢れていますから数学者好みと言えましょう。私も外国語は大好きですが数学は苦手です。
まさかクラメルの公式の意味が分かるとは
数論・四則演算で最も驚くべき個所は分数の足し算引き算・通分約分のところです。約分を「たたむ」、通分を「ひろげる」と折り紙に例えている個所はマジ感動しました(画像が無いのが残念です)。ここから量をタイルで考えるという発想に至り「水道方式」に繋がっていったのでしょう。
代数の章では一次方程式→行列→クラメルの公式までぶっ飛ばします。行列が多元1次方程式の解を求める要請から出てきたので必然とはいえここまで進むとは思いませんでした。さすがにここはしんどかったですが線形代数の授業で丸暗記するしかなかったクラメルの公式の意味が分かり驚きました。
公理を積み上げてできた幾何学
幾何学の章では浪人になる直前になんとなく本屋で手に取ったこの本を要約したような感じでした。
幾何学は「2点を通る直線は必ずあり、しかも1本しかない」などの公理と呼ばれる直感的に「当たり前」な数少ない事実だけを基にして複雑な証明を組み立てていく美しい学問です。と上の本を読んで感動したことを思い出しました。大学1年で買わされた杉浦「解析入門」も公理から微積分を導いていく本なのですがこちらは美しいと思えずただ苦痛だった記憶しかありません。いつか読破してやるんだ。。
あちこちにダンテやらプラトン、ショーペンハウエル、デカルト、スタンダールなどの引用が散りばめてあり、著者の教養の高さが伺えるとともにそれらの書物もまとめて読みたくなってしまう素敵な本でした。 下巻は関数、極限、微積分です。どういった説明が出てくるのかワクワクです。
参考書籍
イスラム数学者の話。
数学が得意だったダンテ。7や100といった数字が大きな意味を持つ。
幾何学の聖書。
- 作者: 中村幸四郎,寺阪英孝,伊東俊太郎,池田美恵
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2011/05/25
- メディア: 単行本
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