書籍レビュー:わたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである『ローマ人の物語〈11〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(上)』 著:塩野七生

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舞台は紀元前49-44年。ルビコン川を超え国賊扱いとなったカエサルと、かつての盟友で反カエサルのためにかつがれてしまったポンペイウスとの戦いがメインとなります。カエサルは50-55歳。カッチョ良さが肌に刻み付けこまれた後の年齢です。

まとめ

ガリア地方(いまのフランス・スイスの相当)を平定したものの、ローマ国内の反カエサル派の台頭により、軍隊を解散しないでローマに戻れば失脚は確実となったカエサルは、軍隊を率いたままルビコン川を超えてローマを目指します。反カエサル派の代表となったポンペイウスはあまりの電撃作戦に驚きローマを放棄し、ギリシャまで逃げ自分の地盤である地中海の経済力を生かして打倒カエサルを目指します。

スペイン、北アフリカでの戦闘を経て最終決戦上はギリシャのファルサルス。兵力はポンペイウス5万4千(うち騎兵7千)、カエサル2万3千(うち騎兵1千)。しかもポンペイウスのもとにはかつてのカエサルの戦友ラビエヌスが参戦しているという絶望的な戦力差です。Zガンダムで例えるとなぜかクワトロがハマーンの元に去りアクシズ側に寝返ってるわキュベレイが7体いるわガザCの数がジムIIの2倍以上いるわというような状況です。わかりにくいですか?ごめんなさい。

主戦力の非戦力化

ファルサルスの戦いのテーマはまたも「主戦力の非戦力化」でした。ポンペイウスにはラビエヌス率いる機動力の高い騎兵7千という怖い怖い戦力がいます。こいつらに背後を取られた瞬間オシマイです。

カエサルは考えました。「じゃあ、騎兵を囲めばいい」彼はガリア戦記をともに戦ったベテラン歩兵2千を騎兵にぶつけ、身動きを取れなくして見事「主戦力の非戦力化」に成功し勝利を収めました。

ローマ人列伝:ポンペイウス伝 4 – 浅草文庫亭

百戦錬磨のシャア百式に大量のジムIIをぶつけている間に背後からリックディアスが援護射撃するようなもんですね。かなり無謀ですが成功させちゃったんだからすごい。ラビエヌスは逃亡に成功した後の行方は分かっていませんので、後日また出てくるのだと思います。ポンペイウスは逃亡先のエジプトで厄介者扱いされてあっけなく殺されます。このエジプトでお家騒動の真っ最中だったのが、あのクレオパトラなのです。次巻以降の主要人物になること間違いありません。

気になった言葉

カエサル「わたしが自由にした人々が再びわたしに剣を向けることになるとしても、そのようなことには心をわずらわせたくない。何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。だから、他の人々も、そうあって当然と思っている」(P36)

カエサルは捕虜を一切殺しませんでした。ポンペイウス側に立って戦った人間も全員釈放しました。ローマの内戦であるという特殊な状況もあり、極力人を殺さないことを第一に考えていました。彼が釈放した人間の中には、後にカエサルを暗殺することになるマルクス・ブルータスも含まれていたのです。

高潔な考えだと思いますが、最後の一文だけは同意できません。他の人々は変えられないです。しかしカエサルは変えられると確信していたのでしょう。しかも有言実行、本当に人を変えていく人でした。すごい人物です。

…まことに不利な情勢になったということであった。このような状態になった場合、人は二種に分かれる。第一は、失敗に帰した事態の改善に努めることで不利を挽回しようとする人であり、第二は、それはそのままでひとまずは置いておき、別のことを成功させることによって、情勢の一挙挽回を図る人である。カエサルは、後者の代表格と言ってもよかった。(P123)

私もこう生きたい。発達障害に置き換えると、第一の方法は不毛ということが身に染みています。

カエサル「人間は、自分が見たいと欲する現実しか見ない」(P285)

『内乱記』の一節だそうです。カエサルは箴言を多く残しています。

ただし、クレオパトラの方がそれを、自分の魅力のためであったと思いこんだとしても無理はなかった。女とは、理によったのではなく、自分の女としての魅力に寄ったと信じる方を好む人種なのである。(P291)

塩野さん女だからって女見くびり過ぎちゃいます?これはさすがにないと思います。

 

次巻は目次によるとカエサルの行った改革についての話題が中心になるようです。全巻制覇するまではまだ1年以上かかりそうですね。

 

 

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 つうわけでこれは必読ですね。必ずいつか読みます

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