書籍レビュー: 内戦してる場合じゃない『ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) 』 著:塩野七生

★★★★☆

スッラとマリウスの対立

7冊目です。本書のカバー範囲は紀元前88~63年まで。主人公はルキウス・コルネリウス・スッラ(前138-78)とポンペイウス(前106-48)です。特に目立っていたのはスッラでした。

ルキウス・コルネリウス・スッラ – Wikipedia

 

前回に引き続きローマ内では権力闘争がおこります。国内格差からはじまった「同盟者戦役」が平定されてすぐ、前88年にスッラは最高権力者の執政官に就任しますが、平民代表の護民官との対立が激しくなり、「同盟者戦役」の結果として成立した選挙法改革を巡って揉め、貴族側代表のスッラはクーデターを起こし、平民代表のガイウス・マリウス(前157-86)を追い出します。

ガイウス・マリウス – Wikipedia

このマリウスという人は百戦錬磨のヒーローで、彼は怒って逆にクーデターを起こし、反対派および中立派を皆殺しにして権力を奪取します(前87年)。

一方スッラは内戦のゴタゴタの隙に侵略してきたポントス王ミトリダテスを制圧するためギリシャに遠征していました。マリウスがローマの権力を得たことでスッラは賊軍となりました。しかしスッラがミトリダテスを倒す前83年までの間にマリウスは病死し、代わって権力を得たキンナをスッラが破り(前82年)また反対派を大粛清しました。マリウスに味方した部族の兵士4000名を一斉に処刑したりマリウスの子孫を皆殺しにしたり、密告制度を作って徹底的に反対派を排除しました。これで多くの人材が失われたことでしょう。争いというのは優秀な人間が必ず死にますのでいやなものですね。

結果的にスッラは絶大な権力を握ることとなり、数々の元老院(貴族)に有利な法案を通しまくりました。これはローマの帝政に繋がっていくそうです。ちなみに彼は弩級の贅沢野郎であり、モーツァルトの「ルーチョ・シッラ」というオペラで「傲慢で退廃した女好きの独裁者」として登場させられたそうです。

Lucio Silla – Wikipedia, the free encyclopedia

100000対5

後半の主役はポンペイウスで、しぶといミトリダテスとの戦いが描かれますがどの戦いもあっさり描かれすぎていてやや不満です。体制の移り変わりを描いているのだから仕方ないのかもしれませんが、ミトリダテス側の戦死者十万、ポンペイウス側の死者5人などというとんでもない戦いの様子はもうちょっと詳述してくれてもよかったかな。

ミトリダテスの軍事力が弱かったからよかったものの、弱くなかったらローマは隙だらけでぶっ潰れてますね。この戦いでローマはアジア側(今のトルコ、シリア、イスラエル)にも領土を広げ、地中海全体を制圧することとなりました。

引用

ローマ人シリーズはずっとそうなのですが、事実を抽象化した歴史の大原則とも思える言葉が書かれていることがあります。いくつか気になった言葉を引用します。

システムの持つプラス面は、誰が実施者になってもほどほどの成果が保証されるところにある。反対にマイナス面は、ほどほどの成果しかあげないようでは敗北につながってしまうような場合、共同体が蒙らざるをえない実害が大きすぎる点にある。

ローマの「元老院体制」というシステムについて述べた段落ですがこれは現代政治にも十分通用する言葉だと思いました。

ツキティディスは、著作『ペロポネソス戦史』の中で、「大国の統治には、民主政体は適していない」とまで言っている。民主制だけが、絶対善ではない。民主制もまた他の政体同様、プラス面とマイナス面の両面を持つ、運用次第では常に危険な政体なのである。

民主制の最たるものであるギリシャが実質的独裁のあと衆愚制に陥ったことを評しています。現代の何とかうまくいってる中国を見ていても民主制が本当に正しいのかどうかわかりません。これはもっと歴史を学んでいかないと結論は出せませんので、引き続き沢山読書していきたいです。

 

 

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  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
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なんとモーツァルト16歳のときの作品だそうですよマジ天才。かなりマイナーな曲ですね。

 


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