(21:00 画像を追加して追記しました。)
突然の株高
本日、2586フルッタフルッタが謎の値上がりをしています。
今年2月、上場ゴールで有名に
フルッタフルッタと言えば、いわゆる「上場ゴール」で話題になった銘柄です。上場ゴールとは、上場するために実力を過大評価させるような怪しい決算の数字を作り投資家の期待を煽ることで、公募値と比較して異様な高値で株価が取引された後に、激しい下方修正を出して株価が実力相応の位置に落ち着くまで下がり続ける銘柄のことです。もちろんベンチャーキャピタルや証券会社などの初期出資者は初期に売り抜け、莫大な利益を出しています。ひどい会社に至っては社長や取締役が高値で株を売り抜けることがあります。まさに上場自体が「ゴール」で、後のことは知らないという企業です。
どんな会社?アサイーって何?
私はフルッタフルッタの企業情報など見たことがないので、早速読んでみました。
【アサイーのフルッタフルッタ オフィシャルサイト】トップページは無駄に重く、カクカクしています。ここはコピペで埋め込みリンクが作成できませんね。何かHTMLに足りてないタグがありそうです。
さてフルッタフルッタは主にアサイー製品を売る会社です。アサイーとは、アマゾンに自生するブルーベリーみたいな果実です。
ポリフェノール、鉄分、食物繊維、カルシウム豊富と健康食品の見本のようなフルーツです。南国の植物にありがちな味の癖が少ないものの、甘味もあまりないそうです。商品のターゲットは主に若い女性層でしょうから、スイーツにするならかなり砂糖を入れないといけないですね。コンビニにあるでしょうから、一度買ってみようかと思います。
さてこの会社は短信にリスクの一つとして「アサイーに9割以上依存しています」と書いてあります。つまりアサイーのブームが去れば終わりです。怖いですね。
前期決算の様子と見通し
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=15998&code=2586
こちらは2015年3月期の決算説明会資料です。今期の純利益は+31.2%の2.01億円ですが、営業利益が-56.7%の1.06億円とかなりやばい数字です。主に販管費の伸び過ぎによるものです。計画性なさすぎですね。純利益が増えたマジックは「外貨預金の時価評価0.88億円+デリバティブ取引の時価評価益1.67億円」だそうです。やっつけすぎます。来期損失出たらどうするの。
むろんこれらはキャッシュフロー計算書には組み入れられませんから、こちらの数字はメタメタになります。新株発行で何とか持っている感じに早変わりです。
21Pに「戦略:アサイーに次ぐスーパーフードの育成」と書いてあるのにP25は「期待されるアサイーの市場性」とさらにアサイーフードを開発しまくる矛盾、「ベンチマークは青汁:市場規模800億円」って青汁とアサイーじゃ全然ターゲット違わないか!?アサイーはスイーツ系だと思うんですけれど。。
P27に一応ココナッツとピタヤの育成を進めると書いてあるがココナッツの商品名は「アサイーボウルアイス・ココナッツミルク」ってやっぱりアサイーじゃん!?
アグロフォレストリーという美辞麗句
同社は「アグロフォレストリー」を提唱しているようです。これまでの、自然のコントロール(=破壊)により人間が効率的に作物を生産するシステムとは正反対の、自然を再生しながらその過程で作物を生産していくという画期的な仕組みです。
この思想は自然農法に近いか、全く同じものだと感じました。
自然農とは、無農薬は当たり前、雑草は生えっぱなし、土を耕さない、有機肥料すら与えないという男前の栽培方法です。実は、我が家は自然農の野菜を定期購入して食べています。土に自然に存在する微生物がそのまま生きていること、過酷な環境でも育つ野菜しか商品にならないことから、めちゃんこ美味しいし栄養価も高い上に絶対安全です。アグロフォレストリーの思想自体は、持続的な農業であること・自然に可能かなぎり手を加えないことから、自然農と共通します。それ自体は素晴らしいことです。
しかし当然ながら、自然そのまま=人間にとって効率が悪いという大きな欠点があります。ぶっちゃけ、価格が高いのです。自然農の野菜は市場で売られている野菜の価格の何倍もします。もちろん大量生産もできません。一般的に行われている集約的な農業とは縁遠いです。アグロフォレストリーも、作物の組み合わせが難しいでしょうし・森林が回復するにつれて樹木相が変わったりすることで栽培できなくなる作物が増え、目的の農産物を栽培するには他の土地の買収が必要になったり、技術者が必要になったりするでしょう。つまり、コスト高が運命づけられています。市場が求める効率主義とは正反対に位置する思想です。
本当にアグロフォレストリーを実施していれば、年々原価が大幅高となってフルッタフルッタは破綻するでしょう。イオンなど大手企業に卸す業者がそんな質めんどくさいことをするとは思えません。生産地はブラジルですから、実際何をやっているかユーザーは分からないでしょう。経営者すら把握していない可能性もあります。イメージアップのために、それっぽく導入しているように見せかけているだけだ、と思います。無理ですよ工業製品では。
まとめ
以上のことより、きわめて胡散臭い企業であることがわかりました。資料の〆の言葉も「ヒット商品が世界を救う」と偽善的です。具体的な収益性の構想が全く見えてきません。
ちなみに、来期はデリバティブや為替損益のスペルが消えて、純利益の予想は-63.5%の0.73億円だそうです。私は資料全体から漂うお花畑な雰囲気から、来期も下方修正して赤字になるんじゃないかと思います。今日の株高は一時の投機熱に過ぎないのでしょう。