CDレビュー: Enrico Pieranunzi – Seaward (1995)

★★★★★(TωT)

ピエラヌンツィさんのComplete Remasteredシリーズで聴き忘れがあったので、聴きました。次のボックスの5枚目です。

胸を切り裂くピアノ

切ない!切なすぎます!これを聴き忘れてたなんてもったいない!心に傷が無くても傷を負い、傷があればカサブタを開いてくるくらい胸に痛いピアノです。1曲目Seawardの出だしの1音からもう苦しくて苦しくてたまらない。

5曲目The Memory Of This Nightが一番破壊力が高いです。序盤は普通のスローバラードのようですが後半になるとピアノが突然釣り針とか猛禽類の鉤爪のようになって襲ってくるのです。鋭い。引っかかる。いたたたた。ピエちゃんもう勘弁してください。

気持ちが張りつめて張力で張り裂けそうになったところを刺す。一発ノックアウトです。意味の分からない観念論になってしまいましたが6枚の中で一番印象的なアルバムでした。

ベース、ドラムも完璧。歌声もあり

8曲目This?ではHein Van de Geynさんのベースが長時間にわたって歌う見せ場があります。彼のベースはとても暖かく優しいのでひと時の休息を味わうことができます。Andre Ceccarelliさんのドラムも目立たないものの完璧な安定感で気持ちの増幅に一役買っています。

本CDでは歌声が多く聞こえます。誰が歌っているのかわかりませんが演奏に興が引かれている証拠です。

ジャズセッションというのはそれぞれの持ち場で上手いこと役割を果たしつつ時にはアドリブを混ぜて相手のミュージシャンと作り出す音の会話であると理解しています。ジャズの音楽理論は難しいのでしょうが一通りマスターしてしまえば彼らはその文法を自在に操って詩を生み出すように音を生み出していくことができます。それはとてもとても気持ちのいいことなのだと思います。

音楽はその組み合わせと線形性をもって何故だか分かりませんが我々に快などを始めとする数多くの感情を生み出します。これらに身を任せてつい歌声が出ちゃうほど音楽的な空間の中に手を任せて音を職人的に組み立てて面白い作品をいくらでも作れちゃうなんて羨ましいなぁ、素敵だなあといつも思いながらジャズのCDを聴いています。

 

 

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