書籍レビュー: 『お母さん二人いてもいいかな?』著:中村キヨ(中村珍)

★★☆☆☆

漫画家・ライター・エッセイストの中村キヨさんによる漫画です。年上の女性と3人の子供を10年育てた『私生活をエッセイ風に漫画化した』作品です。

c71さんが読んでいたのでぼくも読みました。一緒に考えました。

もやもやする本

中村さんの本を読んだのは初めてです。

これはぼくの理解力が足りないのだと思うのですが、全体的に読みにくかったです。時系列は前起きなく飛ぶし、セリフの構成も見づらい。LGBT向けの本の体裁をとっていますが、レズビアンについては中心的なテーマではない。「分かる人に分かればいい」というスタンスなのかもしれませんが、難しかったです。

前半~中盤にかけては子どもたちへの愛情を強く感じました。子どもたちの描写も、表情に乏しいものの、かわいかった。しかし、愛情があるからって何をしてもいいわけではありません。

c71さんのブログにも書かれていますが、トナ君に出生の秘密を打ち明けるシーンはいやでした。もしぼくがトナ君だとしたら、言わないでほしかったし、ぼくが親の立場だとしても、言いません。

あの状況で「出生の秘密を聞きたいか、聞きたくないか」と言われて「聞きたくない」と答える子どもはいません。だって、中学生の時点で、聞きたいか聞きたくないかを判断する能力なんてないですよ。子どもが愛されてることは毎日の生活で本人がよく分かってるんですから、愛を盾にして大人の事情を背負わせる必要なくないですか?子どもが、親のバックグランドを背負わされて、いくつになっても親から身動きが取れなくなっている状況っていっぱいあるんですよ。

お前はお前、うちはうち、お前に語る権利なんかないと言われたら、そうですね、ごめんなさい、何にも言えませんけれど。

もう一点ひっかかたのは、P144から、パートナーのサツキさんと中村さんの関係を、中村さんがママ友に言おうとしたときに、サツキさんが中村さんを諫めるシーンです。

「あなたがママ友だちに『あの子たちの親』としてカミングアウトした瞬間、あの子たちは自分の意志と一切関係なく家庭環境を晒し上げられるんです!親によって!」(P145)

「子どもたちが自発的に『うちのままは女同士で結婚したんだよ』と自発的に言うまでは、あの子たちの『隠す権利と自由』を私たちは死守すべきなんです!」(P146)

サツキさんの言い分はもっともです。中村さんも正しさを認めています。すると、この本の存在意義が疑われます。だってこの本は子どもたちと自分たちのプライバシーを切り売りした作品だからです。作品中にはその気になれば居所や関係性を特定できるような要素が紛れ込んでいます。危険です。

子どもたちを守りたいのなら、この本を出さなきゃよかったのでは?

 


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