Julian Bream – Popular Classics for Spanish Guitar (RCA Living Stereo Collection CD 54)


★★★★☆
クラシックギタリスト、ジュリアン・ブリームのソロアルバム。このCDはスペインの曲を11曲まとめたものとなっている。ギターは一人で多重奏ができるため技術の上限には限りがなさそうだ。よく伴奏とメロディーと同時にできるよな。スペインという土地柄なのかマイナーで物寂しい曲が多い。コンサートホールで演奏しているというよりは、川や海のそばの港町のショットバーにいるような雰囲気だ。8曲目のアルベニッツ、スペイン組曲の2つめは、伴奏が激しすぎて倍音が響きまるで弦楽の重奏のような音が何度も聞こえる。渋い1枚。


CDレビュー: Bach-Mozart-Brahms, Heifetz(vn.) – Double Concertos (RCA Living Stereo Collection CD 53)


★★★★☆

ヴァイオリンの帝王ハイフェッツちゃん(ジャケットに描かれているおじさんです)。このCDはヴァイオリン*2またはヴァイオリン+チェロのダブル協奏曲を3点集めたもの。前半戦ともいえるバッハ、モーツァルトはいわゆるバロック期、古典派の王様で、この2人は様式美が濃ゆく、耳にはさんだだけですぐ作曲者がわかる。たとえばこの絵を見て即、北斗の拳だと分かるのと同じ。

バッハはすぎやまこういちさんのせいで対位法を使ってると常にドラクエの城みたいな音楽に聞こえるし、モーツァルトはいつも通り超きらきら。ダブルコンチェルトということで抑えてはいますがハイフェッツちゃんの音も聞けばすぐ彼だと分かる特徴がある。メロディーを軽いグリッサンド気味に歌い上げることが多い。これを下手なポップス歌手がやると耳に触るけれど、彼のヴァイオリンは唸るし泣く。この2作品についてはオケが悪いのかソロ演奏者が走ってしまうのか分からないが、時々呼吸が合わなくなることがあり、その度にイラッとさせられるのが残念だった。

後半戦のブラームスのヴァイオリン+チェロ協奏曲はドイツ・オーストリア系ダサカッコイイの正当後継者で、この曲も例にもれず真剣にちょっとダサいメロディーを荘厳に奏でる聞きごたえのある曲だった。協奏曲ってのはなんで常に第一楽章が長大になりがちなんでしょう。第三楽章はいきなり民族音楽的な主題で始まりヴァイオリンかわいすぎ、中盤からチャイコフスキーでよく見られる半音ずつ上げていってドキドキ感を高める手法がとられていて心臓がバクバクします。最高です。

ハイフェッツちゃんのベスト盤としてはこのCD>のシベリウスの協奏曲を推したいです。ひたすら泣いてます。

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CDレビュー: Richard Strauss, Chicago Symphony Orchestra , Fritz Reiner(Cond) – Don Quixote / Don Juan (RCA Living Stereo Collection CD 52)


★★★★☆
リヒャルト・シュトラウスは現代に生きていれば超凄腕の映画音楽家になれたんじゃないかしら。ドン・キホーテのストーリーは知らなかったけれど、タイトルと音楽だけでどのシーンも目に浮かぶようだった。第2変奏のヒツジの群れ、第3変奏のソロの掛け合い、第7変奏の飛行が主な聞き所か。トランペットが異常に上手い。びっくりするくらい真っ直ぐな音を出す。目を見開かされてしまう。ただ全体的に音がぼやけていたように感じた。オケにメリハリがないのかもしれない。
さらにこのCDのおまけ扱いと思われるドン・ファンが超のつくくらい勇猛で雷鳴とどろくカッコよさで、度胆を抜かれた。このシリーズには当たりのCDが非常に多い。60枚入って1万円しない上に名盤ばかりだ。消えてしまった日記に書いた感想では、2枚目のサン・サーンス交響曲第3番、7枚目のチャイコ&ラフマニノフのピアノ協奏曲、14・25枚目のハイフェッツあたりがすごく良かった記憶がある。


CDレビュー: Franz Schubert, Boston Symphony Orchestra, Charles Munch(Cond), 1955 and 1958 – Symphony No.8 in B Minor “Unfinished”, Symphony No.9 in C “The Great” (RCA Living Stereo Collection CD 51)

/A>
★★★★★
いやあ交響曲っていいものですね!

シューベルトは「魔王」をほとんどの中学校で習うこともあって歌曲の作曲者として理解されていることが多いけれど、なんと交響曲を9つも作っている。未完成のものも含めると13もあるらしい。

こんなこと言うと怒られるかもしれないが、シューベルトを含めドイツ・オーストリア系の作曲者って作風が「ダサカッコいい」と思う。ベートーヴェンは美しいメロディーや和音もさることながら時々ユニゾンや爆音和音でダサい洪水を投げてくることがある。運命の冒頭とか交響曲6番の終盤の謎連発和音、7番4楽章の運動会みたいなメロディーなど。ブラームスもこの正統派ダサカッコいい系譜に位置する。リストもそうかも。

シューベルトの交響曲はベートーヴェンの美しさを引き継ぎつつ、ダサさをさらに洗練して頻度を高めたように聞こえた。彼の体に流れる熱い音楽的血潮がこのダサさを生み出し、聞き手を共振させて一種の興奮を引き起こす。特に、交響曲8番の第1楽章、9番の1,4楽章は顕著だ。

8番の第1楽章はほとんど演歌だ。オーケストラと演歌の融合を1825年に果たしているなんて超前衛的だ。9番の第1楽章はカッコいいはずの場面で盆踊りみたいな三連符が大量出現する。そして第4楽章は歓びの歌のパクリ、もといリスペクトした主題が要所で現れ、ズッコケそうになりながら絶頂、大団円を迎える。演奏は非常にダイナミックで、力が余りすぎて時々木管金管が前に滑ってしまっているがそれもよし。シューベルトはダサさを極め転じて人を感動させる魂を持った作曲家として私の心に刻まれた。

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CDレビュー: Giuseppe Verdi, Rome Opera Orchestra And Chorus, 1960 – La Traviata(RCA Living Stereo Collection CD 47, 48)


★★★★☆
イタリアの誇るオペラ王ヴェルディの中期の作品。邦題は「椿姫」というらしい。全くイタリア語のわからない身としては1枚目はやや盛り上がりに欠けるが2枚目が素晴らしい。途中、セリフを歌ではなく左マイクの真ん前で喋らせる演出もあり1960年当時としては前衛的だったのではないだろうか。たぶんラストはヒロインが死んでる。

(日本では単品発売されていないようなのでボックスセットへのリンクを貼ります)

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CDレビュー: Giacomo Puccini, Rome Opera Orchestra, 1959 – Turandot (RCA Living Stereo Collection CD49,50)


★★★☆☆
トゥーランドットはイタリア語の勉強の事始めとして教材に使っていたもので、大学の音楽論の講義でも使われていたこともあり思い出深い。

プッチーニさんの楽曲はとにかくド派手。オペラなのに登場人物がみなキャラ立ちしていて魅力的で、特にピン・ポン・パンの大臣三人衆が好き。一番好きな個所は、第一幕ラストの鐘を3回鳴らすまでの部分。登場人物が掛け合いながらクライマックスに向かうこの場所は何回聞いても鳥肌が立つ。

この演奏は海外では評価が高いようだけれど、個人的には声が埋もれてるし迫力も薄いので残念だった。初めに衝撃を受けたこの演奏の方が好み。日本語字幕のついたDVDもある。このDVDは超豪華な舞台装置、小林幸子もびっくりなトゥーランドット姫の衣装など見どころも満載で、おすすめ。

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CDレビュー: Charles Koechlin – Quintettes

★★★★★

[Youtube]同CDの後半、Quintette pour piano et cordes, Op.80

20世紀前半、フランスの作曲家ケクランの室内楽。弦楽4本+ピアノのクインテット。
以前NHKで「クインテット」という番組をやっていた。宮川彬良さんと人形4体がコントや歌、そして本格的な演奏会をする素敵な番組だった。彬良さんのアレンジが優れていることもあって、とにかく演奏がすごい。ピアノと弦が4本あれば、オーケストラに負けない音楽的宇宙が表現できることに毎度感動しながら見ていた。そして、このCDでクインテットの持つ力を再認識した。

音楽史に疎いことを断ってから書くと、20世紀前半に作られた曲は、新しい表現を探すために調性をぶっ壊している過渡期であるためか、崩壊と調和の狭間をさまよっている曲が多いように感じる。調性から外れると秩序から外れるので不安になる。この時代より下ると外れっぱなしで不安なまま終わって意味不明、心にもなかなか訴えかけないのだが、このあたりの時代の作曲者(特にフランス系の人たち)は最後に必ず調和をもたらしてくれるので、自分はそのギャップのせいか、いたく感動する。

後半のOp.80は、1-3曲目ははっきり言ってわけわかめだ。しかし最後の4曲目が素晴らしい。タイトルの”La Joie”という言葉通り、演奏を聴いている間も聞き終わった後も、体の中が喜びで満たされることこの上ない。

別アーティストによるOp.80の演奏。

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CDレビュー: Virgil Fox – Encores (RCA)


★★★★☆
Living Stereo 60 CD Collectionの42枚目。
オルガニスト、Virgil Fox によるオルガンリサイタル。オルガンって、まるでタイムスリップしたエレクトーンみたいだ。華やかで美しい音が出る。
有名どころのG線上のアリアや小フーガを押さえつつ、12曲目のシャルル=マリー・ヴィドールのSymphony No. 5 In F Minor Op. 42 No. 1 – Toccataの超キラキラに感動したら、最後は威風堂々。何回聞いてもワクワクする曲だ。中間部からメインテーマに向けて上昇してい所なんか特に。
お勧めの一枚。

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